第十五話 俺YOEEE
第十五話 俺YOEEE
デスティニーには申し訳ないことをした。散々謝ったが、許してくれたとは思えない。自分から変身を見せてと言いながら、見て嘔吐してしまうとは、何とも情けない。
今度の休みはデスティニーに尽くそう、許してくれるまでは。
「デスティニー、一緒に出掛けよう。」
「昭平さん、私は怒っていませんから、気を使わないで下さい。」
「いや、気を使ってじゃなくて、デスティニーと出かけたいんだよ。」
「本当にそう思ってらっしゃるのですか?」
「もちろんだよ。」
俺はデスティニーのことが好きだし、謝罪の気持ちもあるが、本当に二人で出かけたかった。その気持ちが伝わったのか、デスティニーは了承してくれた。
「では、一緒にランチでも行きましょうか。」
「うん、行こう。デスティニーのお勧めのお店にしよう。」
二人で並んで歩く。少し気まずさが残り、会話も弾まない。それでも俺はデスティニーに一生懸命話しかけた。デスティニーはそんな俺を無視するわけでもなく、一言二言は必ず返してくれた。
デスティニーの案内で着いた店は、洒落た店ではなく、大衆的な店だった。店に入り、窓際の席に対面で座った。
お勧め料理を頼み、ぼんやりと外を眺め、デスティニーへ話しかける次の話題を頭の中で探していた。すると、大きな声が聞こえた。
声の方向を見ると、たちの悪そうな3人組の男が、俺たちが座っているテーブルの横に立っていた。
「おー、デスティニーじゃねぇか。最近見ねぇと思っていたら子守りに仕事を変えたのか?
こんなガキのお守をしているなら、俺たちと遊ぼうぜ、いつもの様に楽しませてくれよ。」
真ん中のリーダーらしき男が、下品な笑みを浮かべ、そう言った。デスティニーは男の方を見向きもせず、無視をしていた。
男はそんなデスティニーの態度が気に入らないのか、デスティニーの肩に手をかけ、無理矢理男の方を向かせようとした。
俺は、その態度に嫌悪感を覚え、思わず立ち上がり、デスティニーの肩に置いた手を掴み、止めてください。と言った。
次の瞬間、鼻にツンとした痛みが走り、後頭部を打ち付けた。どうやら殴られて、壁に頭をぶつけたようだ。鼻血が出て、服を汚している。
暴力には怯まなかった、どちらかと言うと頭に血が上り、自身の暴力衝動が一気に高まった。俺は殴った男に近づき、反撃しようとしたが、腹に膝蹴りを食らい、体勢が崩された。
無駄に部活で腹筋させられた訳じゃない。何とか反撃を試みるが、良く考えると、暴力を振るったことのない俺はどう反撃して良いのか分からなかった。
とにかく男に組み付こうと必死だった。
デスティニーが止めてと叫んでいる気がする。やがて、床に転がされ、何度か蹴られた。
とにかくデスティニーが心配だ。何とか状況を把握しようとするが、目もうまく開かない、音も良く聞こえなかった。
次に気が付いた時には、アリスの家のベッドで横になっていた。ベッドの横にはデスティニーが心配そうに立っていた。俺が目を開けると、安心して涙を流していた。
後で聞いた話しだが、たまたま近くを通りかかったファニーが助けてくれたらしい。なんと、あの役立たずのファニーがだ。
デスティニーは俺を庇おうとしてくれたらしいが、男二人に押さえつけられてしまい、抵抗が出来なかったようだ。そこにファニーが現れ、俺に暴行していた男の右腕を切り落とした。
その躊躇ない暴力に、デスティニーを押さえていた男たちは怯み、腕を切り落とされた男を抱えて逃げて行ったそうだ。
「デスティニーごめんね、やっぱり守れなかった、僕ではダメだね。」
「何を言っているんですか、昭平さん。私があなたを守らないといけないんです。それなのに。」
「いや、僕が何も出来ないくせに、男に向かって行ってしまったからだね。反省するよ。」
「謝らないで下さい。ファニーがいなかったら、もっと大怪我をさせてしまっていたかもしれません。そうなればアリスさんにも顔向け出来ません。」
「アリスは関係ないよ。」
「私の雇い主はアリスさんで、その役目はアリスさんの大事な昭平さんを守ることです。それが出来なかった私は傭兵失格です。」
「でもさ、怪我をしたのは僕のせいだから。アリスにはそう説明するから。」
それを聞いたデスティニーは、俯いたまま部屋を出て行ってしまった。
ファニーが俺の様子を見に顔を出してくれた。
「ファニーありがとう。助かったよ。」
「覇王、死に損なったな、ふふ。」
「ああ、貴様に助けてもらわずとも大丈夫だったのだがな。」
「弱者が良く言う。この闇の化身が通りかかったことを感謝するといい。」
「うん、本当に助かったよ。デスティニーにも怪我が無かったみたいだし。」
「真面目な話し、覇王は弱いから人に向かって行ってはダメだ。今回の行動は間違っている。結果、デスティニーも危険にさらした。」
「そうだね、反省しているよ。もう無茶はしないよ。」
「覇王が出かけるとき、アリスが一緒じゃないときは、わたしがついて行く。」
