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第十二話 転生して神様に加護とかもらいたい

第十二話 転生して神様に加護とかもらいたい


 秋も深まり、10月だ。特に魔物や盗賊に襲われることはなく、リージェン村に到着した。村はイディオット王国の外れとの言葉通り、特に何もない村だった。

 だが、村人は気さくに話しをしてくれるし、とても親切だ。村の外には小麦畑が広がっていたので、興味本位で春小麦の収穫を手伝ってみた。想像以上に重労働だった。

 たいして役には立たなかっただろうに、村人には感謝され、御礼として、村で収穫された野菜をもらった。

 野菜はデスティニーたちが宿泊する、村に1軒しかない宿屋に持ち込み、彼女たちにふるまって欲しいと渡した。

 宿屋の主人は快く引き受けてくれた。その笑顔はとても心地よいものだった。

 村の広場では、子供達が楽しそうに駆け回り、とても活気がある村に見える。年寄りたちもベンチで談笑している姿を良く見かける。とても居心地が良く、平和な村だ。


 さて、王都イグノランスに戻ろう。きっと帰りも何も起きないのだろう。それでも冒険した気分にさせてくれた。そして5人の旅はとても楽しい。

 またどこかに旅をしてもいい。今度は少しだけスリルを味わえるような旅がいいかな。


 11月にはイグノランスに戻った。帰り道も3人と個別で会話を交わし、出発の時に比べれば大分仲良くなれたと思う。でも、当然好きにはなってもらえてない。

 どちらかと言うと、俺の方がどんどん3人を好きになっていく、3人とも大事で、愛おしい、守らなきゃと思うようになっている気がしている。

 でも、3人に比べて俺は非力だ、非力すぎる。戦闘も出来ないだろうし、まず気持ち的に人や魔物に立ち向かう勇気は出ない。

 それに、明らかにクラップシリイの人種は頑強だ、基本的な体の造りが違う。俺は力も弱いし、魔法を使うことも出来ない。


 そこを改善しなければならないが、一朝一夕にはいかない。こういう場合、転生して神々の加護をもらうのが早い気がする。

 かと言って、一回死んでやり直すのは面倒だから、力をもった神々に会って、加護が欲しいと、直接交渉したいところだ。

ただし、交渉を成功させるためには、神々の手違いを盾に取る必要がある。

 だが、残念なことに俺は、学校でいじめにはあっていない、ただ無視されているだけだ。太っても無ければ引きこもりでもないし、劣悪な環境で労働を強いられているわけでもない。

