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ZEROミッシングリンクⅠ【1】ZERO MISSING LINK1  作者: タイニ
第六章 それから後

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74 蜂の巣をもらう

※大幅修正しています。


全体を整理して書き直しています。正誤性のなかった部分も直したので、内容の変わっている個所もいくつかあります。


そして、思っていた以上に誤字がありました。赤ペン先生がほしいです(切)こんなに拙い文を読んでくださった皆様。数人ではあるかと思いますが、本当にありがとうございました(泣)!


大分修正したので少しは読みや少なったかと思います。これからもよろしくお願いいたします!



とてもいい天気のある日。


(きょう)はいつもの長い黒髪とロングスカートで、ベガスミラの藤湾大学の敷地内を歩いていた。

髪が落ちたらいけないので、作業するときや大学内では髪は後ろに束ねている。


すると、いつも南海にいる花札じいさんの1人が、上を向いてガラスのツボを持って待っていた。

あの壺…。


じいさんが見ている上方を眺めると、ベージュと薄いカーキの系の完全防護服を着た人が階段裏にいる。

高所作業車の上で巣の解体作業をしていた。

「あれ?もしかして!」

響は急いで研修室に戻り、5分くらいで自分の瓶を持って戻って来た。


「…姉ちゃん。やらないからな。俺が先だ。」

「えー!お父さんー!少し分けてくださいー!」

「全部俺のもんだ。」

不満気な顔でおじいさんを見てもう一度上を見る。


「兄ーちゃーん!殺虫剤は獲ってからにしてくれよー!」

瓶の横で座って大声でじいさんが言うが、兄ちゃんとやらは反応しない。

「この季節に殺虫剤使う様なのいるんですか?」


そう、スズメバチである。

あんなところに巣があったんだ。今は冬だけれど、まだ活動しているのだろうか。アンタレスは響の故郷、蛍惑(けいわく)より暖かいのでそういう事もあるかもしれない。一時代前よりかなり気候も温かい。


上では巣を切り落として袋に密封していた。

防護服のお兄さんはその後、周辺に殺虫剤をかけまくっている。見た感じ蜂はいない。

「あ!あの兄ちゃん!」

「もう獲ったからいいじゃないですか。」

じいさんと2人で、彼の作業が終わるのをジーと待つ。


お兄さんは周りを確認して作業車を下がらせると、下に降りて来て作業した物を一旦降ろした。


「終わった!」

響はワクワクでお兄さんの方に行く。じいさんも壺を抱えておっちら駆けてきた。巣の袋とつかまえた蜂たち、その他機材を下す。

「お兄―さーん!蜂見せて下さーい!」

「ねーちゃん抜け駆けすんなー!」

響に気が付いてゲッ、と反応するお兄さん。

「まだ来んな!」

お兄さんが叫んだ。

「どっかにいるかもしれない。」


数メートル後ろでしゃがんでじっと待つ2人。

「そんなところで待っていても意味ないんだが…」

お兄さんは周りや自分をチェックする。


「もういいですか?!」

ワクワクの2人。

「いや、来なくていいんだけれど…。」

「巣と蜂が欲しいんです!蜂、いました?!」

「だから抜け駆けするな!」

「ここの管理人に、校内で必要な人がいれば、あげてもいいと言っていたので一旦各研究室に伝言してからにします。」

「はい!私もここの講師です!!」

ここぞとばかりに元気に挙手する響である。

「えー!俺にも慈悲を頂戴!!!」

最初から待っていたじいさんは焦る。

「約束してたのでじいさんにもいくらか譲ります。でも全部はだめです。」

「私は…?」

響が懇願の目で言う。

「…。」

無視して作業を進めて、一息するお兄さん。


「というか、暑い。喉乾いた。」

ムギが着けている軽量の素材と同じ防護服。通気性はあるが、細かい針を防ぐ作りのため、全身着ていると冬でも少々暑い。

防護の帽子を脱ぐと、それはアーツで最初にケンカをしたタラゼドだった。紫外線防止のフィルムがあって顔が見えなかったのだ。


「ひいいいい!」

驚いて変な声を出す響。

「声で分からないのか?」

「そんな数回しか話してないしっ。そっちは男性が多いから覚えられるわけないよ!」

「お?兄ちゃん、ここの先生と知り合いなのか?」

「…まあ。」


「くださーい!」

すると、向こうからも白衣の研究室員が数人走ってくる。

彼らは一瞬思い出したように止まる。

「あ、もう大丈夫ですよね?…」

「ああ。でも気を付けて。」


環境科学科だ。

自然物の中にどれだけ人工化学物質が含まれているかなど調査している。

「なんだ??また来たのか?」

じいさんは怒るが、研究員は全く負けていない。

「狂い咲きならぬ狂い巣ですね…。多いんですよ。虫も分かんなくなってるんでしょうね。この辺ボイラー関係で温かいし。」


しゃがみこんでじっと見つめる響。

「こういうのって、やっぱり夏の蜂より弱いんですかね。」

「巣は小さいし、攻撃性も弱いですね。」

「映像を残して数か所採取させてもらいます!場所は?」

「あそこ。階段の下。獲る前にその画像も撮っておいたから。」

「わー!ありがとうございます!薬を使ったかとか質問事項を送るので、後で送信してください。」


「私もほしいのに…」

恨めしそうに見つめる響。タラゼドは仕方なしに言う。

「学生さん、この先生にも分け前ある?」

「もちろん、ありますよ!…先生なんですか?」

密封した箱とビニールの中で作業が行われ、結果、先に環境科学科が欲しいところを持っていき、この季節にもまだいた蜂の成虫と幼虫の半分をじいさんが。それ以外は響の物になった。響は、環境科学科の生徒に分析結果を共有してもらう事を条件に、最初の取り分をあげたのだった。



