第一話 異世界へ
第一話 異世界へ
|鬱金色<<うこんいろ>>の魔女
私はアリス・キテラ。この世界、クラップシリイで魔道を極め、不老不死の体を手に入れた。世界を五回焼き尽くす程の魔法と、この惑星を砕いて破壊することが出来る拳を持っている。
そんな私を人々は恐れ、私の少し赤みがかった黄色の髪の色から、鬱金色<<うこんいろ>>の魔女と呼んでいる。
しかし、こんな私にも自由に出来ないものが、たった一つだけある。それは人の心だ。魔法で一時的に人の心を操ることは出来る。だが、魔法の効力が失われれば、それでお終いだ。
だから、私は永続的に人の心を支配出来る方法を探した。その力で、特段何かをしたいわけではない。ただ、自分に出来ないことがある、そのことが嫌だっただけだ。
私は探した、この世界、別な世界、別な次元、別な宇宙、とてもとても長い時間と手間をかけて。そして、私は見つけた、人の心を永続的に支配出来る力を持つ者を。
そいつから、その力を奪い、自分のものにする。そうすれば、私は正真正銘、無敵な存在。神になれるのだ。
|山田 昭平<<ヤマダ・ショウヘイ>>
俺は部活を終え、いつものように、田園の中、気持ち良い風を感じ、自転車を走らせる。決められたヘルメットなど被らない、直線ではハンドルから手を放し、両手を広げる、俺は自由だ。
事故など怖くない、俺が事故を起こす訳がないからだ。注意してくる教師も怖くない、自転車で疾走する俺を誰も止めることなど出来ないからだ。そう俺は無敵なのだ。
すれ違う、同級生や後輩女子からは黄色い声援が飛ぶ。
「ヘルメット被れよ、校則ぐらい守れ!坊主頭!!」
「両手放しとか、マジで危ないじゃん、ぶつかったらどうしてくれんの?」
「あいつ、何、自分がカッコイイとか勘違いしてんの?キッモ。」
俺の無敵ぶりに憧れた女子たちよ、そんなに注目されたら照れるぜ。だが、俺はお前らのような田舎娘を相手にはしない。
俺の様な無敵な男に合う女は、ハリウッド映画に出てくるような、パツキンで目の青いグラマーだ。
そんな俺を妬む同級生や先輩も多い。すれ違う度、嫉妬の声が聴こえる。
「あいつ、やべぇから近づかいない方がいいぜ、でも喧嘩めちゃめちゃ弱いから、そこは安心しろ。」
「あいつ、勉強も運動も顔も普通で、全く特徴ないからなぁ、あれで特徴出してんのかな。」
「俺はあいつの将来が心配だよ。大人に成れないんじゃないかと思って。」
今日も俺の無敵さが羨ましいようだ。だが、俺の友達になるには荷が重いぜ。
俺の様な無敵な男には普通の友など必要ない、俺に必要なのは強敵<<とも>>だ。
舗装されていない道を自転車で疾走する時は、いつも危険が隣り合わせだ。小石、水たまり、カエル、踏んでしまえば命にかかわる。
だが、俺はその障害を難なく越えることが出来る。無敵のテクニックで突然現れるそれらを難なく、そして華麗にかわしていく。
いつもの様に、巨大なウシガエルを見事にかわし、その先の大きな水たまりを避けた。少しバランスを崩し、田んぼギリギリを走行した時、それは突然現れた。
田んぼの真ん中に不思議な七色の道が現れ、おれは吸い込まれるように、その道を自転車で駆け抜けた。
異世界召喚
七色の道を自転車で通り抜けると、そこには、天井が体育館の様に高く、多分バスケットコート2面ぐらいの大きさの部屋があった。床面には魔法陣が描かれている。
地下なのか、夜なのか、部屋は薄暗く、部屋の所々で松明が燃え、照らすものは火の明かりしかなかった。辺りを見回すが、暗くて良く見えない。
部屋の奥の椅子に、誰かが座っている姿が見えた。だが、良く見えない。近づいて良く見たい気もするが、それは愚者の行いだ。無敵な俺は、不用意に近づきはしない、賢者でもあるからだ。
やがて眼が暗闇に慣れ、少しだが周りが見えるようになってきた。椅子に座っている者は、どうやら女だ。髪が長い、それよりなにより胸がでかい。
女はコスプレをしているのか、大きく胸の開いた黒っぽいタイトなミニのワンピを着て、右手で頬杖をつき、足を組みこちらを見ていた。
まずい、多分痴女だ。中学生の俺を慰み者にするに違いない。俺の無敵の危機感知センサーが反応している。一刻も早くこの場を早く逃げなければならない。
