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絶対絶命のリンメイ!!

 

「オレたちもおんなのひとも、元々は同じおんなのひとから生まれてるってきいたにゃ」


「だとしたら、オレがおんなのひととして生まれた可能性もあったのかにゃ?」


「お腹減らないし長生きだってきいたにゃうらやましいにゃ」


「そう?僕は男に生まれて良かったと思ってるよ」


「大切なみんなと一緒に暮らせるからね」


 ウソだねシャンディガール。シャンディ少年、口でこそみんな、と言ったが、実際に頭に浮かべたのはひとりだけだ。


 ていうか普通に会話をして打ち解けてしまったふたり!それぞれの思惑はどうした!?


「あー。確かに。そうにゃ。みんながいるって大事にゃ」


「消耗したでしょ?固形熱源(カロリーバー)油剤灰分(マルチミネラル)があるよ」


「にゃにゃ!くれるのかにゃ?」


「食べな」


「助かるにゃ~」


 がっついてえずくリンメイ少年の薄い背中をさするシャンディ少年。この荒廃した世界で大変尊い献身の姿である!合掌!


(心配になるくらいには痩せている。あのキンマンな硝子少年帯が?じゃあこの子は本当に誘拐された他所の子?役作り?)


「余りご飯を与えられてないの?」


「ん、んにゃんにゃみんなと同じだけ食べてるにゃみんなペコペコにゃ」


(みんな?捕虜のみんな?それとも帯のみんな?)


「そうなんだ。心配だね」


「にゃにゃ。見損なってくれるにゃにゃ。昔よりご飯は食べられないけど、お腹はいつもペコペコだけど全然いいいにゃ。今がいいにゃ」


「そうなの?」


「そうにゃ。誇り。誇りをおまんまの代わりに食べてるのにゃ。だからとっても幸せにゃ」


「大将はすごいね」


「そうにゃ!にゃむにゃむ」


 TMPO端子の恐ろしさよ!シャンディ少年、リンメイの背中を撫でさすりながら、気付かれない様に互いのTMPO端子も擦り付け合い、無理やりな交換/交歓(こうかん)によってリンメイの精神をHACKしたのである。

 シャンディほどの巧みな手管(テクニシャン)であればこそ出来る芸当で、リンメイ少年は知らず知らず、そして自身がボロを出したと気付かない程度の言葉を吐かされている!

 互いの同意の無い強引な交換/交歓(ごうかん)は忌避される行為で、特にHACKまでするのは尊厳の陵辱たる最低の行いである!破廉恥漢だねシャンディガール!

 しかしそれをする事がみんなの役に立つならば、当然のように行うことこそが、彼ら隔離地域社会の倫理、規範、心意気である。己が地獄に落ちて皆が助かるなら、喜んで地獄に落ちるのだ!好漢/硬漢(こうかん)だねシャンディガール!!

 この荒廃した世界で大変尊い献身の姿である!合掌!どうかこの子が心穏やかに地獄へ行けます様に。


(意図的に食事を摂っていない?いや、そもそも盗っていない?何かトラブルか?あのイレブンバックが?それこそあり得ない)


「で、あのーお腹もいっぱいになりましたので、そろそろ、こ、いや、査定、査定をしていただけにゃいでしょうか!?オレ、優、にゃにゃ、可、くらい貰えたり?」


 こうかんとは恥ずかしくて言えなかったリンメイ!アクロバティックな方法で現在進行形、はじめてのこうかんをしているのだが気付いてない!

 オス端子同士をグルグルヌメヌメにして接続、しかもHACKされて、という今後のこうかんが心配になる形でもう既にやっちゃってるのだが初心で無知で気付いてないのだ!なんと罪深いシャンディ!原罪進行形だ!淫靡で邪悪な知恵の果実だ!


「あれ、もしかしてしたこと無いの?」


「にゃーまだ駄目っていわれたにゃ」


「男同士でしないの?練習にもなるし精神的にも安定するからみんなやってるよ」


 無垢な顔で囁くシャンディ。無理やりなHACKの影響でふたりの足元はネッチョネチョなのに!真に無垢なリンメイ少年を素知らぬ風に!なんてやつだ!合掌!


「そうにゃの?うちはダメなのにゃ。先にしちゃうと、本番でうまく出来なくなるからって」


(へえ。なるほど)


 おんなのひととは上手くいかなかったけれど、男同士のお遊戯のこうかんには抜群の適正があったようて、己の抜群のHACKによって皆、喜んで門戸を開く。

 シャンディガールは犯罪抑制装置の転用、という天与の、半ば生得的な能力ではなく、己が悲劇的な経験により習得したその手練手管によってこの荒野を生きてきたのだ!


「勘違いしてるみたいだけど、僕はおんなのひとじゃないよ」


「そ、そうにゃのかにゃ。……こんなに柔らかくて良い匂いなのに」


 リンメイ少年、伝聞だけで聞いた「おんなのひと」の特徴から勘違いしてしまった。頬に朱が差すのはしかし無知の羞恥からだけではない!抱き締められてるしHACKされてるしでもうむちむちめためたによる羞恥なのだ!


「そうだ、こうかんの練習しよっか」


「え、だ、だめにゃ禁じられてるにゃ」


 もう禁を破ってますがね!


「大丈夫だよ。うちでは皆がやってることだよ?先に練習しておかないと、上手く出来なくておんなのひとに恥をかかせちゃうかもしれないし、紳士なら嗜んでおかないと」


「むむ、紳士なら嗜むのかにゃ。なら已む無しにゃ~」


 もう嗜んでますがね!


(もっと情報を引き出そう。……いっそ本当に裏切り者に仕立てようかな?)


 隔離された荒野の倫理観!心優しきシャンディガールですら身内以外には残酷なのである!


 シャンディのTMPO端子が魔物の触手めいてリンメイ少年を絡みとる!陥落まであと一歩、先っちょだけだ!


 しかし、そんな川原での少年同士の交流を遠くより、その背中を見つめる影があった!果たして何ものの影なのか!危うしシャンディガール=ガウチョパンツ!


 三千世界と、あと痩せた哀れな背中を普く暖める光となれ!カンゼヲン!!

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