表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ZEROミッシングリンクⅠ【1】ZERO MISSING LINK1  作者: タイニ
第五章 再起動

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/79

67 タウVS「KY学生」



ワーーーーーー!!!と場内に拍手が起こる。


は?藤湾の学生に敵うわけないだろ。あのKY、絶対後で〆ると決意する下町ズ。


「シグマの上を行くやつが、藤湾側にいるとは!」

わざわざ煽って試合を始めさせるとは…と下町ズの羨望を集める。


「あいつはノーマークだったな。フラグは立ってたのに終わってから気が付くとは。」

妄想CDチームが悔しがる。

「なぜあんな逸材が今まで埋もれていたのだ。」

クルバトが悔しくも目を輝かせていた。



チコがカストルを見ると、彼も傍観だ。ため息をつくチコ。

警察やカウス同僚らしき面々が、カストルやエリスに気が付いて挨拶をしている。


「学校構内ではヤバいだろ。場所を移そう…」

チコが仕方なく言うと、ギャラリーの中からひょっこり小さなおじさんが挙手をしながら発言する。


「大丈夫!合わせ稽古です!一番近い道場でしましょう!!」

合わせ稽古!なんという便利な言葉!カーフが小さなおじさんに聞く。

「学校長。いいのですか?」

「いいのいいの。今理事長に許可を取ったし、講師たちも見に来てくれるって。」

あの人校長なのか。


「これでチコさんの接近戦が見られるんですね!」

KY学生が感動している。


簡単に言うな、この野郎と思うアーツ。チコが出るとは言っていないだろうと睨むと、チコが呆れた様子のまま指示を出す。

「タウ、タラゼド、イオニア、アクバル。お前らの内で1人出ろ。」


「はあ?!」

タウとイオニアが声を出して驚き、タラゼドもゲッと顔をしかめる。

「早く。」

4人はしょうがなく出てきた。

「どうする?ジャンケンで負けた奴でいいか?」

イオニアが言うと、チコが口を挟む。

「お前ら後ろ向きだな。勝ったやつにしろ。」


ジャンケンの結果、タウになった。

「勝負運が強いのが仇になった…」

「まあ、結婚祝いの余興という事で!」

シグマがタウの肩を叩く。

「俺が余興をするのか?」

「大丈夫だよ。3分だよ?」

イータが笑った。


中央武道館に全員場所を移すことになり、「15分後に始めます!」とサラサが言うとそれぞれ移動を始めた。




そしてやっぱりいた。


講堂後方で手を振る人物。アストロアーツのシャウラ店長一行とリゲルだ。

「お!リゲルもいるじゃん!」

ファクトは嬉しそうに幼馴染に向かう。


しかしシャウラは笑わず、そしてサルガスにきつく言う。

「お前、一旦アーツに戻れよ。」

大房レストランアストロアーツのことである。店長を押し付けてこんな楽しいことをまだしているとは。

「わ、分かった…」

仕方なくサルガスは頷いた。




***




さて、校内の武道館に先ほどの面々が集まる。


基本、アーツの指導に参加した学生だけだが、少しギャラリーが増えていた。しかも、たった3分のために、藤湾の空手道場などのおじさんたちも来ている。いつ知ったのだ。



フロアには薄いマットが引かれた。


「動画も写真も禁止です!」

サラサが注意事項を述べ、エリスやチコが変な人間が侵入していないか確認して、念のため入り口に警備を置いた。

KY学生とタウは性能のいい薄めのヘッドギアとグローブをする。




そこで周りを見渡し、マリアスが声をだした。

「危険技なし。流しで3分!」


ワーーーー!!!!!と歓声があがる。


マリアスに審判をさせるなー!と思う下町ズ。やつらの有効技は一般人の瀕死だ!

タイムはイオニア。


「賭けは…」

マリアスがチコを見る。

「ナシで。学生もいるしな。」

カウスを睨むチコ。賭け分放置のカウスは苦笑いだ。


「どっちにしても賭けは無理だな。」

正確には警察もいるからである。今日のみんなはいい子なのだ。




タウとKY学生はそれぞれフォーミングアップをする。

「他の奴も体を慣らしてけ。」

チコの発言におののくアーツ、俺らも出るのか?


さて、KY学生の名はシャム。

アンタレスに並ぶ西アジア南側の巨大都市、テレスコピィから来た学生だ。高校の時にベガスの噂を聞きつけ、空手の半指導役も兼ねてミラに来た大学1年生。飛び級しているので年齢はファクトと1つ差の18歳になる。空手を選択しなかったファクトは彼をよく知らなかった。肩は張っているが、背のひょろっと高い黒人青年だ。


