表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おとぎ世界のアリス  作者: 志帆梨
28/70

操り人形と“アリス”⑧


「いいなー!! ボクも、“アリス”の作ったご飯食べたーい!」


あー、もうー……。


「やっぱり今夜も冷たーい!」


彼は今夜も変わらず、ハイテンションだ。


「そりゃあ、君と今日も会う事が出来たからね!」

「……そうですか」

「そんな素敵な日なのだから! 早速、お茶会を開こうー!」


言った傍から、出現するテーブルと椅子とティーセット。勿論、まぬけな顔をした茶色いウサギと、眠っているヤマネのぬいぐるみも一緒だ。


「本日はセイロンティーに、おやつはザッハトルテだよ!」

「ザッハトルテ?」


聞いた事無い名前のお菓子だ。


「とーっても美味しいよ! 是非食べてみて!」


まあ、「百聞は一見に如かず」っていうしね。私は早々に椅子に着席して預く事とする。

私も大分、慣れてきたなあ……。


「それだけ、ボクの存在が君の――」

「紅茶お願いしまーす」


彼にも、何だかんだ慣れてきた気がする。

帽子屋が淹れてくれた温かな紅茶が、少し苦みを帯びた香りで私の鼻腔を刺激した。


「美味しい……」


しかし……これは夢の世界の食事だよね?

何で、こんなに味をしっかり感じる事が出来るのやら……。


「もしかしたら“夢”だと思っている“今”が現実で、“起きてる”と思ってる時が“夢”かもしれないよ?」

「まあ、そうかもしれないですね……」


結局、全然良く分からないが。

まあ、特に何か問題があるわけでもないし。あんまり深く考えるのは良そう。


「そうそう! 今は、ボクと二人きりの時間を楽しもう!」


私は目の前に置かれた「ザッハトルテ」という、チョコレートケーキのような形状のお菓子へフォークを差し込んだ。


「ねえ、無視なの“アリス”!?」

「あっ、これ美味しい」

「ねえ、“アリス”?!」


この前のチョコレートケーキとは、また違った味わいと触感。そして、私の口の中に濃厚なビタースイーツが広がった。


「心の中でまで無視しないで~!」

「そんな事より」

「そんな事?!」

「なんで貴方は、私に何も教えてくれないんですか?」


妙に重い空気が、この真っ暗な空間を包んだ。

だが、帽子屋は静かにいつもの笑みを浮かべていた。そしてティーカップを手に取り、口元へと傾ける。

この先、どう言葉を続けて先に進むべきか……私は思考を巡らせる。選択肢を間違えたら、もしかすると――


「ボクが大好きな“アリス”を、傷つけるような事をしたりなんかしないよ」


ティーカップを口から離し、ニッコリと彼は言う。


「ボクが教えないのは、“教える事”に意味が無いからだよ」

「それって、どういう事?」

「見つけてみて」

「えっ?」


笑みを浮かべて細められ、その瞳を垣間見る事も出来ないのに。彼の視線は私を確実に捕らえる。


「君が進み続ければ、きっと君が欲しい答えに辿りつけるかもしれない」

「私が知りたい事は、私自身で見つけるべき……と?」

「そう、固い話じゃあなくてね」


笑いながら、帽子屋は続けた。


「“宝探し”は、探している過程が一番楽しいって事だよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