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ZEROミッシングリンクⅠ【1】ZERO MISSING LINK1  作者: タイニ
第五章 再起動

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73 3カ月の集計Ⅱ



困ったことが起こる。


VEGAの事務局で、サラサがうなっていた。


「なぜ、下町に憧れる………彼らの方がエリートなのに…。」

そう、なぜか藤湾側からアーツに入りたいと意見が出たのだ。


「あんな試合見せるからじゃないですか。カウスさんやチコさんが直接指導なんてするから…。」

「私はつきそっていただけだぞ。」

「昨日勝ったメンバーは、元々帯持ちやプロトレーナーだったり特殊な経歴の子たちがほとんどですからね…。」

「学生に下手なことは教えられないからな。もっと希望が出てから学校側と話し合おう。」

「塾や習い事として来るならいいんじゃないでしょうか。学校枠とは別で。」

「でも、さすがに誰にでも接近格闘術は教えられないんじゃないですか?」

「大分アレンジしてますよ。」


「そんなもの教えなくてもいいです。」

最後に女子事務員が総括した。



「皆さん、今感想まとめました。」

奥のディスクのお兄さんが、ガバっと起きて手を挙げる。


ジェイ

『友達のラムダが痩せてよかったです。成人病の可能性が減ったそうです。』


ファイ

『知らない世界にたくさん足を踏み入れられてよかったです。萌えました!よかったです。』


シグマ

『すごい人はシックスパッドじゃなくて、見た目エイトパッドと知りました。僕はなりかけなので、トレーニングは続けます。』


その他、

『ABチームを怒らせないようにします。でも、私にとっては彼らもチコさんカウスさんも同じです。どのみち敵いません。』

『やっと婚活再開です!ステキな夫を篭絡します!』

『ほふく前進7種覚えました。よかったです。時々混乱しますが、実践で有効活用できるよう頑張ります。』


「…なんであいつらは成長していないんだ…。」

チコが机にうつぶせて両拳を握る。

「『よかったです。よかったです。』が何回出てくるんだ…。何だ、この文章力…。」


「え?成長したじゃないですか!シックスパッドがエイトパッドになったんですよ!よかったじゃないですか!」

「お前もバカか!」

チコがそこにあった箱ティッシュを投げつける。

「うわあ!!」


投げつけられたお兄さんの向かいのお姉さんが嬉しそうに言う。

「でも、最終日前に測った最後の測定やテスト。すごいよかったですよ。測定のスタッフさんたち驚いていました。」

「そりゃあ、毎日筋トレしてましたからね。」

「マジで消防からスカウト来たからな…。結果よかったのか…。」

「昨日来た警察にも何人かの事いろいろ聞かれました。」

事務局の言語力も爆落ちである。そもそもそんな集団を作ってどうするのか。


「絶対に誰も離さないでください!」

それまで黙っていたカウスが念を押す。

ベガスに人材を残す!カウスの目標である。


そして、全部読み終えたチコがお兄さんにさらに怒る。

「こんなしょうもない感想ばかり載せるな!」

「えー!一応本文も全部提出するんだからいいじゃないですかー!!」


「イオニアはこの前の打ち上げでかなりいかれてるんじゃないかと思いましたが、書くことはまともですね。感想は簡単に書いてますが、ベガス構築の穴とかしっかり書いていますよ。アンタレス側の反発への対処とか。」

「イオニアか…。はあ…。」

チコがこれまでにないほどのため息をつく。


そう。


このベガス構築は連合国主導と銘打っているためここまで来れたが、反発がない訳ではない。元々優秀なナオス族が半数を占めているため、アジア侵略とも言われている。

学業、実践経験を積み安定した戦力になる人材の多くはここに残らずに、世界に派遣されているのだが、それでも横やりは多い。人を要求してくるのに、派遣させると今度は世界侵略と言われる。


実際、アジアの技術革新はユラス人もその根幹に多く関わっているのだが、一般人や思考傾向の者はその事実を知らない。知っていても偏った知識だ。

世間的には内戦続いたユラスの好戦さが強調され、支配層との交渉がうまくいっていない。でも、東アジア、アンタレスの発展も初動は支配層の闇支配、裏経済で成り立っていた。それも一般人よく知らなかった。サイコス、霊性が啓発されたと言っても、それゆえにその力を利用する者もいる。まだベガスの評判は良くはない。



ベガス構築に際し、本来はファクトが「鷹」や「フェニックス」だったら行くはずだった学校陣、中央区のエリート層が初期共同開発に選ばれていた。

しかし彼ら、正しくはアンタレスの古株が多くを許さなかったので、エリート層同士の表立った協力関係は滞っている。


でも、だからと言ってベガス側は、優秀な移民を育てることをストップしなかった。


何より、信仰心が高く、いずれの宗教にしろ心が柔和で利他心があり、優秀な層を育てていくことが世界均衡の早い解決だと経験上分かっていたからだ。



宗教心は狂えば悲惨だが、本来は人を律するものであり、科学、文明の始まりでもある。


そして、信心を失い、信心から来る自制を手放した国は、必ず衰退するか亡びる。それは歴史が証明していた。



唯物論や人本思想の発展でさえ、起源は元有神論者から来ているのだ。神に怨みや諦めを感じた者たちから。つまり、知恵そのものは有神論から得ているので、初期無神論者、物質主義者は何かしらのカリスマになれるのだ。神の知恵を再構成して無神論を作ったのだから。