俺は痴女を見ながら後ずさりして、自転車に跨った。そして勢いよく反転し、全力で自転車をこいだ。
すると、痴女が命令してきた。
「何故、逃げる、こっちに来い。」
その声は何故か右の耳元で聞こえた。そして、その声に反応し、意思とは関係なく、体が痴女の方に向かって自転車を走らせた。
そして、俺は痴女の前で自転車を降り、目の前まで歩かされた。
痴女を見た。美しく長い黄金色の髪、大きな青い瞳、透き通るような白い肌、そして大きな胸と細いウェスト、程よく大きいお尻から伸びる、魅力的な太もも、そこには俺の理想があった。
あまりの自分の理想に近く、じっくりとそして、嘗め回すように痴女を見た。
すると痴女は言った。
「お前を私がこの世界に呼んだのだ、お前の能力、誰であろうと自分の虜にしてしまう魅了の力を奪うためだ。
その力を奪ったら、苦しまずに殺してやろう。」
とても美しい笑顔で話しかけれ、俺は有頂天になった。話し掛けられた内容は意味が分からなかったが、痴女のプレイスタイルなのだろう。これから俺は、あんなことやこんなことをされるのだろうか。
いや、俺は無敵な男だ。いくら痴女だからとはいえ、受け身になるのはまずい。14歳童貞とはいえ、ここで積極的に出ずどうする。
本も読んだ、グラビアもビデオも見た、知識はあるはずだ。何よりもこの理想の姿をした痴女を、俺のテクニックで虜にするのだ、そう強く考えた。
俺は無敵だ、強く考え願えば、出来る、そう、必ず出来る。痴女を俺の虜に出来る。
俺の中で何かがはじけた、いや爆発と言ってもいい。俺の内面世界の色が変わる黒から青、そして赤へ。
急に痴女から笑顔が消え、その白い肌を紅潮させ、潤んだ瞳で上目遣いにこちらを見てきた。そして、両手を胸の前で重ねた、おねだりポーズだ。
果たしてこれは、どんなプレイだ、命令から急におねだりか、無敵とはいえ、さすがの俺も経験値が足りない。
パニックだ。聞くしかない、ここは一旦、仕切り直しで、痴女に聞くしかない。
「ちょっと、待ってください。僕はあなたに何をしたらいいんでしょうか。大変魅力的なあなたが満足するプレイとはいったい何でしょうか。」
すると痴女は甘い声で囁いた。
「私はあなたが満足するなら何でもいいわ、私はあなたのもの、何でもしていいのよ。あなたが死ねと言えば死んでみせるわ。」
いや、急に重いな。少し舞い上がって脳内がエロに支配され過ぎていた。状況を整理しよう。俺は、七色の道を通ってここにやってきた、そして、痴女にあった。
この痴女の見た目は、俺のドストライクで、自分を俺の好きにしていいと言う。これらの状況から導き出される答えは、夢。そう夢以外にはない。
夢であるならば、このまま痴女に、あんなことやこんなことをしてもいいが、夢精した後処理が面倒だ。オカンに見つからない様、下着を洗わねばならない。
だが、この状況で我慢できる程、理性がきくはずもない、えぇぃ、ままよ。俺は痴女を抱きしめる。とても柔らかい、しかもいい匂いだ、なんて気持ちが良いのだろう。
痴女も抱きしめてくれる、生まれて初めて感じる異性の温もり、それだけでイキそうだ。
だが、だんだんと痴女の力が強くなる、痴女の吐息が荒くなる。痛い、息が出来ない、体もあちこち痛い。
「苦しい!痛い、痛いから離してください!お願いします!!」
俺は必死に叫んだ。すると痴女は慌てて離してくれた。
「ごめんなさい! つい、力が入り過ぎてしまって。許して。」
痴女は離してくれたが、距離は近い、彼女の顔は僕の目の前にある、鼻が触れるか、触れないかの距離だ。
この痛みからすると、僕はどうやら夢を見ていない。それに先ほどまでの高揚感が痛みによって、一気に萎えてしまった。
が、それよりも恐怖が湧き上がってきた。この痴女はサイコパスなのか、これが所謂サイコパスという奴なのか。
サイコパスの意味は良く知らないが、平気で人を殺す奴だ。やべぇ、リアルサイコパス初めてみた。
無敵の俺もさすがに戦略的撤退を開始する必要があるようだ。
「あの、僕、そろそろ家に帰らないとならないんで、失礼します。」
一礼して、自転車に跨る。そして気が付いた、痴女に訪ねてみる。
「ここはどこですか?で、僕の家はどっちでしょうか?」