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第十話 とにかく、ちやほやして欲しいのに①

第十話 とにかく、ちやほやして欲しいのに①


 次の休みにリージェン村へ出発することになった。旅の準備やら何やらはデスティニーが中心になって、やってくれたようだ。

 デスティニー曰く、チャリティーはお嬢様のため何も出来ず、ファニーはポンコツで使い物にならないそうだ。一人でもまともな、いや、まともでは無いが、しっかりとした人がいて良かった。

 リージェン村までは馬車で移動することになった。活動出来るのは、土曜の午後と日曜だけなので、その2日で街と街を移動して、傭兵の3人には平日たどり着いた街で、次の移動までは自由にしてもらうことにした。

 アリスがすでに、この街々にどこでも扉を設置してくれているので、街につけば家に簡単に帰ることが可能だ。

 リージェンまでは馬車で5日、四つの街(中には村もあるが)を経由して移動する。


 この移動ルートは街道として整備もされているし、馬車の乗り心地も悪くない。野宿することもないし、食べ物に困ることもない。

 馬車の中では御者当番を除く4人で、とても楽しく会話を楽しむことが出来た。何の不自由もない。だが、不満だ。大いに不満だ。

 誰も俺をちやほやしてくれないのだ。女性四人に対して、俺は男一人だ。しかも長旅だ、そりゃもう恋愛に発展する要素しかない。皆が俺を奪い合う展開になるはずだ、だが、そうならない。

 何か要素が足りないのだろうか。アリス以外は、二人きりになることがほとんどないし、皆で仲良くなった気がするが、それではダメで、やはり、二人きりになるシチュエーションが必要なのだろう。

