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極上のシャンディ!!

 補陀落町の少年たちが一斉に集まった!今日はおんなのひとが来訪する日なので皆そわそわと落ち着かない。


 何しろ地球人類の数が回復していないので基本的には生めよ増やせよなのだが、そうは言っても事情が事情なので犯罪者の町は制限が大きいのだ。

 不定期でも今日この日のように大勢集めてパートナーを選ぶ機会があるだけでも補陀落町は恵まれている。


「お前のせいで全身剃られたんだぞ。これでおんなのひとに選ばれなかったらどうしてくれるんだ」


「需要ってもんをわかってないなお前は。俺らみたいなの子供に濃さを求めてるわけないだろ?」


 みんながそわそわ落ち着き無いなか、ふわふわのセイシ少年は雲のごとく泰然とリストをシュパシュパめくっていく。

 彼の言うことも最もだ。濃いパートナーを求めているおんなのひとは大体が、この町のちょうど反対側にある聖ウホ♂常怒♂の町へ集まる。不思議とパートナー契約少ない町だが。不思議。


「そっか、じゃあ俺でも可くらいは貰える可能性が」


「あ、でもひとり顔不問、年齢同年代、体毛濃いめで募集してるやついるわ」


「ピンポイントぉ!それ優いけるやつじゃん!パートナーじゃん」


 剃られた少年は、タレ込みの見返りにセイシ少年の極秘リストからパートナーを斡旋して貰える約束だったが、しかしあくまでも斡旋。契約成立の保証はない。セイシ少年も荒野の掟として約束事は極力守るが、更に踏み込んで補償とかはしない。剃られ損であった。


「ほら、品定めが始まるぞ。コンバットスーツを脱げよ」


「最悪だよセイシお前はよ!」


「最高の褒め言葉だな。向こう10年はモチベ保てるぜ」


 仲間からの罵倒こそ一番の栄養だった。酸素と険悪な空気を吸って生きている。それがセイシ少年なのだ。


 全員、脱いだスーツを手に手に横一列。おんなのひとたちの品定めが始まる。


「みなさーん!ほんとはボーボーでぇーす!ボーボーなんでーす!」


 モテない男子たちは剃られた少年と同じくに必死にアピールしている。

 しかし、セイシ少年筆頭に以前よりおんなのひとから優以上を貰えてるモテ男子たちは余裕の笑みでキャットウォークを歩く。

 一度荒廃したとは言え、遥か未来でも男は常に二種類。モテるやつとモテないやつがだけがいる。残酷な現実が黙示録よろしく黙って示されていた。


 セイシ少年に至っては容貌、実績ともに文句無しの優良物件なのでほとんどのおんなのひとから最優が付けられていく。

 もちろん、全員をパートナーとするわけにはいかないので二、三度のミーム交換/交歓(こうかん)を経ておんなのひとたちは二番目の男、他の優をつけたモテ男子へ流れる。

 可?ああ、たまに、空いたヒマな時にでも交換/交歓(こうかん)して貰えるんじゃないかなぁ。懲役を継いでいかないとダメなので、必ず1人は次代が必要だし。

 不可は、まあ、この話しはよそうぜ?知りたいか?本当に?やめようよ。可哀想だよ。


 可、優、可、不可、優、可、最優、と悲喜こもごも、流れ作業で品定めされる少年たち。

 最優なんてセイシ少年くらいなものだ。他に見たことかない。おとこもおんなも誰もが彼に一目置き、不和を抱く。

 そういう、モテからも非モテからも受ける嫉妬や憧憬の視線を浴びる事で、あとぽかぽかの日光浴でビタミンとか生成しているのだセイシ少年は。争いの火種が熱源といっても過言ではない。エコなエネルギーで生きる新人類だ。人間の未来は明るいね。


 ー極上ー


 余裕のドヤ顔でスーツを着る途中のセイシ少年は、背中から感じる異様な熱に気付き、ほとんど恐慌に近い感情で振り返った。

 スーツに通しかけていた足がもつれて、ほとんど全裸に近い状態でこける。極上。地に伏せ、そのまま見上げた先にはそう表示されていた。


 掲示板に載った、誰も見たことのない極上の二文字。みんなが一斉にざわつく。評価を付けたおんなのひとたちでさえ、自分の判断が信じられずギュイ、ギュギュイ、と二度見してしまう。


「え?あれ?」


 キャットウォークの上に立つは、今回初参戦、シャンディガール=ガウチョパンツ。生き仏のごときその容姿と徳の高さが、満場一致で彼をトップ模範囚(モデル)に押し上げた!


「シャァンディィ!」


「「「シャーンディ!シャーンディ!シャーンディ!」」」


 セイシ少年の怨嗟の叫び!そしてそれを掻き消すクラスメイトたちのシャンディ・コール!

 ここは犯罪者の町、補陀落町!あらゆる感情渦巻く蠱毒!その毒により今日もまた、栄枯盛衰枯れ果てるものがまたひとり!


 三千世界と非モテを普く照らす光となれ!カンゼヲン!!

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