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16.告白

「それ、本気で言ってるの?」

「え……?」


 珍しく、少し低い声を放つラル。


 怒ってる……?


「どうして? エレアは僕が夫では不満?」

「まさか……! でも私ではとてもラルにつり合わないもの。私はラルの妹になれただけで十分すぎるくらい幸せだから……っ」


 ラルに誤解を与えて気を悪くさせてしまった。

 決してラルに不満があるわけではないことを伝え、ドキドキとうるさい鼓動を抑えるように自分の胸の前で手を握る。


「エレアは僕の妹のままで満足なの?」

「それってどういう……」

「兄妹はこんなふうに触れ合ったりしないんでしょ?」


 言いながら、胸の前に置いていた私の手を右手でそっと握り、撫でるように優しく触れるラル。

 ラルに触れられているところが熱い。


「……しないわ」

「でもエレアの顔、とても赤くなっているけど……これは熱のせいかな?」

「そうよ……」

「ふぅん」


 違う。熱のせいだけではない。

 だけど認めてしまえばどうなるのかもわからない。今はまだ、それがとても怖い。


 だから俯くように頷けば、ラルは再び不満そうに唸った。


「ラル、もう少し離れて。本当に風邪が移ってしまうわ……」

「この際だから直接移してもらおうかな。そしたらエレアはすぐ治るかも」


 俯いていた私の鼻の頭に、ラルの吐息がかかった。

 コツンと、おでこにラルの額が当たって反射的に視線だけを持ち上げると、このまま顔を上げていたら唇が触れ合ってしまうことを悟る。


「……え、な……っ」


 すんでのところで顔を上げるのを留まり、パクパクと口を開いて一瞬言葉を失う。

 ラルはいつものように笑っていない。やっぱり少し怒っているみたいに真剣な表情でじっと私を見つめている。


「変なこと言わないで……!」


 けれど、一拍置いて私のほうが離れればいいのだという思考にたどり着き、ベッドの上で精一杯の距離を取った。

 さすがにこれで近づいてはこないだろう。だって距離を詰めるにはベッドに乗り上がるしかないのだから。


「……はは、ごめん。熱が上がっちゃったかな?」


 そしたらようやく、いつものように笑ってくれたラルに、ほっと胸を撫で下ろす。


「もう、ラルったら……」


 人の気も知らないで。


「でも僕は本気だよ。本気でエレアと結婚したいと思ってる」


 距離ができたことで少しだけ気持ちを落ち着かせることができたけど、続けられたラルの真剣な声色にドクンと一回鼓動が跳ねた。


「……ラルは他に好きな人とか……いないの?」


 聞いてから、いたらどうしようなんて後悔する。そんなの、本当は聞きたくない……。


「いないよ」


 けれど速答された否定的な言葉に安心していたら、間髪入れずに次の言葉が降ってきた。


「エレアの他に好きな人なんて、いない」


 まっすぐ、私に突き刺さるような声だった。


「僕が好きなのは君だからね、エレア」

「……え」

「もちろん家族としての意味ではなく、一人の男としてだよ。僕はエレアのことを愛している。五年……いや、七年前から、ずっとね」


 そんなの、出会った頃じゃない。

 まさかという思いでラルを見上げると、彼はとても冗談で言っているとは思えないほど真剣な表情で私を見つめていた。

 いつもの可愛く、優しいあの笑顔がない。


「……あの」

「兄妹なのに、気持ち悪いと思った?」

「……っ」


 なにを言えばいいか混乱してしまった私は、ラルから発せられた質問に、思い切り首を横に振った。


 気持ち悪いわけがない。

 違う。そうではなくて、私は……

 でも、そんなことって――。


「でも、僕たちは血が繋がっていないのだから、何も問題はないんだよ」


 そうね、と言いたい。

 けれど、言えない。


 そんなに簡単に頷いてしまって、本当にいいのだろうか――?


「……僕がいたらエレアの熱が引かなそうだね。顔がとても赤いよ? また様子を見に来るから、ゆっくり休んで。ちゃんとお粥を食べて、薬を飲んでね」

「……ラル」


 ラルが本気で言っているのか確認しなければ。


 けれどようやく口を開いた私の声は、とても弱々しいものだと自分でも感じた。


 そんな私に、ラルはいつもの優しい笑顔を残して名残惜しさも見せずに部屋を出ていった。


「……」


 ラルが、男として私を愛している……?

 本当に……?


 ラルの言葉が頭の中をぐるぐるぐるぐると何度も巡る。


 心臓がドキドキとあまりに速く脈打ちすぎて、


 止まってしまうのではないかと思った。




ブックマーク、評価、誤字報告ありがとうございます!


おかげさまでただ今ランキングにお邪魔させていただけてます!(*´˘`*)


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