健全なセイシ!!
セイシ、シャンディ、イレブン、三者三様、三位一体!一触即発色即是空の空気のなか、緊張感が膨満感よろしく破裂する直前、町の方から煙が上がった!
「おとり!?」
慌てて補陀落町内を注視するシャンディガールその他少年たち。熟練のセイシ少年はクラスメイトたちに同調せず、ここぞとばかりにイレブンバックへ攻め寄せる!
予め、起こるとわかっていた襲撃側だが、それでも意識に隙間はできる。動揺するはずの被害側がノータイムで突っ込んできたら尚更だ!
「にゃべぇ!大将を守れ!」
イレブンバック以外の硝子少年帯メンバーは状況の理解に1拍遅れた。これは致命的な隙間となった。
なにしろセイシ少年のソウルは16ビート。1拍で4ビート刻む計算だ。だからこの遅れた1拍のうちに4にんが沈む!残り6ザコ1ボス計7にん!なに言ってんのかわからない?考えるな!感じろ!
有機二輪の触腕から放たれる、宙泳粒子による粒子砲。セイシ少年はそれを非殺傷用の低出力に絞り、硝子少年帯に撃ち込んでいく。
「にゃ、にゃー!服が弾けちゃうー」
「「「やーんっ」」」
遅れてイレブンバックの有機二輪からも粒子砲が断続的に撃たれ、その衝撃で我に返った町の少年たちが戦闘に加わるか、町の救援に向かうかで迷いまごつく。その致命的な遅れを利用して距離を取る硝子少年帯の一味。
「落ち着けよセイシ=ツムグ。ほんの挨拶代わりだ。ここは退いてやるから、さっさと町に戻れ」
なんたる傲慢さ!己らから仕掛けておいて、しかも分が悪いとみるや上から目線で見逃せと堂々言い放つ。流石はいっとう重い殺人鬼の末裔。クラスメイトたちの殺気も高まる!
「え、いいんですか?へへへ。じゃあ失礼いたします大将」
しかし我らのセイシ、このふわふわ癖毛の少年は、不和をもたらすのが大好きなのだ!クラスメイトも硝子少年帯も期待していた反発の言葉をセイシは1つも吐かず、先ほどまでの勇ましさを捨てヘコヘコと一目散に逃げ帰る!
そう!何故ならその方がみんな嫌な気持ちになるから!全ては、彼の行動の全てはその不和へをもたらす為に為されるのだ!
見よ!敵も味方も舌打ちしている。最悪の少年なのである。
「あはは、セイシは本当にさ」
煙こそ大げさに上がっていたが火種は小さく、挨拶代わりというのも本当だったようで硝子少年帯はすっかり撤退していたので、そのまま補陀落町の少年たちとおんなのひとたちは品評会を再開した。
現在はその第二部、御覧式交換/交歓の時間である。
高評価を付けられた少年から順番にミーム交換/交歓する。次代の生産のためにミームを一気に、大量にストックするのが第二部の目的である。
おんなのひとの来訪は不定期だし、相性が合わないことの方が多いくらいなので、やると決めたらとことん一気に、大量にやらねばならぬのだ。
「ほっ、ほりゃ、とりゃっ!……次!」
「ひ、ひい、ふう、」
「よっ、せい、おりゃー!……次!」
「ひぃ、ひぃ、ふぅ、」
「なんのー!まだまだぁー!おかわりっ」
「う、ううー、はーはー」
「生徒のみなさーん!お昼休憩だよー!水分とカロリー取って!すぐにバテますよー!あとマルチミネラル剤もね!亜鉛補強タイプのやつをね!」
先生の号令で午前の部が終わる。朝一番に硝子少年帯の邪魔が入ったために、急ピッチでこうかんを進めていく一同。流石は成長期の少年たちである。ハイペースのこうかんにも良く耐えた。シャンディガールを除いて!
