絶対絶命!観測自在!!カンゼオン!!!
「いいぜぇ!バイク対決と洒落込もうか!」
人質交換の待ち合わせ場所に来たセイシ少年!荒野の掟、力を示すことこそ正義のそのルールに則りイレブンバックと一対一の決闘を行うことになった!
本来ならば、この犯罪者の隔離地域における決闘の類いは、これ以上の報復を行わないよう、仲間たちの溜飲を下げるショーである。
その為にお互いの街やチームから一定数の観客を呼ぶものなのだが補陀落町からはセイシ一人。硝子少年帯としてはよろしくない状況だが、リーダーたるイレブンバックとしてはやるしかない。
(セイシ=ツムグ、挑発してくれる。穏便に済ませたいのはこちらだけ、か)
しかしイレブンバック、いつだって逆境を覆してきたという自負がある。
(この状況で、セイシが私を認めるほどの能力を示せばよいのだ)
相手は町内随一の実力者。今後も揉める気満々のその相手ただ一人を納得させれば良いのだ。
休戦状態どころか、場合によっては同盟関係を結べるところまで持っていく。
(大丈夫。それぐらい。私ならば!)
果たして硝子少年帯の未来やいかに!?しかしてセイシの思惑やいずこに!?かくして決闘開始のの合図が鳴る!
宙泳粒子の励起によるビーム。その瑠璃光が薄暗い決闘の場を染め上げる!
掻い潜るイレブンバック。避けながら断続的に撃ち返し、その的確な射撃によって容易に『詰み』の状況には持ち込ませない。
「いつまでもつんだ大将よぉぉ!?」
十本のアームからビームを撃ち続けるセイシに対して二本のアームから、それも途切れ途切れにしか撃てないイレブンバック。しかし、母に名付けられたただ一人で覆す者、兵士の象徴に相応しく、天才であった!
一人で革命をもたらす者!一番後ろの大笑面!衆生の悪行を笑い滅ぼす暴悪笑面!No.11正義の逆位置!彼は母の永きにわたる品種改良の集大成であった!
「ッ!?二輪の制御が!」
本来、犯罪者の隔離地域となったこの地ならば、おんなのひとの生体パーツと接続することで、その補助によってやっと起動できる有機二輪を直接接続して乗りこなすイレブンバック!
それだけでなく骨董品のような自身の二輪経由でセイシ側の二輪へHACKを仕掛けてきたのだ!遺伝的多様性のないこの地域で、よくぞここまでの戦士を作り出した!
極上の評価は間違いではなかった!以上、品定め終了!
決闘等という茶番に介入するぞ!カンゼオン!!
カンゼオンシステムの端末たる有機二輪が安全に搭乗者を降ろしてから機能を停止。
巨大な柱が十本、地より突きだし観客だった硝子少年帯の面々を拘束する!いや、それは柱ではなく巨大な指!人型ロボットの指であった!毛髪のように伸びる無数のサブアームによって掘り進めて地より出でたのだ!同じように顔、胸、腰と、その女性的なフォルムの胴体を地の底より浮上させる人型ロボット!カンゼオンシステムの主機!
『やはり、凄いわね彼』
ロボットから音声が発せられる。
「……母さん?」
ああ何ということか!可哀想な、可愛い可愛いイレブンバック!仲間にも運命にも、一部部下にも裏切られ続けてたどり着いたこの場所で、更に母にして恋人にも裏切られた可愛いイレブンバック!
三千世界と、あと減りすぎた地球人類を救うためにこの極上の兵士をシステムに取り込んで糧とせよ!カンゼオン!