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ZEROミッシングリンクⅠ【1】ZERO MISSING LINK1  作者: タイニ
第六章 それから後

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77 朝練



今日、少し大変なことが起きている。


あれからお酒が進み過ぎて、タウご両親はタウの家に一泊。妹は賑やかな女子寮で深夜まで盛り上がってしまい、朝はベガスで迎える。



そんな北風が吹く早朝。

ファクト、リゲル、レサト、シャム、キロン、ムギ、他数人のメンバーがランニング後、朝練の剣術をしている中、新たな女子が1人混ざっている。


「やー!!」

と、竹刀を振りかざした後、軽く飛んだムギに籠手(こて)で頭を小突かれる。

「遅い!」


自分より小さく腕も細いムギに軽くあしらわれて、納得のいかない女子。何度か打ち込むが、ムギには入らない。

(りき)み過ぎてるな。無駄な動きが多い。」

レサトがぼやく。

女子は悔しそうに空に竹刀を振った。


これでも、昨年の東アジアインターハイ女子で準優勝をしている。

「まあ、落ち込むことないよ。ムギは総合格闘技の使い手みたいなもんだからそういうこともある。男も勝てないから。」

ファクトが励ます。


あまり知られていないが、ムギは銃器もハーネスも使いこなすのだ。各種投擲(トウテキ)武器の使い手なので、武器を持ったら今のファクトでは勝てない、ある意味一番ファンタジーな人物なのである。覚悟という意味では実戦経験のほぼないレサトでも勝てないだろう。


しかし納得のいかない女子。ムギの歳を聞いたら中学生。しかも、9歳から格闘技を始めたという。自分は3歳の時から竹刀を振るっていた。

「……なんで…」

その剣道女子はリゲル、レサト、シャムにも負けた。キロンとしては、対戦相手が悪すぎると思うのだが、そんな事情は知らないので悔しくてしょうがない。彼らは今、カウスやマリアスたちから指導を受けているのだ。カウスは軍人の中でもヤバい部類に入るらしいのに、勝てるわけがない。


「よし、体をほぐして一旦飯食いに行こう。もう7時だよ。」

ファクトは既に飯のことしか考えていなかった。




***




「で、なんでソラまでそうなるんだ!!」

「なんでお(にい)ばっかりしたいことできるの?!!!」


食堂で朝っぱらから大騒ぎしているのは、タウの妹、先ほどの剣道女子。

ソラである。


大声でケンカしている相手はタウ父。イータやタウ母は家でゆっくりモーニングをしているらしい。

タウ父は、息子が生活していた場を見たいと言って朝も出て来たのだが、アーツのメンバーはそんな父親心にびっくりする。自分の親は息子のすることなど関心もないだろう。とりあえず成人しているし。いや、学生の時だって関心がなかった。



「…俺、一応大学も出てそれなりにやることやってんだけど。」

タウが横で呆れて聞いている。昨日は言う事を聞かない扱いされたが、大学も出て大手で就職もしている。言う事を聞きまくっているじゃないか。


そう、タウ妹のソラが自分もここで朝練したいと言い出したのだ。

そして何も考えていないファクトが余計なことを言ってしまった。「俺ここに転校してみた。」と。


なので、

「私も格闘術習いたい!ここに住んで朝練して学校に行くか、私も転校したい!」となる。

タウの妹は高2である。間に弟もいるらしい。


「ここの全員に負けたんだよ?高校では準決勝以外全勝だったのに!!こんなの放置できない!!」


「剣道だけだったら多分勝てるから気にすることないって。」

「俺らは絶対負けるからほんと、気にすることないよ。あいつらが悪い。」

「ABチームと、藤湾のあの辺の奴らはちょっと格別だから。」

みんなが朝の対戦相手たちを指して宥める。


「じゃあ、ファクトは?Cチームなんでしょ?」

「あいつはあれこれ甘やかされているから。」

「なんでそんなのに負けるの?!私が弱いからじゃん!」

「勉強さぼって、訓練ばかりしているからな。」

「きちんと学校行ってるよ。」

「寝てるだけだろ。」


「じゃあ、ムギは何?!」

端っこの席で黙々と雑穀パンをかじっているムギ。

「ムギちゃんも別格だから。」

一番説明しにくい人物である。


「お兄だけずるい!」

一見大人に見えたタウの妹が、完全に駄々っ子だ。




それにしても、なぜムギは強いのか。

たまたまそういう子だったとしか言えない。


小さいころから鷹狩りをしたり、馬も乗りこなし革や布張りのテントも1人で張れた。革も自分で(なめ)す。弓で狩りもできた。それも理由にあるかもしれない。とくにムギは、家で裁縫や細やかな料理をするのが苦手で、餃子やパンを生成するより動物を捌く方が好きだった。ただ、焼き加減はイマイチで半生だったり焦がしたりするので、そこは任せてはいけない。


もともとチコはムギに格闘術など教える気はなかった。


南海に来た頃に忙しかったからしばらく会わずにいたら、勝手にあちこち道場に通って勝手に強くなっていたのだ。それで、特警やカウスの同僚たちがおもしろがって技を教えていたら、どんどん吸収して、ついには武器にまで手を出してしまった。特警もまさか習得してしまうとは思っておらず、遊び程度のつもりだったのであろう。

チコが相手にしてくれないので、その間にたくさんのことを学び、二輪も操縦できるようになり、警察に進められいくつか国家試験を受けたら今の状態になってしまった。


チコは絶対にムギに人を手に掛けてほしくなかったので、正直何とも言えない思いがあるのも確かだ。少なくとも法治国家内であるアンタレスにいる限り、悪い状況には陥る可能性は低いので、今のところベガスから出す気はない。



「とにかくだめだ!!!これ以上武道なんてしなくていい!!」

タウ父が叫ぶ。

「お父さん大っ嫌い!!!!」

と、怒って出て行くソラ。

面食らった顔のタウ父。


「………」

タウはじめ、全員が呆気に取られて眺めているしかできなかった。


というか、みんな思う。なぜアーツは格闘術者のたまり場になっているのだ。




***




その1週間後。


「やー!」

朝の南海で朝練にいそしんでいるタウ妹、ソラ。


案の定、早速親を説得して転校して来てしまった。アーツ第2弾の女子寮にいる。

そしてなぜか、タウ父もいる。


有給が余りまくっているので、1か月間休暇を取って、タウの近くにアパートを借りて住みこんでしまったのだ。

「ベガス、家賃安すぎるし。」

と、単身引っ越しが楽しいらしい。


「お前たちだけずるいだろ。」

と言って、タウ父は朝は周辺の掃除をし、太極拳のおじさんたちに混ざり、その後彼らと一緒に薬膳粥など食べている。


タウとソラもかなり困ってしまい、帰るよう何度も言ったが、「お前たちが困らせるから私もお前たちを困らせる」と言って聞かない父親を説得することはできなかった。そして、システムテック工機の正社員であるタウ父は、キロンたちの専攻に一緒に参加している。


ベイドの奥さんであるソアも、大房でのアルバイトをやめアーツ第2弾に入り勉強を始めている。



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