今は前時代よりも精神性の高い人材が増えていた。エリート層が偏った資本主義に陶酔する時代ではなくなっている。それでも、放っておけば、意見の分裂や衝突、無秩序など別の問題も生まれる。そんなことで右往左往しているうちに、状況が変わってしまった。



なぜかここに来て、その選択枠にも、救済の選択枠にもなかった大房がベガスに入ってしまったのだ。


そして倉鍵近辺と違い、経済、各種研究には関りが浅いかもしれないが、手応えはあった。

何より、個人プレイヤーと思っていた彼らの中には以外にも統率力のある人間も多くいたのだ。


「イオニアをどうするかだな…」

「イオニアは放っておきましょう。」

「そうですよ。イオニアに構っている暇ないじゃないですか。」

「絶対ダメだ!」

「おもしろいからいいじゃないですか。」

「全然おもしろくない!」


「うわあ、チコさん完全に拗らせていますね…。」




***




この後どうなったかというと、リゲルはシャウラ共にベガスアーツ第2弾に。

元々頭がいいので、リゲルもここで大学に通う。そして通いではなく、残ったメンバーと寮に入った。


ヴァーゴたち数人は整備屋に入っている。

なにせここ、それほどすごい店ではないだろうと思っていたのに、裏の方にはVEGAや警備員たちの最新機器が時々来ることが分かったのだ。表と裏が違い過ぎる。



キロンは農業とメカニックを選択。

統一アジアの農業経営に関わることにした。比較的個人規模が多かったアジアの地方農業。農業はあまりにも大変すぎる。現在、半公営的、実際は企業との民営になるのだが、体系化された農業経営のため、藤湾の学生たちと再度勉強し直している。

また、あまりにデジタル化してしまい、度々整備が必要な農業機械の管理があまりに負担という現実を踏まえ、アナログ回帰というディスカッションが始まっており、現実化していくためにプロダクト方面からの意見を準備している。



ジェイは南海に残った。

南海のコンビニはショボ過ぎる。自分の勤めていたあのコンビニよりショボいと、なぜかここでもコンビニ職に就いて移民の店長が仕切る第2号店を任されている。

ラムダはそれらのコンビニでバイトをしながら、大学卒業を目指している。


イータは体が大丈夫なうちは、他のEチームメンバーとVEGA事務局で現在のアーツ2陣の経理に。タウと寮の近くの賃貸にいる。リーブラとファイも寮に残って、移民の子たちの仕事の手伝いをしている。リーブラは期間専門学生として響の授業の助手なども始めた。


ファイは響の授業を受ける傍ら、西アジア、ユラスの女性たちから民族衣装を学んでいる。伝統的な物から近代的な物まで幅広くあり「こうすれば萌える…」と訳の分からないことを言いながら、縫製から学び直している。


ハウメアは元の仕事があるのでいったん帰宅。蛍は夫と共に、南海の子供たちに柔道の基礎を教えている。



少し変わり種はティガ。

なぜか醤油にハマり、何人かの南海のおっさんたちと共に壺を抱えて味噌や醤油を作り始め、おっさんのお店を土台に本格的に作り始めることになり、南アジアなどの肉用スパイスも作っている。訳が分からないが、見物に行ったメンバーも手伝わされ、何人かがそのまま従業員となってしまった。


響に砂糖なしの甘酒も作ってと頼まれて、その横であまり目立たないメンバーであったが、アギスがアジア人の酒造技能士の人を呼んで酒まで作り始めた。自身はガス会社で働いていたため、ボイラー技士の資格を持っている。

食堂の延長で作っていた調味料類だったので、これ以降どういう形態に持っていくか話し合っている。



シグマやキファ、ローたちうるさい男子陣は半大房、半南海という感じである。まだ決めていないので、これまでの食堂のバイトや藤湾での勉強を続けている者もいる。護衛なども務める警備の仕事をする者もいた。



そしてファクトと言えば…


高校生活を超満喫している。



高校生活というより、高校生の特権、自由を。


そこには勉強という義務と、部活という自主性が入るのだが、藤湾で思いっきり格闘術やサイコスの訓練をしている。

「ファクト君は勉強しないんだね。」

と、生徒のみならず、校長にも言われたほどだ。


このままでは単位を落としかねると、見かねた藤湾学生に引っ張られて教室に向かわされたこともある。



そしてすっかりアナログ生活を送っていた。



第四章が終わりです。読んで下さった方、ありがとうございます!


実は話の本題自体はこれから入っていきます。でもその前に挿話を書いたり、骨格だけで書き始めてしまった小説の手直しをしていきます。休憩気味になるのでお許し下し下さい。


この後の章は新規小説として始めるか、この続きにするかも迷っているので、挿話を書きながら考えていきます…。


ストーリー自体は結末まで決まっています。


本当に、本当にいつもありがとうございます!

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