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第九話 気になるあの子はパーティーを追い出されたらしい

第九話 気になるあの子はパーティーを追い出されたらしい


 チャリティーを雇ってから一週間、次の候補者の面接が決まった。今度の子も何か訳ありらしい。顔が良いと性格に難が出てしまうのだろうか。

 所属していた、傭兵のチームから役立たずだと罵られ、追い出されてしまったとのことだ。優秀さに気が付いてもらえなったのか、本当にポンコツだったのかは謎だ。

 でも、アリスが選んだ人材だ、性格だけは悪くないだろう。とにかく面談をしてみてから判断をすればいい。


 アリス、デスティニーと3人で、いつもの喫茶店に向かった。チャリティーは同席したら、面倒そうなので、留守番をしてもらうことにした。

「ショーヘイ、見えるかしら、今日の面接はあの子よ。」

「あの、黒髪でツインテールの小さな子かな。」

「そうそう、ちなみに瞳の色は緑よ。どう可愛らしい感じでしょ。」

「ほんとだ、めちゃめちゃ可愛らしいね、僕より年下かな。」

「14歳でショーヘイと同い年ね。で、見た目は合格かしら?」

「うん、合格。後は中身だね、デスティニーはどう?」

「はい、私はどなたでも構わないのですが、あの方も、チャリティーさんと同じで、あまりいい噂をお聞きしませんので、ちょっと。」

「へーそうなんだ。ちなみにどんな噂なの。」

「はい、コミュニケーションが取りづらいとか、使えないとかですかね。」

「あー、話が苦手なタイプの子かな、内にこもってしまうような。傭兵として使えないであれば、それは求めてないから大丈夫かな。」


「じゃ、彼女のプロフィールを紹介するわね。

 えっと、名前は、ファニー・リッカー。14歳で、傭兵登録では暗殺者となっていたわ。

 ま、暗殺する対象もいないし、どうでも良いのだけれど。」

「暗殺者て、またこれは。確かに必要ないね。」

「まぁまぁ、とにかく会ってみましょ、二人とも行くわよ。」

 そう言ってアリスはいつものように俺とデスティニーを引っ張って店に入った。


 ファニーは斜に構えて足を組んで座り、俺が近づくと鼻で軽く笑った。俺は彼女の向かいに座り、その横にアリス、デスティニーはファニーの横に座った。


「初めまして、僕は山田昭平と言います。」

「ようやく現れたか、我が下僕となる者達が。

 我が名はファニー・リッカー、暗殺術を極めし闇の化身、そしてこの世を裏から統べる者だ。」

 あぁ、デスティニーが言っていた話しが通じないって、コミュ力の問題ではなく、中二病の方の問題だったのか。

「ふふ、なるほど、貴様が闇の化身か。我は鬼胎の魔女の主にして、冥界の覇王、ショーヘイである。

この遭逢を待ちわびたぞ、その力、存分に我の前で示すがいい。」

「ほほぅ、貴様が冥界の覇王か、噂は聞いている。しかし、その実力どれほどのものか、まぁ、試してやる。」

「ふん、闇の化身ごときが良く吠える。俺は左手しか使わん、貴様にはそれで十分だろう。」

「ほざけ、その減らず口から後悔の言葉を吐き出させ、恥辱にまみれさせてやろう。」

「では、始めるか。」


 俺は店内に響き渡る声で言った。

「すみませーん、ホットケーキ二つおねがいしまーす!」

「なるほど、ホットケーキとは賢明な選択よの、だが、我には通じんな。」

「はっはは、このホットケーキにドリンクはついていないのだよ、水を飲むことも禁止だ。果たしてこの動きについて来れるかな。」

「なめてもらっては困る。水分補給なしのホットケーキ早食いなど、我にとっては児戯にも等しい。」

「いつまでその強気が保っていられるか、見ものよのぉ。」


 席にホットケーキが運ばれ、勝負が始まる。おれは慣れない左手で黙々とフォークを動かし、口に入れていく。

 ファニーも、黙って食べているが、シロップの甘さが飲み物無しではきつい、更には口の中の水分も徐々に奪われていく。

