終章
靄が掛かったような視界が、徐々に晴れていく。
瞼から開かれた目が最初に見たのは、細長い蛍光灯が貼り付く白い天井であった。
それから身体を起こそうかと試みたが、相変わらず私は寝起きが悪い上に。妙に身体が重くて上手く動かす事が出来ない。
仕方なく、私は何とか比較的自由の利く首を左右に動かした。
此処は、手鏡で見た病室のベッドの上で間違いなさそうだ。
私は違和感を感じて、右下へと視線を向ける。
そこには、私が横になるベッドの端に。うつ伏せに上半身を預けて眠る白兎――秋兎君の姿があった。
すると、彼の睫毛が微かに揺れる。
彼も、夢の中から目覚めるのだろうか?
私は、彼が目を覚ます前に。最初に言うべき言葉をどうするか……回転の鈍い頭で考え始めるのであった。
***
“アリスは良いなぁ、自分の為に。面白くておかしな冒険が出来る物語を作って貰えて……”
「きっと、君は。何気なく思って、何気なく呟いただけだったよね……」
でも、君の願いを叶えたくて。君に笑って欲しくて……君を送り出した、この物語はどうだったかな?
「またね! ボクの“アリス”!」
まだまだ続いていく、君が自分で紡ぐ君の物語に。また、いつか遊びに行くよ!
【おとぎ世界のアリス‐FIN‐】




