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ZEROミッシングリンクⅠ【1】ZERO MISSING LINK1  作者: タイニ
第五章 再起動

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71 星を見る



みんなが片付けをして解散して散っていき、リゲルや妄想チームと一緒に外に出ると、ファクトはエリスに呼び止められた。


「ファクト、少しお話よいですか?」

エリスが手を指した方を見るとカストルがいた。みんなの行く先だけ聞いてカストルの元に行く。近くに数人のおつきの人がいた。


「総師長。半年ありがとうございました!」

「こちらこそ。楽しかったかね。」

「はい!元の学校の友達から、部活に来いってずっと怒られていますが。今ならもう少し部活でも活躍できそうです。」

「そうか。期待の星だな。今度、チコとはデートするのかね。」

「はい、一緒にSR(シェルローズ)に行ってきます。」

「お母さんと仲良くやるんだぞ。」

「はい!」


素直なのか何も考えていないのか。性格は父親に似ていると聞いたが、それともまた違うと思いながらファクトの答えを聞く2人。


「少し星を見てあげよう。生年月日と生まれた時間は?」


時間までは知らないので出産情報を調べる。カストルは生年月日と時間を聞くと、付き人に渡されたノートに何か書きこんでいく。四柱推命とか算命学とかいうのだろうか。いろんな線や枠を引いて数字や漢字がどんどん書かれていく。


「これも武道のようにいろんな流派があるんだよ。国でも多少違うし。」

「へー。」

と、間抜けな返事をする。


「ほお、これはおもしろいな。」

エリスものぞき込む。

「…まあ、長生きはしそうだな。」

「そうですか!ありがとうございます。」

「親のように目立つ人生ではなさそうだが、星回りはいい。」

「母さんやチコを見ていると大変そうなので、ほどほどでいいです!」

「今のところだがな。」



「こちらに来なさい。」


カストルが、目の前に立ったファクトの胸に手をかざす。


少し時間が経つと、カストルから青と黄金の光が視えた。

何だろうと思いつつも黙って見ることにした。


次に額に手をかざす。1分ほどしてカストルは手を下げた。



「たくさんの星が集まってきている。」

「…はあ。」

「織女星だな。

どの星も大切にしなさい。でもどの星もそれぞれの位置に送り返してあげなさい…」


「はい…。」

よく分からないが返事だけはしておく。


「君が掴んでいい星は1つだけ。全てが元の位置に去っていった後に…1つだけだ。」


少し考えている。

「…チコと…ポラリスの元にしっかりといるように。」

「はい。」


「………。」

他に言葉がないか待つがカストルは笑って、これで終わりだと言った。


そして短い祈りをくれ、

「少し大変だろうが、ミザルをよろしく頼む。」

と言って手を振って見送った。




***




「マリアスにも勝てなくて…ファクトにも投げられた…」

気がすまないのはムギである。ダズっと固定ミットにパンチを打ち込む。


飲み物を買って小さいスタジオでくつろぐ女性陣。


「私も1センチ背が伸びてたんだよ!なのに、なのに…。」

朝夕の1センチ差は伸びたに入らないと思うが、黙っていてあげる響。

「やっぱり男になりたかった…。そうでなくてもマリアスみたいになりたかった…。」


体格でもスタミナでもパワーでもサイコスでも負ける。技術でもあっという間に追いつかれそうだ。

ファクトは大学に行くか悩んでいたので、確実に頭でも負ける。ムギには大学という選択肢どころか、受験で高校に行くという選択肢すらなかった。行けるところに行くのである。藤湾の通常クラスなら行けるであろう。学区だ。


奴には、法律上チコの正式な弟という名目があり、ムギはプライベートでベガス以外チコと2人で出歩くのも禁止されていた。半亡命者でもあるからだ。いつも帽子をかぶっているのは、外では顔を隠すためでもあった。SR社のイベントに行けたのは、SR社はムギのことを把握しているからである。


あんなとぼけた高校生男子に、勝てる要素が1つもないとは。


「あるよ!」

リーブラが励ます。

「女の方がお得だって言ってたじゃん!」

「何?」

「一緒にお風呂に入れる!」

はあ?と顔をしかめるムギ。

「垢すりしよう!」

「だから自分は銭湯に行かないし。」

チコも銭湯にはいかない。


「一緒の布団に寝れる!」

ファイが言うが、チコは役職上みんなと距離を取っているし、許可がないとチコのマンションにも行けないし、別に寝たいわけじゃない。

「背中に薬を塗ってあげられる!柔らかいのかな?筋肉なのかな?ふふ。」

ファイの頭がいよいよ理解できないムギ。それがいったい何なのだ。思わず変な顔になる。


「あんな大人にならなくていいよ。」

これは危険だとハウメアが言い聞かせる。女子でつるむことはしないハウメアだったが、みんながいるこの空気は好きだった。


「あ!そうだ!ムギちゃんサウナに行こうよ!前言ってたじゃん!全部終わったし!」

「行かないってば…。」

「裸じゃなくて、Tシャツ短パンで行くところだから!岩盤風呂とか、蒸しヨモギ風呂とかもあるよ!最後は個室のシャワーもあるし。一緒にフルーツ牛乳飲もうよ!」

「行こう行こう!卒業旅行はサウナにしよ!」

「イータはカフェとかで外で休んでいればいいし。」


この前は倉鍵の話、そしてサウナ。全く話に付いていけないムギである。




***




SR社の一角。



その頃シリウスは数え続けたカレンダーを何度も眺める。


自分の中には永遠と思えるほどの月日が計算されていたが、壁に掛けてある紙のカレンダーが好きだった。


頭の中の物はぼやける。メモリーはされていても膨大な情報の中に埋もれてしまう。触ることもできない。


でも、壁にあるカレンダーはいつもその時軸のその次元、その座標に自分を引き戻してくれる。ここに自分がいるんだと安心できた。ソファーの背もたれに顔を倒してカレンダーをじっと見続ける。



ファクトがベガスに行ってしまったことは知っている。たくさんの新しい知り合いもできたそうだ。でも、おかげで全くアクセスできなかった。家にも戻らないし、デバイスのアプリもほとんどログアウト状態。


ベガスはデジタルニューロスの侵入を防御する力も持っていた。幾つかハッキングが起こっているが基本県外で起きてから、実体的にベガスに侵入した勢力である。シリウスが侵入できても発覚すれば国際問題になるだろう。アンタレスや東アジア連合からも入れない。


どんなにデジタルの世界が進化しても、人間の心ひとつで世界は回っていくのだ。


それに、デジタル社会の届かないところでも、最も全てをよく見ることができるものが霊性だ。

けれど自分には、全くではないが基本無い力である。



シリウスの世界はシリウスを満足させなかった。



人類が残した多くの情報、その中で、知識や博識としてあるものでなく、個性を持った情報の多くは自分を混乱させるだけだった。そして人間が前時代から残した情報の大部分は、シリウスにとって辛い物、くだらないもの、落ち込むだけのものだった。



ほんの少しだけ欲しいものは、自分の持つ情報の中にない。

人間より人間を知っているのに、自分の手に掴みたいものも掴めない。



そのままソファーに寝転びため息をついた。



でも終わる。この期間が終わった。


デバイスの中はログインされるだろうか。




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