第十四話 猫耳の人とはどこで会えますか?
第十四話 猫耳の人とはどこで会えますか?
そう言えば異世界で、人族以外の住人を見たことがない。クラップシリイでは、人族以外は住んでいないのだろうか。
異世界の定番と言えば猫耳だと思うのだが、猫耳を持った可愛い少女はいないのだろうか。猫耳ではなくとも、色っぽいエルフのおねぇさんでも良いのだが。
後は、ホビットとかドワーフとかかなぁ。そう言えば魔物、ゴブリンやオーク、トロール、オーガみたいなやつもいるのだろうか。
とにかくアリスに聞いて、もし、違う種族に会えるなら会いに行きたいと思う。
「ねぇねぇ、アリス。クラップシリイには人族以外に種族はいないの?」
「いるわよ、ショーヘイが言うところの人族が、私みたいにこの世界の住人に近い姿形をした種族のことを指すのであれば、違う形をした種族もいるわね。」
「そうなんだー、じゃぁさ、猫耳の人いる?」
「猫耳の人?どういうこと。」
「僕やアリスと同じような見た目で、耳が猫になっていて、耳の位置が顔の横じゃなくて、頭の方についている感じの。」
「あぁ、ショーヘイが見ているエッチなアニメに出てくる感じの子ね。」
「いや、まぁ、簡単に言えばそうなるかな。で、いるの?」
「いないわね、獣人はいるけど。」
「獣人ってどんな人たちなの?」
「獣の特徴を持った人ね。見た目は人ではなく、獣に近いかしら。」
「その人たちには会える?」
「んー、イディオット王国にはいないんじゃないかしら。フロシティ帝国領には、いるかも知れないわね。帝国は獣人を戦士として育てていると聞いたことがあるから。」
「じゃ、フロシティ帝国に行けば会えるかな。連れてってよ、フロシティ帝国へ。」
「今は難しいのよ、イディオット王国とフロシティ帝国は緊張状態にあるわ、いつ衝突が起こってもおかしくない。簡単にフロシティ帝国への入国は出来ないわね。」
「そうなんだ、残念だな。人以外の種族も見てみたかったな。」
「興味本位で他種族を見たいって言うのは、正直感心しないわね。見た目が違っても、人は人よ。
肌や瞳の色が違っても、太っていても痩せていても、美人でも不細工でも。少し見た目が違うだけで差別をしてはいけないわ。学校で習わなかった?」
「もちろん習ったよ、それに理解はしているつもり。ただ、見た目で人をからかうことはあるけど。」
「どうしても見た目でその人を判断しがちだけど、それは良くないことよ。正直見た目が良い方が得をすることも多いわ。でもね、見た目だけ良くても、中身が、人間性が悪いのはダメよ。
ショーヘイには中身も立派な大人に成って欲しいわ。だから、他人を見た目だけで判断したり、差別したりはしないでね。」
「うん、今後は気を付けるよ。」
「素直でよろしい。でも、そう言えばイディオット王国には、人型鳥類がいるって噂があるわね。」
「何、その都市伝説的なやつ。」
「クラップシリイは太古の昔、10m以上もある大型の鳥類が支配していたのよ。種類も豊富で、様々な形や大きさ、肉食や草食、雑食性、水棲のものもいたらしいわ。」
「へぇ、恐竜みたいなやつかな。」
「恐竜が何か分からないけど、とにかく大きくて、それなりに知能は発達していたけど、言語を話したりはしていなかったと思われているわ。」
「やっぱり、恐竜みたいなやつだね、きっと。」
「で、その大型鳥類は、数億年前に環境の変化で絶滅したらしいんだけど、実は絶滅していなくて、環境の変化を逃れ、地中に逃げたそうなの。
そして、その地中に逃げた者たちが、独自の進化を遂げ、人と変わらない姿となり、一部の者達は地中から地上に出て、人の世界に紛れて暮らしているって言うのよ。
それが、人型鳥類、バーディリアンと呼ばれているのよ。」
「ひょっとして、謎の空飛ぶ飛行物体に乗って、人を攫ったりとかしてる?」
「ショーヘイはどうしてその噂をしっているの?」
「いや、知らないよ、どこの世界も同じようなものかと思って。これはね、矢追さんの出番ですね。矢追さんに調べてもらいましょう。」
「誰なの、矢追さんて。ショーヘイの知り合い?」
「いや、知らないけど、良く知っている人、有名人みたいなもんだよ。気にしないで。
で、アリスはその噂信じているの?バーディリアンはいると思う?」
「正直分からないわ、いるともいないとも言えないわね。世界は広いわ、知らないことも多いもの。だから、いたら良いな位の気持ちかしら。」
「ふーん、でも面白いね。猫耳の人には会えないかもだけど、鳥人間には会えるかも。ひょっとしたら、もう会ってたりして。」
「分からないわよね、3人の傭兵の内、誰かがバーディリアンの可能性はあるわね。」
アリスは笑いながら冗談を言ったが、何だかそれが冗談に聞こえず、少し怖くなって、アリスにしがみついた。
アリスは黙って頭を撫でながら、大丈夫よ、と言って安心させてくれた。