タラゼドは作業車を畳み移動させ、車内で防護服を抜いて研究室まで運ぶのを手伝う。


「スズメバチの幼虫や巣で喜ぶの、おっさんじいさんたち以外で初めて見た…」

楽しそうな響に呆れるタラゼド。

「こちらこそ重いのに、ありがとう。瓶よりもカートが必要だったね。フフフ、女王蜂も貰っちゃった!」

「そんなに大きい巣じゃないだろ。でもこういう、人がいる敷地は危ないから、最初から殺虫剤使いたいんだけど。」

「粘ってくれたおじいさんに感謝だ!」

じいさんが絶対使うなとごねたらしい。


「蜂の仕事してたの?」

「リフォームや内装業とかしてたから、まあ駆除という形では。」

「…。」


目を大きくしてマジマジとタラゼドを見つめる響。

「…」

「な、何なんだ…。」

「もしかして、白アリとかもよく巡り合います?」

「…」

白アリ?…食いそうだな…。と、察するタラゼド。


「都会の建築物は食用にはしない方がいいぞ…。資材…土や木もいろいろ入っている場合もあるし…。」

「そう?」

「食うのか?」

「食うでしょ!」

「もしかしてウジとかもいける口?先、幼虫も持って行っていただろ。」

巣ごと持っていたので、必然的に幼虫もいる。正確には成虫になる途中である。

「…そうだね…。ウジはOK!タケ虫はどうにか…。」

話しながらウジの細長いようなタケ虫を思い出して少し気落ちするが、また元気になる。


「ハチノコはOK!ミツバチの子は大丈夫!タガメ、ゲンゴロウやコウロギはだめだけど…イナゴはイケる!コウロギは個人的にとにかくだめ!カドマウマを思いだすから無理!あの顔も腹も全部ダメ!!蚕は…悩ましいところかな。」

「ふーん。」

「…………」

「……。」

無言でしばらく歩いてふと気が付く。


は!と真っ赤な顔をする響。


「っ!わ…私が食べるんじゃないよ!!」

ああ?という顔をするタラゼド。いまさら何を。


「何!?その顔?!!私じゃなくて食べる人もいるの!漢方とか、あと食糧不足地域での栄養手段とか勉強してるの!!高たんぱく!滋養にもなるし!」

「あ、そう。」

「何々?!その反応!」

「ふーん、そうなんだなー、と思って。」

「ちょ、ちょっと!私を何だと思ってるの?!!」

「え?何とも思っていない。ふーん、としか。」

食べようが食べまいがどうでもいい。そうなんだと、思っただけだ。



そんな感じで響の小さな研究に到着し、認証をしてドアが開く。


「あのね!私はあくまで試食はするけどね!試食でも食べられない物もあるの!コオロギ系は駄目!」

「だから、食べても食べなくても分かったから…。」

「なに!?その言い方!」

カートを押して入ると、リーブラとキファ、キロン、他2人程の学生が何事かと見ている。


「うるさいな。だからどうでもいいって!」

響がしつこいので少し怒るタラゼド。

「本当に何なの?!!」


「…あのー。お二方…。」

キファが止める。

「ケンカしないでくださいね…。」

「だってね!この人が私が昆虫を食べたからって、変な顔するの!」

「…え?食べたんすか?」

嫌がるキファである。

「だから、ふーんと思っただけで、それ以上でも以下でもない!」

「変な顔したじゃん!」

「…変な顔するくらい許してあげたら…」

リーブラが、まだ羽音を立てている蜂籠(はちかご)を見て変な顔で言う。


「すげー!スズメバチ?」

キロンや学生が近寄り、興味深そうにかがんで眺める。

「酒に漬けるんですか?」

「まあね。他にもいろいろ。巣も薬になるの。」

キロンは興味深々だ。

「でも今冬でしょ?」

「…そうだね。それも調べて環境科学科が教えてくれるって。」

「今は真夏の方が蜂も動けないかもしれないよね。暑すぎて。」


響はしぶしぶ大人しくなる。

「タラゼドさんにお茶出してあげて。いろいろしてくれたから。」

学生の1人が何か飲みたいか聞くと、水でいいというのでペットボトルのものをあげる。


タラゼドはやたら様々な葉や木が置いてある研究室を眺める。

「これ鶏丸ごと煮る時とかに入れる木だろ?」

「よく知ってるね。」

響が感心する。

「見た目と匂いがなんとなく。うちの祖母がよく作ってったから。」


響は学生やキロンに説明をしながら蜂を処理していく。幼虫なんてどうするのかとタラゼドも眺めていると、そんなタラゼドにリーブラが耳打ちする。

「ねーねータラゼド。ここイオニアもよく来るんだよ。」

「ああ、もう帰るからいい。」

「え?帰っちゃうの?」

「運ぶの手伝っただけだし。」

「え、今見つめていたじゃん!響先生のこと!」

目をキラキラさせるリーブラ。

「は?蜂の処理なんて珍しいものなかなか見られないだろ。」

「ここに通えば、時々見られるかもよ!」

LOVEマークなリーブラに呆れる。

「アホか。学校だろここ。それに幼虫を触ってニコニコしているのにそんな気分になるか。」

そう言われて響の方を見ると、確かにかわいい図とはいいがたい。ファイなら卒倒だろう。値段やムカデの話までしだした。


「タラゼドおもしろくない!」

ふくれっ面のリーブラを放置し、水を飲み切ってそのまま退室してしまったタラゼドであった。




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