 そこで、傭兵三人とそれぞれと二人きりになっていい雰囲気になる作戦を実行することにした。


 最初はデスティニーだ。

二つ目の街に着いた時、宿のデスティニーの部屋に行き、二人きりになってみた。

「デスティニー、話しいいかな?部屋に入ってもいい?」

「もちろんです、どうぞお入りください。」

 デスティニーの部屋はベッドが置いてあるだけの簡素な造りだった。座るところがベッドしかないので、ベッドに腰を掛けた。デスティニーは俺の右隣りに座った。


「少し、デスティニーと話しをしたいと思ってきたんだ。特に用事はないんだけどね。」

「わたしも昭平さんとお話しするの好きですから、大丈夫ですよ。」

「うん、ありがとう。で、旅はどうかな、楽しめている?」

「えぇ、もちろんです。みんなで楽しく旅をして、これで給与ももらえるなんて夢の様です。」

「楽しめているようで良かったよ。デスティニーは旅以外に何か楽しみたいことあるかな?この旅が終わったら、また皆で何かやりたいしね。」

「今は何の考えもありません、満足していますので。でも、皆で何かをやりたいのは賛成です。また、何か考えておきますね。」

「うん、思いついたら教えてね。そうそう、ファニーとは仲良くやれそうかな。」

「はい、とても良い子です。このメンバーであれば何の問題もないと思えるようになりました。ただ、本格的な傭兵の仕事では、一緒に仕事はしたくはないです。」

 デスティニーは小さく笑いながら言った。

「あぁ、やっぱりそうなんだね。でも僕達といるうちは仲良くしてあげてね。」

「もちろんです。任せてください。」


 少しの間があり、デスティニーが俺の右手を握ってきた。デスティニーを見ると、顔を赤くしてこちらを見ている。とても、それはとても可愛い。

 どきどきして固まった俺を見たデスティニーは、微笑んで俺をベッドに押し倒した。

「いや、デスティニーどうしたのかな。」

「昭平さん、私の部屋に一人できたってことは、私としたいからですよね?わかっています。」

 そういうとデスティニーは唇を重ねてきた。あまりの気持ちよさに抵抗できない。だが、違う、デスティニーは俺が好きなわけではない。

 何とか理性でデスティニーを押しのけ、デスティニーに言った。

「僕は、デスティニーが僕を好きなら、いちゃいちゃしたいと思っている。でも、ちがうよね?」

「好きですよ、昭平さんのこと。でも、昭平さんの言う好きではないですね。男としてではなく、弟の様な感覚です。」

「そうだよね、僕は、デスティニーが、僕を男として見てくれるようになった時、いちゃいちゃしたいと思うんだ。」

「わかりました。ではそれまでお預けですね。でも、もし、私が昭平さんを男としてみなくても、したかったらいつでも言ってくださいね。私はまっていますので。」

 デスティニーはとても優しい笑顔で俺に言った。なんて可愛さだ、惚れてしまう。俺は何とか自分の欲望に打ち勝ち、デスティニーの部屋を後にした。


 二人目はチャリティーだ。

 三つ目の街で、昼間二人きりで、デートすることにした。

「チャリティー、一緒に出掛けよう。」

「かまへんで、で、自分どこに行く気やねん。」

「街をブラブラしてみよう、美味しそうなものがあれば食べて、服とか見て、景色の良い場所探そうよ。」

「せやな、ほないこか。」

 二人で並んで歩く。背はほとんど変わらない。だが、その容姿はとても人目をひいた。端正な顔立ち、銀髪に赤い瞳、とにかく目立つ。

 自分の普通な容姿と比べると、みじめな気持ちにもなるが、こんな美人を連れて歩いている点は、街中の男どもに対して、優越感を感じる部分もある。

 繁華街を歩くと、チャリティーは珍しそうに、何にでも興味を持って見ている。美味しそうな串焼き、手作りのアクセサリー、民族衣装、庶民的な服。

 それらを見つめる純粋な瞳、姿は、奇麗な容姿とのギャップで、とても魅力的に見え、俺の心を奪って行った。


「お昼だし、何か食べる?」

「食べよか、自分何が食べたいん?」

「僕は何でもいいよ、チャリティーは何が食べたい?肉?野菜?魚?」

「せやな、あそこにある店に入ろか。何となくいい匂いするし。」

「じゃ、そうしよう。」


 入った店で適当な料理を頼み、食べる。俺には薄味で美味しくもないが、チャリティーは美味しそうに食べていた。

 その食べる姿はさすが元貴族、とても美しい。料理よりもチャリティーの姿ばかりに気が取られ、ずっとドキドキしながらチャリティーを見ていた。

 昼の後も、いくつか店をまわり、珍しい物を見つけては、チャリティーと楽しんだ。夕方も近くなったので、街の高台に登り、チャリティーと並んで遠くを眺めた。


「チャリティー今日は楽しめたかな。」

「せやな、まぁまぁ楽しかったで。」

 チャリティーは俯き顔を赤くして言った。そして俺の手を握り、ぴったりとくっついてきた。照れているその姿と言葉のギャップもまたいい。

「良かった、楽しんでもらえて。」

「なぁ、自分には感謝してるねんで。金も家もないわしに、家も仕事もくれた。それにめちゃめちゃ楽しい仲間もくれた。」

「うん、僕もチャリティーと一緒にいれてとても楽しいよ。」

「だから、ええねんで、わしのこと好きにしても。自分にはその権利がある。」

「いや、今は未だ権利はないよ。チャリティーが僕のことが好きになってくれたら権利が発生するかな。」

「そうか、なるほどな。自分、スケベなくせに真面目よな。」

「いや、確かにスケベは否定しないけど、真面目ではないよ。」

「ふふ、自分は可愛いな。幼い弟のようや。」

「やっぱり、男としては見られないのかな。」

「せやな、無理やろな。ただし、今は未だ、やで。将来のことは誰にもわからん。」

「じゃ、頑張ってチャリティーに好きになってもらおう。」

「おぅ、せいぜい頑張りや。期待してるで。わしも自分といちゃいちゃしたいしな。」

 そう冗談を言って笑うチャリティーの笑顔は本当に美しい。この笑顔に心を奪われない男はこの世に存在しないはずだ。

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