「わかったよ。外出する時はファニーに護衛してもらうよ。しかし、ファニー強くなったんだね。」
「アリスとデスティニーのおかげ。本当に強くなってきた。今までの自分ではないみたい。」
「そうなんだ、良かったね。あぁ、僕も強くなりたいよ。」
「覇王は強くなれない、素質がない。だから私が守る。つまり、強くならなくていい。」
「そうなのかな、それで良いのかな。」
「それで問題ない。」
ファニーが部屋を出て行くと、今度はチャリティーが顔を出してくれた。ファニーは俺が寝ているベッドに座り、話しかけてきた。
「自分、イキってもうたらしいやん。弱いくせにあかんで、そんなんしたら。」
「いや、反省してるって。」
「ほんまか?ほんまに反省しとるんか?」
「してるよ、なんでそんなにしつこく聞くんだよ。」
「反省してるように見えへんからやないか。な、弱い奴はイキったらあかんねん。先ず逃げなあかん。例えわしら三人がピンチでもや。お前は逃げなあかん。」
「それは出来ないよ、一人で逃げるなんて。」
「ほら、やっぱり反省しとらへんやないか。ちゃうねん、お前が逃げることが大事やねん。それがわしらの仕事やねん、任務やねん。分かったか?」
「うん、わかったよ。自分の安全だけを考えればいいんだろ?」
「せや、やっと理解したか。じゃ、理解したご褒美にエッチなことしたろか?」
「いいよ、何言ってんだよ。」
チャリティーはとても奇麗な笑顔で、冗談を言った。そして優しく抱きしめてくれ、キスをしてくれた。
体はアリスの魔法で治してもらったが、めちゃくちゃ怒られた。
「ショーヘイ、あなたはクラップシリイでは無力なのよ。ん、間違えたわ、あなたの世界でも無力だったわ。だから無茶はしないでちょうだい。お願いよ。」
「うん、反省しているよ。それから、デスティニーは悪くないから、全部僕のせいだから。」
「ええ、その通り、あなたが悪いわ。でもね、あなたを守れなかったデスティニーにも責任があるわ。」
「待ってよ、デスティニーは僕を守ろうとしてくれたよ。」
「知っているわ、でも結果あなたを守れなかった。守ったのはファニーでしょ。」
「そうだけど、男三人が相手じゃ、いくらデスティニーでも勝てないよ。」
「いいえ、彼女が自分の武器を携帯していたら、何の問題もなく解決していたでしょう。」
「確かに武器を持たずに出かけたけど、だってお昼を一緒に食べに出ただけだし。」
「理由はどうあれ、自分の仕事を忘れ、あなたを無暗に傷つけた。あなたを守ることが仕事なら、一緒に出掛ける時、自分の武器を持たずに外出するなんてありえないことよ。」
「そうかも知れないけど、デスティニーは悪くないよ。悪いのは絡んできたあいつらだし、その挑発に乗った僕なんだから。」
「そこまでショーヘイが庇うならもうこれ以上は言わないわ。」
「うん、デスティニーも責めないであげて。」
「わかったわ。でもデスティニーは自分を責めるでしょうね。あなたから、デスティニーに自分を責めない様に伝えないさい。」
「ありがとう、アリス。大好きだよ。」
そう言ってアリスに抱き着いた。アリスに触れたせいか、俺は急に暴力の恐怖に支配され、震えて泣いた。アリスは俺が落ち着くまで優しく抱きしめてくれていた。
翌日もクラップシリイに行った。そしてデスティニーと話しをした。
「ねぇ、デスティニー、この仕事辞めないでね。」
「何故ですか、私は自分の仕事を果たせなかったんですよ。昭平さんを守れなかった。」
「結果無事だったから良かったじゃん。それに次は守ってくれたら良いじゃん。
僕はデスティニーが好きだから、一緒にいたいから、辞めないで欲しいんだよ。お願いだよ。」
「昭平さんは優しいですね。」
「優しくはないよ、僕のわがままだよ、エゴだよ。デスティニーと一緒にいたいだけの。」
デスティニーはそれを聞いて、寂しそうな笑顔を見せた。
「私もこの仕事は辞めたくありません。アリスさん、チャリティー、ファニー、みんなと過ごす時間は私にとっては、とても大切なものです。でも、私は私自身が許せないんです。
私が武器を持って行けば、男たちの相手を私がすれば、何よりも先に昭平さんの安全を確保すれば良かったんです。でも、私は何も出来ていなかった、それが許せないんです。」
俺は真面目なデスティニーが自分を責めすぎていると思った。でも、なんて言葉を返して良いのか分からなかった。
俺は自分の無力さが悔しかった。きっと、俺が強ければ、こんなことにはならなかった。俺が怪我をせず、あいつらをやっつけられていたら。そんなことを考えていると涙が出てきた。
その涙を見たデスティニーは優しく抱きしめてくれた。そして二人で泣いた。
「昭平さん、私はここにいて良いのでしょうか。」
「もちろんだよ、デスティニー。そして、僕を守ってよ。弱くて情けなくて、泣き虫な僕を守ってよ。」
「わかりました。今度は必ず昭平さんを守ります。」
「うん、約束だよ。」
そして、二人とも泣き止むまで、お互いに強く、そして優しく抱きしめ合っていた。




