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羅刹のセイシ!!

 セイシは語る!過去、現れた多くの優秀な囚人たちを、自分と同じように措置して戦場に向かわせていると!

 かつての母星人類がそうであったように、異星人類も勝利目前となった段階で仲間割れを始め、その隙間を縫って何とか同胞は生き延びていると!


「イレブンバック。人類の未来の為に、ともに戦ってくれないか」


 セイシが誘う!永遠を生き、死に、戦い続ける天国(ヴァルハラ)への道を!


「聞きたいことがあります。なぜ、争いを引き起こしてきたのですか。強力な兵士を生み出すために?」


「いや、違う」


 コックピットで首を振るセイシ!


「僕の業の、罪のせいだ」



「イレブンバック、君が強姦殺人の内、殺人の罪を引き継いだように、僕が父から引き継いだのは、『平和を願った罪』」



「だから僕は、この犯罪抑制装置の為に、『争わずにはいられない』」


 恐るべき告白!肝を冷やすイレブンバック!かつて何度もあった、この隔離地域の争いは!

 何よりも、自分が苦しめられたあの飢饉は!全て、セイシの発散の為に行われてきたのだ!


 もし平和のためにセイシが我慢していたならば、溜め込んだ情動によっていつか大大大戦争がおこってしまう!それは、滅びかけている人類にとって致命傷になるだろう!だから仕方ない犠牲として、定期的な小競り合いを起こし、犯罪抑制装置を稼働させてきたのだ!


 人類の救世主にして恐るべき悪魔、それがセイシの正体だった!


「何を言っている、のです?平和を願うことが、罪?」


「当時はそうだったんだよ。確かに、平和を願う人々の半分くらいは、異星人による工作に影響されていたからね」


 今では、増やした兵隊、つまりは票をもつ人類による法改正によって廃止されたが、現状、それによってセイシを無罪にするわけにもいかない!懲罰部隊の兵士であったからこそ、その力をほしいままにしてきたのだから!


「君だけじゃない、後ろにいる君の11人の部下たちも、生活を保障しよう。この措置を受ければ、真っ当な環境で生きていける。飢えることも死ぬこともない。戦い続けることにはなってしまうが」


 カンゼオンの巨大なロボットの、硝子少年帯を育ててきた母の、その手のひら。それに阻まれ捕まる仲間たちを示すセイシ!イレブンバックの返答やいかに!?


「教えて欲しい。私の弟は何処に?」


「……なんだ、本当に気付いてなかったのか」


 生き別れの弟の所在を問うイレブンバック。この、隔離地域で神のごとき力を振るう相手ならば、当然把握しているであろうその行方を!


「シャンディだよ。シャンディガール」


「嘘だろう?だって、ぼくたちは一卵性双生児だと」


「顔そっくりだろうに。女性ホルモン様物質によって女性化がすすんでいるが……ああ、そうか。お前ら生身の女の人なんてみたことないもんな」


 そう!聡明なイレブンバック、そしてシャンディガールですら気付けなかった簡単な事実!常識、認識が我々とは違うのだ!彼らにとって女性とは有機二輪のことなのだ!柔らかく暖かい、生体バイク!性的二形の生物の如く!だから気がつかなかった。互いに何処かひかれあいながらも!それはかつて硝子少年帯がただの野蛮な集団だったころの被害者同士の、感傷の様なものだと思っていた!


「あいつも極上だったな。素晴らしい兄弟だ」


 唇を舐める幻聴が聞こえてくるほどの、コックピット越しにでもわかるセイシの艶の籠った声。イレブンバック、腹を括った!


「人生を翻弄されたと知らされて、私が抱いたのは怒りでも憎しみでもなくまぎれもない恐怖だ。お前がただの敗残兵だと卑下しても、私にとっては超常の、神にも等しい存在だからだ」


 だから断る。と、イレブンバック。


「お前が争わずにはいられない業を持つならば、いつか弟も餌食になる。だから、なんとしてもここを逃げ延び、生涯かけて、私が生きてる限り、その闘争心を私で埋め尽くしてやる」


 極上だ。


 母の手向けか!イレブンバックの、カンゼオンの端末たる有機二輪が息を吹き返す!!

 巨大な人型ロボットたるカンゼオン主機、人体の重要部位だけを詰めた生体パーツ兵。このスクラップだらけの隔離地域では神のごとき力を持つ巨人を相手には、あまりにも弱い抵抗であるが!


「いぃぃぃぃぃやぁってみろよぉぉぉぉクソ餓鬼ィィィィ」


 犯罪抑制システムに強く支配されたセイシが!凶悪な顔で迫る!!

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