「う、ううー」
「どうしたシャンディ?あ、お前まだ4人としかこうかんしてないじゃん。そのペースで大丈夫か?お前全員から最高評価だから全員とこうかんだぞ?日付跨ぐぞこのペースだとチクショー!俺が一番だったのに!」
「急な激昂……。ううー、ぐすっ」
「お、おいおい。マジでどうしたシャンディ」
セイシ少年との会話で一瞬笑顔になるも、即座に泣き出すシャンディガール。セイシ少年手のひら返しで慰め始める。彼は世に不和をもたらすことが至上命題の少年なので、相手の感情にあわせて行動が全くかわるのだ。
仮にシャンディが鼻高々にカロリーゼリー等をちゅーちゅーしばいていたらケンカの一つでもして鼻っ柱を折るのだが、何故か意図不明に泣き出したのでここは″見″に回る。
泣くその理由を問うて、殴るか慰めるか決めるのだ!いつだって己の感情を排除して選択してきた!より問題が大きくなる方向へ!!
「セイシ、これ、見て」
おもむろに肌を晒して披露するは、シャンディガールのTMPO端子。有機的に肉体に接続するそれは、その肌艶、色艶までもシャンディと地続きで美しく、艶かしい。
彼に取り付けられた女性ホルモン様物質精製投与システムの影響か、あるいは本人の資質なのか、中性的な、菩薩の様な美事な姿だった。
「で、デケェ」
TMPO端子、有機的に繋がる為か個人差はあるが成長していく。女性ホルモン様物質精製投与システムの影響か、あるいは本人の資質なのか、シャンディガール端子、美事な姿だった。
「なんだシャンディ!自慢してぇのか!あぁん!?」
「あぁん!?掴まないで感度上がってるからぁ。……そうじゃなくて、握ってみて?」
「いや、握ってるけどすでに……あ、これ」
TMPOはおんなのひととのミーム交換/交歓にも使うデリケートなパーツだが、有機二輪や各種大型機械を操作する際も使う、乱用、蛮用を想定した端子なので、機械仕事が生業の荒々しい手で握りしめても大丈夫なのだ。
……え、倫理的な問題?ああ、TMPOは義体技術の応用であるから肉体の一部なので容易に人前で晒したり握ったりしてはいけない、的な?コミュニケーションツールとしても扱われるし、義体というならば、義体による握手みたいなものですよ?なんで読者諸兄は倫理的にどうこう考えた今?TMPOに嫌悪感でも持ちました?人類を発展させてきた素晴らしいパーツなんですよ?TMPOは。TMPOが無かったらここまで人類殖えて無かったですよ?
「お前のデケェ立派TMPO、ふにゃふにゃじゃねえか?どうしたんだよ!?こんなんじゃおんなのひと側のメス端子にカチカチなんねぇだろ」
「うん。途中からふにゃふにゃになっちゃって、うまくカチカチ嵌まらなくなっちゃたの。それで時間かかって」
ほら、倫理的に問題ないでしょ?あなたたちの時代で言うUSB端子みたいなものですよ。カチカチ鳴らなくてハマらないこと、良くあるでしょ?
「……ねぇセイシ。お願いがあるんだけど」
「ふむふむ。……えぇー!俺のオス端子をお前のメス端子に接続しながら、おんなのひとのメス端子にTMPOを接続したい、だってー!?アクロバット過ぎないか?おんなのひと怒るぞ多分。ストレス大きいと諸々仕事に響いてくるから品評会でこうかん相手選んでるんだぞ?」
「で、でもそうしないとあの人数捌けないよぅ。確認取って、OKでたおんなのひととだけでもさ、お願い」
「ふ、しゃーねーか!わかった、向こうが嫌がらないなら、全力で手伝ってやる!約束するぜ!」
セイシ少年は快諾した。何故ならその方が大きな問題が発生しそうだから!倫理的な意味で灰色の脳ミソ、黒に近いグレーのそれが天才的な計算をして結論を出した!
ここは悪徳と健全な青少年が共存する補陀落町。とっても健全で文化的な町です!
三千世界と、あと利用規約を照らして怒られないよう立ち回れ!カンゼヲン!!