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反逆のシャンディ!!

「うー、ねむいぜぇ。ただいまァ」


 ふわふわの少年、セイシ=ツムグ、現在、校外学習から帰ってきた所である。

 西の廃材山脈を越えた向こうの廃墟に保管されていた有機二輪から生体パーツ抜き取って、勇気凛々2日間、覚醒プログラムを駆使して徹夜で補陀落町まで帰ってきた所なのである。


「うわ、ほんとに間に合わせてきた。おかえりセイシ」


 セイシ少年の居住する廃墟、そこから出迎えて来たのは教室で後ろの席に座る可愛らしいクラスメイト、シャンディガール=ガウチョパンツだ。

 名前にあやかっていつもガウチョパンツを履いている。ちなみにセイシ少年はいつもツナギを着ている。


「おうよ。飯ぃ、風呂ぉ、寝るぅ」


 補陀落町の住人たちは、先祖に取り付けられた犯罪抑制装置も各人に引き継がれているので、強姦殺人のうち強姦の罪を引き継いだシャンディガール少年も腰回りに可愛らしい装飾の女性ホルモン様物質精製投与システムを取り付けている。


「はいはい。全部やっておくから、こっちに渡して」


 彼らは皆、懲役を引き継いでいるだけで遵法精神の塊のような模範的人類なのだが、懲役は続いているのでこれら抑制プログラムも続くのは仕方ないのだ。週一で平和がいかに大事か、愛がいかに人類を救うのか、の教養アニメーションを観る義務とかもある。アフレコをシャンディガールがしていて出来が良いので他所の町にも販売された。補陀落町が1年前の暴力と飢饉の波を乗りきれたのはシャンディの外貨獲得能力のお陰である。


「うぃ。肉体の命令を呼称番号1078に渡します。っと」


 彼ら犯罪者の子孫たちは、犯罪抑制のために何かしら対策されているのだが、けっこう不便なものも多い。

 よくセイシ少年をやり込める小学校の先生は、先祖が電話、メール、SNSでの成りすましによる詐欺行為で捕まった為に、犯罪抑制装置によって他者との連絡が手紙か口頭しか出来ないという困った制約がある。

 ただ、その分のリソースを情報処理に回せるので、みんなの先生として活動している。


「はい、セイシ、あーん」


「承認。あーん」


 個人では致命的な制約を、集団で生活することでカバー、そうして永い年月をかけていくつもの集落、町が出来ていった。


「セイシ、ばんざーい」


「承認。ばんざーい」


 なんたる人間のうつくしさ!


「セイシ、おしりひらいてー」


「承認。くぱぁ」


 犯罪者の隔離地域という泥沼のなかで、輝く蓮のごとき、全く尊きその姿よ。


「セイシ、おやすみ」


「承認。おやすみ。ぐうぐう」


 明日は久しぶりに、町におんなのひとがやってくる。先生が直接連絡を各所に送れないために、その事実を校外学習出発後、善意のクラスメイトからの連絡で知ったセイシ少年は校外学習の日程を無理やり短縮して戻ってきた。


「すけべ」


 シャンディガール=ガウチョパンツがセイシ少年の頬をつねる。本来の連絡担当だったシャンディガールは、いずれの意図か、セイシ少年におんなのひと急遽来訪の連絡をしなかった。むしろ何食わぬ笑顔でセイシの出発を見送っていたくらいである。


「おやすみどすけべセイシ。ちゅ」


 恐るべき策謀渦巻く補陀落町!年端の行かぬ少年ですら、己の感情赴くままに誰かを陥れる悪徳の町!セイシにタレ込んだ善意のクラスメイトも、一昨晩、何者かによって全身の体毛を剃られるという被害にあっている!

 明日はおんなのひとがくるのに!全身トゥルットゥル!ピッカピカピー!たった2日じゃ『たいもう』の毛の字も生えてこないよちっとも!まだ子供だもん!


 三千世界と、あと脇や鼠径部を普く照らす光となれ!カンゼヲン!!

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