 いや、そこは重要じゃないか。手違いでトラックにひかれれば良いのか、もしくは犯罪者に刺されてしまうか、重い病にかかってしまうか。

 しかし、どうやって、その場面に持ち込むか、ここが問題だ。とにかくアリスに相談してみよう。


「ねぇねぇアリス。相談があるんだけど。」

「なぁに、ショーヘイ。どうせろくな相談じゃないんだろうけど、いちよ聞いてあげるわよ。」

「いやー、そう言われると話しづらいんだけど、神々の加護が欲しいんだよ。」

「なに?神々の加護って?ショーヘイ、神様信じてるの?お祈りしてるとこ見たことないけど。」

「うん、一切神は信じていないよ。でもさ、神々の加護が欲しいんだよ。」

「どうも話が見えないわね。神を信じてもいないのに、加護が欲しいのね。」

「そう、神々って言っても、超常的な力を持った存在とかに、加護をもらって、強くなりたいんだよ。それも劇的に、しかも簡単に。」

「ゲームの世界じゃあるまいし、そんなのある訳ないじゃない。地道な努力をなさい。」

「それじゃ、クラップシリイで活躍出来ないじゃないか。」

「そうね、この世界の住人であるショーヘイじゃ無理ね、体ももろいし、魔法も使えない。鍛えたところで無理ね。」

「でしょ、だからさ、神々の加護で力を手に入れたいのさ。」

「んー、何となくわかったわ。」

「じゃ、神々に会える?」

「それは無理ね、私も会ったことないもの。確かに超常的な力をもった存在はいるわ。でも、ショーヘイの言うように、人に力を授けることは出来ないわね。」

「なんでそう言えるのさ、神々にあったことないのに。」

「そうね、私が超常的な力を持った存在だから、かしら。」


 そうだった、忘れていた。アリスは神に近い存在だった。不老不死で世界を亡ぼす力も持っているとんでもない存在だった。

 そのアリスが、人に力を与えることが出来ないと言うなら出来ないのだろう。何ともつまらない話だ。


「どう、ショーヘイ、諦めがついたかしら。」

「話は理解したけど、諦めはついてないよ。僕は強くなって、彼女たちを守りたいんだよ。」

「あぁ、そう言うこと。でもね、あの子たち3人は、ショーヘイに守ってもらう必要ないのよ。彼女たちは傭兵で、自分の身は自分で守るから。

 それに、残念だけど、どんなに頑張っても彼女たちよりもショーヘイが強くなることは無いわ。人種が違うもの。」

「うん、知ってた。これはしょうがない事なんだね。」

「でもね、ショーヘイ。女の子を守るって、力が強いから守れることもあるけど、力が強いだけじゃ守れないのよ。

ショーヘイはその優しさで、彼女たちの心を守ってあげなさい。」

「僕はそんなに優しくないし、弱いよ。だから彼女たちを守りたい気持ちだけで、何にも出来ない。それが現実だよ。」

「今は、その守りたい気持ちを大事にしてね。そして、その時が来たら勇気を出して、彼女たちを守るために何が出来るか考えて、行動をしてね。」

「うん、わかった。」

「素直でよろしい。それから、ショーヘイが彼女たちを守りたいなら、私が守るわ。任せなさい。」


 アリスにそう言われても、でもどこか諦めがつかなかった。ひょっとしたら、アリスが知らないだけで、神々は存在しているのではないだろうか、だって魔法がある世界だし。

 もう少しだけ、アリスに聞いてみることにした。


「ねぇ、アリス、もう少しだけ話しを聞いてもらっていい?」

「いいわよ、なぁに?」

「例えばさ、僕が死んで、生まれ変わる、クラップシリイに転生したら神々に会えるかな。」

「何を馬鹿なこと言っているの。いないわよ神々なんて。

 それから、軽々しく私の前で死ぬとか言わないでちょうだい。ただでさえショーヘイの寿命は80年くらいで短いのだから。」

 アリスは珍しく不機嫌になった。俺は悪いことを聞いてしまった。どうしたらアリスは機嫌をなおしてくれるだろうか。

 何も言えなくなってしまった俺をアリスは強く抱きしめた。

「ショーヘイ。人の魂は生まれ変わってしまえば別なものになるわ。稀に以前の魂の記憶を持って生まれ変わることがあるけど、それはとても少ないエラーなのよ。

 だから、生まれ変わったとしても、人生をやり直すことは出来ないわ。どんなに苦しくても、辛くても、生まれ変わりに逃げるのではなく、今を精一杯生きるしかないの。

 ショーヘイも今の生を精一杯生きてちょうだい、私からのお願いよ。」

「アリスが精一杯生きて欲しいなら、僕は頑張るよ。アリスは僕がいなくなっても、ずっと生きて行く、そんなアリスに忘れられないように、僕はアリスの心に残れるように頑張るよ。」

 アリスは強く、とても強く抱きしめてきた。体はとても痛かったけど、アリスが俺を大事に思ってくれていることが伝わってきて、とても心は温かくなった。

「ショーヘイ、私の大事なショーヘイ。私はあなたを忘れることはないわ、例え何千年、何万年と存在し続けようとも。それは約束するわ。」

「うん、ありがとう、アリス。大好きだよ。おやすみなさい。」

「ゆっくり寝るのよ、ショーヘイ。おやすみなさい。」

 俺はいつもの様に体も心も温かいアリスに包まれて眠りに落ちて行った。

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