 なかなか良い勝負ではあったが、僅差で俺が勝利をおさめることが出来た。


「どうだ、闇の化身よ、我が軍門に下るか。それとも死を選ぶか。」

「なかなかいい勝負だった。しかし、貴様の軍門に下るつもりはない。だが、貴様は面白い奴だ、強敵<<とも>>として一緒に戦ってやろう。」

「ふふ、意地でも我が軍門には下らぬか。それもよかろう、では、我が覇道を一緒に進むが良い。」

 そしてファニーと二人、大きな声で笑った。


 その様子を一部始終黙って見ていたデスティニーが急に口を開き、そして言い切った。

「昭平さん、ファニーさんが仲間になるのは嫌です。言っている意味が分かりません。」

 俺とファニーは、びっくりした顔でデスティニーを見た。なんと、今の会話が理解出来ないとは。

「デスティニー、今のはコミュニケーションの一つの方法だよ。僕らの年頃では良くある話さ。」

「昭平さん、そんなことはありません。私も14歳の頃がありましたが、あんなふざけた会話をしたことがありません。

 しかも、私たちは傭兵です。命を懸けて戦闘を行うのが仕事です。その仲間が、そんなふざけた人間では困るのです。

 私は、仲間にはちゃんとした会話が出来る人を望みます。」


 デスティニーの強い言葉を聞き、ファニーは涙を浮かべ、唇をぎゅっと噛みしめている。多分、前の仕事も同じ理由でクビになったんだろうな。

 俺はどうしようか悩んだ。デスティニーはすでに仲間だ。そのデスティニーが反対するのであれば、俺と趣味が合う子であっても、仲間には迎えられない。

 俺の悩んだ様子を見かねて、アリスがフォローしてくれた。


「デスティニー、あなたの言う事は正論だわ。反論の余地がない。

 でも、ショーヘイが依頼する仕事は命がけのものは無いわ、ほとんど何も危険が無い。

 だからと言って、傭兵を雇うのに、仲間同士がギクシャクして良いわけでもないわ。なので、これは私からのお願い、ショーヘイはファニーを気に入っているようだから、デスティニーもファニーと仲良くして欲しいの。お願いできるかしら。」

「鬱金色の魔女がおっしゃるのであれば、仲良くはします。でも背中を預けることは出来ないと思います。」

「ありがとう、デスティニー、それでいいわ。

ショーヘイ、デスティニーにも了解を得られたわ。ファニーと契約しましょう。」

「うん、そうだね。ありがとう、デスティニー。」

「いえ、御礼を言われることではありませんので。」


「で、ファニー、僕達と契約をしてくれるかい。」

「わたし、こんなんだし、覇王が良ければお願いしたい。」

 ファニーは、普通のあどけない顔の女の子だ。少し人よりは変わっているかも知れないが、それを言うなら俺の方が相当に変わっている。

 その愛らしい姿は、守ってあげたいと思える。俺は出来る限りの笑顔でファニーに答えた。

「ああ、もちろん良いとも、ファニーこれからよろしくね。」

 そして、ファニーをデスティニーに預け、家に帰った。


 夜、アリスの胸に顔をうずめ話しをした。

「仲間がこれで集まったね、いよいよ冒険の旅に出発したいよ。」

「そうね、ショーヘイ。イディオット王国の端、リージェン村まで行ってみましょうか。」

「そこには何があるの?」

「んー何もないわね。でも、行くまでの間に魔物に遭遇するかも。」

「いいね、魔物。アリスがやっつけてくれるでしょ。」

「せっかく傭兵雇ったんだから、彼女たちに任せてみたら?」

「それも良いね。あーそうそう、そこは一日で帰ってこれるかな。学校あるし。」

「心配しなくても大丈夫よ。私が扉で何とかしてあげるわ。」

「やったー、さすがアリス。それから、本当にありがとうね、大好きだよアリス。」

「はいはい、そーいうの良いから早く寝なさい。」

 俺は、アリスに包まれ、冒険の旅を夢見ながらぐっすりと眠った。

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