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襲来のイレブンバック!!

「て、てきしゅうー!敵襲ー!!」


 シャンディガール・コールを遮る全裸にイヤーマフだけを付けた少年の叫び!


 慌ててコンバットスーツを締める少年たち。


 ひとりの少年だけがスーツに目もくれずメガネ装着を優先する。メガネが本体だからだ!


「西側の山!せんぷく!!かず11!!」


 メガネ装着によって、犯罪抑制装置由来の視野色覚光覚の制限が解除され、更には拡張され、町内のあらゆるものがクリアになる。瓦礫の隙間から昇る呼気の揺れ。二輪のタイヤに付いた泥の種類。セイシの首筋の赤い腫れ。シャンディガールの丸いカカト。今だけは全てお見通しなのだ。


 イヤーマフとメガネは索敵が役割なので、己の命よりその役割を優先した。飛び交う銃弾なんのその。場所や装備を割り出しさけぶ。各自準備が整い次第、前に出てふたりを守る少年たち。


「衣擦れがしない!たぶん奴らだ!注意!注意!一対一にはなるな!」


 メガネ少年の先祖は盗撮全般に性的興奮をする犯罪者。イヤーマフ少年の先祖は神の悪戯か地磁気の乱れか偶然軍無線を拾って懲役を受けたアマチュア無線少年。


 しかし出自がなんだと言うのだろうか!先祖に同情の余地があろうがなかろうが、ここでは等しく懲役受刑者。心と力を1つに合わせて戦うのだ!


 おんなのひとたちの許可を得て少年たちがスタンバイ。


 即座に無機質な二輪の群れが生まれ、飛び乗り敵を迎え撃つ。


 少年たちの肉体には、戦術的(タクティカル)並列処理(マルチプロセス)機構(オーガナイゼション)(TMPO)、または戦闘用(コンバット)平行作業(マルチプログラム)自動化管理(オートメーション)(CMPO)と呼ばれる端子が埋め込まれている。


「総員、コネクトぉ!」


 緊急時対応の訓練通り、柔らかく自身を包み込む二輪に、そのTMPOのオス端子を接続した!!


 無機質な二輪群が有機組織的に動き出す!少年たちだけでは覚束ないであろう瓦礫の山での走行も、二輪側の補助によって熟練のバイク兵の如しである。


「ふたり組つくれぇ!絶対一対一になるなよ!」


 TMPO端子によって二輪に接続し一心同体、1つの生命の様に活動出来る。だけでなく、二輪が持つ能力も我が物とし、少年同士でも連携が密に、一個の群体のような行動が可能となるのだ!


 接続して5秒で軍隊、と称賛される、犯罪者集団の必需品。各町の国力(・・)の指標と揶揄される有機二輪の恐ろしさの一端であった。


「出た!」


 位置が割れているならば意味が無い、と襲撃者たちが瓦礫から飛び出す!


「やっぱりほとんど服着てない!硝子少年帯(ティーンエイジャー)だ!気をつけて!」


 11人の敵たちは、ホットパンツにノースリーブジャケットの出で立ちで、ローラースケートを巧みに操り瓦礫を跳び跳ねる。


「ニャッハー!」


 殺人鬼の子孫である為に、いっとう冷遇されている哀れな集団。

 有機二輪はまともに配備されず、コンバットスーツも製作できない環境に押し込められた彼らはまともな資源が手元にない。

 その為に、それでも人類存続の為に生きることを強いられている彼らは度々村々へ略奪に走った。


「あんなオモチャで下りてくんのかよ!」


「弱音はくな!」


「げいげきぃ!」


 かつて、少しでも頑丈な装備をと先祖が用意したジーンズ生地の衣服は、時代とともに蛮勇と技量を示すため、どんどん、わざと面積が減り、局部を隠すだけになった。そしてその半裸体はいつしか彼らのシンボルになった。


 もし転けて、脆い硝子の様に砕けても、それはそいつの勇気とウデが足りなかったからだ。


 貧しさを誇りに変え、それでも誇りでは村すら形成出来ず、帯の様に狩り場を広げる、だから彼らは硝子少年帯!美しく歪で、永遠にして刹那の荒くれな集団!


「うおおおおおおおー!」

「にゃにゃにゃにゃー!」


 その恐るべき貧者の群れと、補陀落町の群体がぶつかり合う!


「っ!うえ!?」


 その直後!絡み合う彼らの上を影が射す。


「バイク……!」


「高ぇ」


 まともに配備されない有機二輪。硝子少年帯が唯一保有するその骨董品が空にぶち上がり、少年たちの頭をひと撫でしてやろう、とタイヤを回転(まわ)す!


「超絶イケメンバリヤー!」


 戯言をほざきながら、流石のセイシ少年!巧みなハンドル捌きで有機二輪のタイヤを敵方にぶつけて相殺。そのまま直下の乱戦に割り込んで、敵と味方を引き離す!


「流石だなセイシ=ツムグ。……む」


「セイシ!単独行動は駄目、……あっ」


 難なく瓦礫に着地する敵方の操縦者が称賛を、美しく可憐に到着する極上の同級生が諫言を、それぞれセイシ少年に贈ろうとし、そこで互いの存在に気付く。


「流石だろ?俺の目の黒いうちは好き勝手させないぜ!」


「シャンディガール。久しぶりだな。また可愛くなったんじゃないか?」


「俺は良いんだよシャンディ。何しろ最優の男だからな!集団行動したくても、誰もついてこれないからなーまいったなー最優の男としてはなー」


「イレブンバック……!」


 イレブンバック=ジャックスーツ!数年前、弱い立場から硝子少年帯のリーダーまでのし上がり、個々の狂暴さで恐れられた彼らを、集団の精強さによってより手が付けられなくなるよう教育した天才児!


「おい、お前ら聞いてる?ねぇ」


 シャンディガールとイレブンバック、名前を呼び合うふたりの間にはしかし、憎悪と侮蔑が視線と共に絡み合い、雁字搦めのその隙間に決して浅からぬ因縁の糸が一本、ピンッと張り詰めていた!


 彼らの過去にいったい何があったのだろうか!?


 ふたりを結ぶ因縁とは!?

※ヒント 二人とも生き別れの兄弟を探しています。


「俺を見ろぉー!俺を!!無視すんな!」


 残酷な仕打ち!!ちやほやしてくれる幼馴染みも、互いを認める好敵手も、今このときだけは自分を見ていない!セイシ少年の惑星より大きな自己肯定感はズタボロだ!惑星サイズのために重力のごとき歪みが発生している自己肯定感が!


 ここは、毒の雨降る補陀落町!落雷と暗雲が少年たちの運命を暗喩する空模様!


 三千世界と、あとスポットライトが足りないとごねる主役とかを普く照らす光となれ!カンゼヲン!!

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