第十一話 とにかく、ちやほやして欲しいのに②
第十一話 とにかく、ちやほやして欲しいのに②
三人目はファニーだ。
ファニーが御者当番の時、俺も一緒に外に出て横に座った。
「ファニーは馬車を操れるんだね。僕と同い年で出来るなんてすごいや。」
「ふふふ、我にこの世で出来ぬことなどない。見るが良いこの華麗な手綱さばきを。」
そう言うとファニーは慎重に馬車を動かし始めた。隣に座っている俺にも緊張が伝わってくる。こちらがビビるくらいガチガチに緊張している。
この緊張ではとても会話が出来そうにない。かと言って、今更馬車の中にも戻れない。しばらくはファニーの横で、馬車の扱いを観察することにした。
道は平坦で、危険なカーブも橋もない。だからこそ、この区間をファニーは任されているのだが、何か失敗しそうで、俺も緊張が解けずにいた。
だが、10分も走れば、馬が勝手に走ってくれることが理解出来たのか、ファニーの緊張も大分解けてきた。そろそろ良いかと会話を試みる。
「ファニー、旅は楽しめているかな。」
「うん、楽しめてるよ。デスティニーもチャリティーも優しい。もちろんアリスも覇王も。」
「良かった。ファニーが楽しめているなら安心だよ。最初デスティニーがきつく当たってから、心配だったんだ。」
「あれは、デスティニーが正しい。傭兵の仕事は命がけ。私みたいに何も出来ないくせに、ふざけた話し方しているのは嫌われて当然。」
「そうなの?僕はファニーの話し方好きだけどね。」
ファニーはそう聞くと、少し寂しそうに笑っていた。
「そんなこと言ってくれるのは覇王だけ。
わたしもこれじゃダメだと思っている。話し方じゃなくて、傭兵として一人前になりたい。」
「そうなんだ。僕は傭兵の仕事も理解していないけど、デスティニーやアリスに相談したら良いんじゃない。ファニーが言い難いなら僕から二人にお願いするけど。」
それを聞いたファニーはとても嬉しそうな笑顔になった。
「覇王、ありがとう。出来ればお願いしたい。」
「うん、わかった。じゃ、二人には街へ着いたら話ししとくね。」
しばらく沈黙が続いた。道は平原の中をほぼ真っすぐに続いている。見渡す限り、コスモスの様な薄いピンク色の花が咲いていて、とても奇麗だ。
前方からの緩やかな風と花の香り、そして美しい景色。何と平和で心地よい時間なのだろうか。あまりの心地よさにあくびが出始めた頃、ファニーが口を開いた。
「覇王は、デスティニーやチャリティーとエッチな事してるの?」
急に眠気を吹き飛ばされた、びっくりしてファニーを見て聞いた。
「いきなりどうした、ファニー。」
「デスティニーは置いといても、チャリティーとわたしは容姿で選ばれたんでしょ。そうじゃなきゃ、私みたいなポンコツは雇ってもらえないから。
チャリティーが覇王とエッチなことして、満足して、わたしに興味が無くなったら困る。」
「いやいや、確かに容姿で選んだことは否定しないけど、チャリティーとエッチなことはしてないよ、まだ。」
「まだってことは、これからするんだよね。だったらわたしも頑張るから、契約をきらないで欲しい。わたし男の人知らないけど、頑張るから。」
ファニーは手綱を握りしめ、正面を向いたまま硬い表情で言った。
いや、健気で可愛すぎる。そして契約を盾に美少女に関係を迫る俺は悪役なのか。いや、決して悪役にはならないぞ。今はまだ。
「ファニー、大丈夫だよ。契約は切らないから安心して。」
「じゃぁ、エッチなこと頑張る。」
「いや、違う、違う。ファニーには僕を好きになってもらいたいんだ。そして、その上で、ファニーとエッチなことをしたいんだ。」
