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31.ハイン伯爵家にて

続編開始しました。よろしくお願いします。

 ラルに自分の気持ちを伝えて、私たちは改めてお互いの想いを確認し合った。


 この五年間は兄妹として過ごしてきたけれど、お互い、心の中では家族としての愛情以上のものを抱えていたのだ。


 ラルは私に「結婚しよう」と言ってくれて、既にお父様の許可も得ている。


 次期キルステン侯爵となるラルの妻が本当に私でいいのか躊躇う気持ちもあったけど、ピクニックから戻って私の気持ちを父に伝えに行くと、父はとても喜んでくれた。


 それを見て、私の不安や迷いは完全に取り払われた。


「おめでとう。ラル、エレア」


 父はそう言って私たちの前まで歩いてくると、私とラルに順番にハグをしてくれた。

 父の瞳が少し光って見えて、私まで目頭が熱くなってしまったのは内緒。


 ラルとの婚約を進めるために、まずは私がキルステン家の籍から一旦抜けて、どこか違う貴族の家に養子入りする必要がある。いくら私とラルの血が繋がっていなくても、このままでは婚約できない。


 ラルと父は既に候補を絞っていたようで、父が騎士団長を務めていたときの部下である、ハイン伯爵家に私は養子入りすることが決まった。


 ハイン伯爵家とキルステン家は、とても懇意にしている仲で、信頼も厚い。

 手続きと挨拶のため、私たちは早速ハイン家を訪れることにした。




「――やぁ、いらっしゃい。お待ちしておりましたよ」

「ハイン伯爵様。エレアです。よろしくお願いいたします」


 ハイン伯爵とは、私も何度か顔を合わせたことがある。じっくりお話ししたことはなかったけれど、温厚そうなやわらかい雰囲気の紳士だ。


 ハイン伯爵には私より年上の息子が二人いて、跡継ぎ問題もない。


「エレアちゃん、大きくなったね。こんなに可愛い娘ができるなんて、光栄だよ」


 おおらかに笑いながら言ったハイン伯爵に、父であるキルステン侯爵は「そうだろう」と、本当の父のように誇らしげに応えた。


 あたたかい笑い声が室内を包み込んでいた。



「――それでは、手続きはこれでいいな」

「ええ、あとは国に提出して、二人の婚約ですね。忙しくなるでしょうが、すぐに受理されますよ」


 楽しみだね、エレアちゃん、ラルフレット君。と、言葉を続けながら、ハイン伯爵は嬉しそうに髪の色と同じ薄茶色の口髭を撫でた。


「お忙しいところ迅速にご対応いただき、ありがとうございます」


 そんなハイン伯爵に、丁寧に頭を下げるラル。


「いやいや、君たちの父上には若い頃とても世話になったんだよ。団長の頼みとあらば、これくらい朝飯前だよ」


 ハイン伯爵は愉快そうに笑って言った。未だに父のことを団長と呼んだハイン伯爵に対して、父も楽しそうに笑っている。


「では、書類の記入も終わったことですし、久しぶりにどうですか?」

「お、いいな」


 そしてハイン伯爵が手でグラスを煽る仕草を見せると、父は顎に手を当てて頷く。

 それを見たこのお屋敷の使用人の方が、手際よくテーブルにお酒を用意した。


「僕は遠慮しておきます」

「そうか、まだ傷が完治していなかったな」


 ラルの前にもグラスが用意されたけど、お酒が注がれる前に彼は右手を挙げてそれを断ってみせた。


「どうぞ、お二人だけでお楽しみください」

「では、エレアちゃんに屋敷を案内してあげよう」


 ハイン伯爵がそう言うと、メイド服を着た若い使用人が速やかに私とラルの前に現れ「どうぞ」と声をかける。


 先に立上がったラルに手を差し出され、私もその手に掴まって立上がると、父と伯爵に頭を下げてこの場をあとにした。



 ラルと共にハイン伯爵邸を一通り案内してもらい終えると、最後に私の私室として用意してくれた立派な部屋で、使用人の方が紅茶を用意してくれた。


 書類上はここの娘になるのだけど、それは本当にラルと結婚するための一時的なものだ。

 結婚すればまたすぐにキルステン家の籍に入ることになるし、結婚するまでの数ヶ月も、ここに住まなくてもいいそうだ。


 それでもわざわざ私の部屋を用意してくれたハイン伯爵には、本当に感謝しなければ。


 もちろん、父とラルにも。


「いい家に決まってよかった」

「ええ、本当に。ラルもずっと探してくれていたんでしょう? ありがとう」


 紅茶と焼き菓子を用意すると、使用人は部屋を出て行った。

 二人きりになった室内で、ラルが先に呟いた言葉に私もお礼を言う。


「結局父上の伝手(つて)を頼ることになってしまったけどね」

「さっきのラル、とても立派だったわ。さすが、次期キルステン侯爵様」


 ハイン伯爵に挨拶とお礼をしているラルの姿は、本当に惚れ惚れするほど素敵だった。とても頼もしい婚約者だ。


 ……まだ、正式な婚約者ではないけれど。


「僕だってもう大人だからね。いつまでも出会ったばかりの頃の僕だと思わないで?」

「もちろん、わかっているわ」


 いつだったか、同じようなことを私がラルに言ったことがあったなぁと思いながらくすりと笑うと、向かいのソファに座っていたラルが私の隣に移動してきた。


「本当に、わかってる?」

「……ラル?」


 私のほうに身体を向けているラルを見上げて、胸がドクンと一度大きく高鳴った。




続編は砂糖マシマシでお送りします。


実験的にサブタイトル取りました。(またつけるかもしれません)



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