次の休みにイグノランスに行き、ロデムの面倒を見た。
ロデムは見るたびに大きくなり、やんちゃになっている。遊んで欲しくてじゃれてくるが、爪と牙で腕が傷だらけになる。それでも可愛いので許せるが、もう少し大きくなってきたら、気をつけないと大怪我しそうだ。
部屋にはデスティニーしかいない。俺の血だらけの腕を見てびっくりして近寄ってきた。
「昭平さん、傷だらけじゃないですか、大丈夫ですか。」
「うん、痛いけど、まぁ平気。」
「奇麗に洗ってくださいね、細菌が入ったら怖いですから。」
「デスティニーはロデムにじゃれられても平気なの?」
「あの程度では皮膚に傷はつきませんよ。本気で咬まれたら血が出るかもしれませんが。」
「え、本気で咬まれても血が出る程度なんだ。」
「そうですね、成体になったヘルガードドッグに咬まれたら、皮膚は食い破られますが、幼体の内に咬まれるぐらいなら平気だと思います。」
「いや、クラップシリイの住人の強靭さには脱帽だね。
そう言えばさ、アリスに聞いたんだけど、バーディリアンの噂知ってる?」
「あぁ、地下世界から来る鳥人間ですか?知っていますよ。」
「デスティニーは信じてる?いるかな、バーディリアン。」
デスティニーはお腹をかかえ笑いながら言った。
「いる訳ないですよ、そんな不思議な生き物。そんなほら話、信じたんですか?」
「うん、アリスがいるかいないか分からないって言うから。」
「からかわれたですよ、アリスさんに。昭平さんが面白い反応するから。」
「そうなのか、僕、からかわれたんだ。でも噂があるんでしょ?」
「えぇ、確かに。急に眼が鳥みたいになったとか、体に羽毛が出てきたとか、とても信じられないような目撃談が噂として出ていますね。」
「じゃぁいるかも知れないじゃん。」
「そうですね、絶対いないとは言えませんが。世の中不思議な事なんてそうそうありませんよ。」
すると、そこへチャリティーが帰ってきた。
「なんや自分、来とったんか。」
「こんにちは、チャリティー。元気ですか?」
「わしはいつでも元気やがな、自分も元気そうでよかったで。
ん?あー、ロデムにやられたんか、その腕の傷。」
「あ、うん。さっきロデムにじゃれつかれて、爪と牙でやられたよ。」
「うんうん、わかるでー、見てみ、わしの腕も。」
そう言って見せられたチャリティーの腕は、奇麗な真っ白い肌に、痛々しくひっかき傷の後が複数残っていた。
「あれ、チャリティーはロデムに傷つけられちゃうんだね。デスティニーは平気だって言ってたから。」
「いやいや、わしは人族やで、多少力は強いけど、自分と何も変わらんがな。」
「え、そうなの?じゃ、デスティニーは?」
「なんや自分、デスティニー見たらわかるやろ、あいつは猫族やないか。」
「え、え、どういうこと。デスティニーは人族じゃないの?」
「おーい、デスティニー、こっち来て説明したってーな。」
するとデスティニーは近寄ってきて会話に加わった。
「なんですか、チャリティー、こう見えて私は忙しいんですよ。何も出来ないあなたのせいでね。」
「まぁまぁ、固い事いいなて。な、人には向き不向きちゅうのがあんねん。わしにはな、家事が向いてないねん、だからな、家のことは、家事に向いてるデスティニーがやったらええねん。」
「もう、適当なんだから、で、何です。」
「こいつがな、デスティニーが猫族だとは知らんかったって、言うからな、説明したって欲しいねん。」
「そう言えば、昭平さんには言っていなかったかもしれませんね。」
「うん、聞いてなかった。」
「私は猫族です。昭平さんの世界にはいないのかもしれませんが、人族より強靭な肉体を持ち、猫に変身することが出来ます。」
「なに!猫に変身できるの?猫耳も?」
「猫に変身しますので、耳も猫にはなりますが。」
「変身を見せてもらえる?」
「非常に疲れることと、あまりお見せするものでもないと思いますが、それが昭平さんのご希望であれば。」
「ごめんね、疲れるかと思うけど、お願いするよ。」
「では、準備をしますね。」
そう言ってデスティニーはおもむろに服を脱ぎだし、全裸になった。俺は思わず見とれてしまった。とても均整のとれた体だ、本当に美しい。
デスティニーは四つん這いになり、全身に力を入れている様だった。すると、デスティニーの体の中で何かの変化が起きているようで、皮膚が波を打ち始めた。
やがて、人の皮膚が破れ、血まみれの獣が現れた。現れた姿は完全に獣だった。人の形を微塵も残してはいなかった。そして、確かに耳は猫のものだった。
人の皮膚が破れた、その血の匂いと、血まみれの姿をみて、俺は気分が悪くなり、その場で嘔吐してしまった。しばらく肉は食べられそうにもない。
リアル、キャット・ピープル、ナスターシャ・キンスキーだ。しかし、猫族がいるならバーディリアンは普通にいるだろ、そう思った。