俺も大分照れながら言ったが、ファニーも耳まで真っ赤になって聞いていた。
「覇王、わたしは覇王のこと好きだよ。でも恋愛対象じゃない。今後はわからないけど、今は、多分、当面はそんな風に思えない、と思う。それでもいい?」
「もちろんだよ。これから、ゆっくり好きになってもらえるように努力するよ。」
「うん、それを聞いて安心した。」
ファニーは晴れやかな笑顔になって言った。
3人それぞれに個別の時間をとって話しをしたが、3人とも俺がエッチな目的で雇ったことは理解しているようだ。
そして俺が、彼女たちから好意を持ってもらって初めてそういう関係になることを理解してもらった。
しかし、3人とも現時点では俺に恋愛感情は皆無だ。ただ、救いなのは人として嫌われてはいない点だけだ。
二人の年上のおねぇ様方には、弟にしか見てもらえておらず、同い年の子には友達としか見られていない。
この現状を改善し、3人ともに好意を持ってもらい、ちやほやしてもらいたい。そして関係を進展させ、俺を取り合いしてもらうのだ。
これが現在の目標だが、現実とのギャップが激しすぎる。何か強烈な一手で逆転したい所だ。
その日の夜、アリスに相談をしてみることにした。いつもの様にアリスの胸に顔をうずめ、抱き着く。すぐに眠気が襲ってくる。
眠気と戦いながらアリスに聞いてみる。
「ねぇ、アリス。旅は楽しいよ。でもね、あの3人にちやほやされながら、旅をしたいんだ。」
「そうなのね、ショーヘイ。じゃぁ、好きになってもらえるように努力しなくちゃね。」
「うん、でもどんな努力が必要なのかな。簡単な努力で何とかならないかな。」
「ショーヘイには無理ね。ある意味人の心を動かすのは簡単なことだけど、ショーヘイじゃ人生経験が足りないわ。でも、ショーヘイは優しいし、十分に魅力的よ。大丈夫、自信を持ちなさい。」
「いやいや、見た目は中の下だし、戦闘も出来ないし、頭も悪い。この現状では難しいから、アリスの力でカッコイイ僕を演出出来ないかな?」
「そんな小細工必要ないわよ。ありのままの自分で勝負しなさい。見た目はおしゃれすれば良いし、体も鍛えればいい、それに勉強も頑張れば良いでしょ。」
「でもさ、それじゃぁ、結果が出るのに時間がかかるじゃない。」
「それは当たり前でしょ。地道な努力しないと、何にも身につかないわよ。」
「そこをアリス先生にお願いしているんですよ。」
「はいはい、無理よ。それにあなたはまだ14歳なのよ、人生はこれから。なーんにも焦る必要なんてないのよ。努力して少しずつ良い男になって行きなさい。」
やはり、アリスは協力してくれないか。俺の魅了の力が発揮できれば良いのだが、その使い方はさっぱり分からない。
アリスの言うことも分からなくは無いが、14歳は今しかないのだ。今この時、女子にもてて、ちやほやされて、いろんな子とエッチなことして、青春を謳歌したいのだ。
それが、中学生男子が憧れる青春なのだ。
それでも俺にはアリスがいる、それを思えば、他の中学生男子に比べれば相当に恵まれている。今はアリスの言う通り、少しでも努力をしていくか。
「うん。じゃ少しでも努力して頑張る様にするよ。」
「良い子ね、ショーヘイ。ご褒美にエッチなことしてあげようか。」
アリスは俺を体から離し、俺の鼻に自分の鼻をこすりつけてきた。アリスの甘くていい匂いの息が俺の唇にかかる。俺の鼓動は早くなり、息が苦しい。
俺は我慢出来ずにアリスの唇に自分の唇を重ねた。そして射精した。
また、明日の朝、早起きしてパンツを洗いに行かなければならない。そう思ったが、アリスが可愛い私のショーヘイと言いながら頭を撫でてくれるので、直ぐに眠りに落ちて行った。