タウも背が高いがシャムの方が高い。二人の大きな差は、タウは武道そのものは習ってまだ半年という事。片や相手は教える側だ。…と、まだ未知数だが……


「お前強いのか?」

タウが聞く。

「いえ!そこまでではないです!うちの流派では黒帯の一番下です!」

「…よく分からんが、黒帯とか既に反則だろ。」


「では、双方前に!」

二人はフロアに出て線まで下がり全体に、それからカストルに礼をして握手を交わすと拍手と歓声が起こる。




さあ、始まりだ。



「ファイト…


GO!!!!」



間合いを取りながら手を出す二人。シャムは道着ではないので少し戸惑っていも、タウの頭側面に大蹴りを入れる。


だが、タウの方が動きは素早い。前回のムギのように、ジャンプしシャムの両肩に手を掛け後ろに回った。そしてそのまま回し蹴りだ。

ダン!!とシャムの体が大きく揺れるが耐える。

「技あり!」

二人はそのまま、また間合いを取る。


「…やっぱり止めないんだ…。」

ハウメアが呆れる。

シャムも「止め」がないので動揺している。マリアスの「待った」は叩きつけられても発動しない。



カウスの同僚らしき一群、略してカウス同僚が感心していた。

「はー、いいじゃないか。ほとんどが武道未経験で始めて半年なんだろ?しかも20代後半。」

「なんなんだ?あの動きの良さは。」

「有名パルクールトレーサーの1人だよ。タウも武道自体は初心者だけど。」

「なるほど。いいな。」

警察官たちも感心している。


その隙をついて、タウがさらにもう一本回し蹴りを入れ込む。遂にシャムが吹き飛んだ。

「技あり!」

「…なんだ。思ったよりイケるな…」

イオニアたちが意外な展開に驚く。


空手に捕らわれていたら負けると思ったシャムは、そのまま蹴ったタウの脚を掴み、軽く回すように投げた。しかしタウはきれいに着地し、ダッシュして懐に入る。が、シャムから頭部に蹴りを一発食らう。

「一本!!」


頭が少し揺れてタウが倒れる。

「やめ!」

タイムはそのまま流れる。


「大丈夫か?」

マリアスがタウに確認した。

「大丈夫です…。びっくりしただけです。いけます。」

マリアス少しが頭に手を当てて良しと確認すると、一人で起き上がってと構えた。マリアスは霊性の流れが分かる。

「クソ!」

複雑な地形なら攻撃自体は避けられるし、負けない自信があるのにと、タウは舌打ちした。

「タウー!がんばれー!!」

ファクトが叫ぶ。



「始め!」

打ち合いをしながら、「技あり」がシャムとタウ、それぞれに入った。

間合いを取るかと思ったシャムに反し、タウはそのまま円で小さくダッシュし、長身のシャムの頭の高さに飛ぶ。


そして頭を膝で挟み、倒すと分かるようにしてシャムを構えさせ、そのまま後ろに倒した。

ダーン!と音がして、シャムが倒れるとマリアスが叫ぶ。



「一本ーーーー!!!!」


「ウィナー、タウ!!!」




おおおーーー!!!!!!と歓声が起こる。


8ポイント制のそこは空手なんだと思う、空手組一同。


「はあ、はあ」

タウが息切れをしながらシャムに近付いた。

「大丈夫か?」

一応強く叩きつけるようなことはしていないけれど心配になる。

「…だ、大丈夫です。」

ボーとしながら、ひょこっと半身を起こす。

「あ、ありがとうございます。」

後ろに倒されると思ったシャムは受け身の体勢に入ったし、マットとプロテクターで反動は吸収している。逆に、頭を蹴られたタウは大丈夫なのかと思ったが、そこまで強くは入っていなかったらしい。初めての経験で動揺したそうな。


タウが起こしてあげるとさらに歓声が響いた。礼をして下がる。


「よくやったー!!!」

同僚や警官たちも拍手を送る。南海の武道講師たちも歓声を送った。

「シャム君もがんばったー!」

校長も拍手を送る。


タウたちは実感した。年下ではあるが、訓練を続けていた者たちにも勝てる。ぎゅっと拳を握る。




チコがう~んという顔で、考えている。

「ハウメアを出したいけれど、釣り合う相手がな…」

あっちこっち見回している。


周りが指名にドキドキしている中、レサトは目を合わすどころか前もって妄想CDチームの隙間にズルズル隠れた。



その時である。




「ファクトーー!勝負しろーー!!!」



ものすごい大声で中央出入り口から現れた人物。

ムギである。


「あ、ムギちゃんだ。」

みんなが反応した。ムギは大声で現れたものの、アーツしかいないと思っていたのに、その倍ぐらいの目線を集めてひるんでしまう。

「あれ?なんでこんなにいるの?」


「ちょ、ちょっと!やだ…なんでみんな集まっているの??なんでアーツがここにいるの?」

ムギの後ろには響もいた。もうアーツ藤湾のスケジュールが終わったと思っていた響が戸惑っている。チコ、タラゼドやシグマと目が合って、ひいぃと自分より小さいムギの後ろに隠れる。


「おお!ムギー!!」

警官たちが手を振る。


状況が履くできなくて、ファクトに刺した指をそのままにボーとするムギ。



そんな中、イオニアがムギの後ろに注目してしまった。

「かわいいな。あの子。」

「?!」

つぶやくイオニアに、今度は周りの皆さんが注目してしまう。

「ムギの後ろの人かわいい……………」

はあ?という顔をする周囲。

タラゼドも思わずイオニアを見る。


イオニアは前の騒ぎの時、顔まではよく見ていなかった。厚着の上に髪が多くて分かりにくいが、響は大人っぽくも愛嬌のある顔をしていた。色っぽさもミステリアスさも備えるなんともいえない顔。


それがイオニアのツボにハマったのか。

しかし響は手を出してはいけない人物『チコの友人』。

「お前、度胸あるな…」

と思わず言ってしまったシグマである。



「よし!ファクト、前に出ろ!」

ここでチコがファクトに指示を出した。


「え?俺?」

ファクトが訳が分からないとキョトンとした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