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ZEROミッシングリンクⅠ【1】ZERO MISSING LINK1  作者: タイニ
第五章 再起動

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65 その先に

少しずつ内容を整理しています。

まだ未修正の部分がありますが。「聖書」を「聖伝」「聖典」と迷って、「聖典」に変えました。よろしくお願いします。





その日、チコが帰って来たと聞いて、VEGA事務局の方に向かった。

会わないと思ったら、ユラスに帰っていたらしい。



「おはようございまーす!失礼しまーす!」

学校の職員室気分だ。


スタッフたちが一斉に振り向く。国連の会議場やすごい基地みたいなところかと思ったら、どこかのテナントに入っていそうな普通のアナログな事務所だった。


「あ!心星ファクトだ!」

「あれが噂の!」

初めて顔を出すのに、おそらく親の十四光のせいで既に有名人である。

「チコ先生来てます?」


「チコさん?今日は来るかな?」

「来ますよー。」

奥の方から疲れ切ったお兄さんがバサッと起き上がる。

「午後からかなー?」

不潔な感じはしないが、事務局は雑然としている。各々自分のディスクに好きなものを置いているらしく、家族の写真やぬいぐるみ、プラモやフィギアなども置いてある。サラサが座っているところだけシンプルだ。

洗練されたSR社のニューロスラボを見慣れているので、若干驚いてしまう。一応VEGAは連合国家群の第1級組織である。国連でも認められた新参の上位組織だ。


「おはようファクト。どうしたの?」

サラサが尋ねる。

「母から伝言があるんですけれど…。」

「ミザル博士から?なら…」


と言いかけたところで、ファクトの頭が後ろからつかまえられて引っ張られた。


「うぐ!」

驚いて振り向くとチコがいた。こんな近くで眺めるのはいつぶりだろう。同じくらいの目線だったのに、よく見ると少し見下ろす形になっている。

「筋トレはしないのか?」

「母からチコに話を預かって…」

チコはキョトンとするとファクトを引っ張る。

「…向こうで話そう。」



この階のガラス張りのテラスに出る。


「ミザルがなんて?怒っていたか?」

「月1回はSR社に来いって。」

「………。」

「行かなきゃいけないんじゃないの?最近はそれほど怒ってないよ。」

「…………」


「もしかしてサイボーグなの?」


チコがハッとこちらを見る。


「義体の範囲?」

「………」

「知ってるよ。アーツのみんなも。」

「……。分かってる。」

居心地悪そうに言った。


「みんな心配してるよ。」

「…なんでみんなが心配するんだ?」

「そりゃあ、上司に何かあったら心配するでしょ。嫌っているわけでもないのに。

サイボーグってこと公言しないから、昔大怪我をしたんじゃないかとか、トラウマなのかとか心配してた。」

「…まあ大怪我は何度かしたことはあるけどな。」


少し考えてチコは不思議がっている。

「…ふーん、そうなんだ。そういうもんなんだ。」

「…そういうもんだよ。まあ、別に人に言って回ることじゃないから言わなくてもいいと思うけれど。」


大人組に、体のことは触れられたくないこともあるから、言葉に気を付けろと言われていた。ファクトはそこまで考えなかったが、顔だけでなく生殖機能や排泄機能を欠損している場合もある。そういう事を考慮して言った言葉だ。


「…。まあ知られてもいいけれど、説明の仕方が分からないし…。男ばっかの世界にいたから、今更あれこれ言われて傷付くこともそこまでないけれど…。んー。」

珍しく少し混乱している。


「いいよいいよ。言わなくて。まあ、時々SR社に顔を出してあげてよ。母さんが言うなら多分大事なことだろうし。体の調整のことでしょ?」

「…そうだな。」

チコが手摺にもたれかかって外を見ていると、少し小グラウンドが見える。寒いのに何人かがダッシュしていた。


「行きにくかったら、俺もついて行くからさ。」

「…ファクトも?」

「うん。行くよ。」

「ミザルが嫌がるだろ。」

「母さんが言い出したことだからいいよ。試用期間が終わったら行こう。」

「…。」


ファクトをしばらく眺めてチコは思わず笑った。


紫掛かった瞳がきれいに揺れていた。




***




「それでね。ここはこう!」


休憩中のカフェで、クルバトがノートを広げている。

クルバトは東南アジア人顔で、Cチーム上位の運動はそこそこできる組。トレーニング的にはファクトやヴァーゴと同じ内容をしているが妄想CDチームの仲間だ。ガタイのいいアーツの中では細身で軽く、運動そのものはサルガスより得意である。


他にジェイやラムダ、ファクトやジリ、数人が集まっている。


開かれたノートには、みんなの簡単なステータスが書かれていた。



タウ、タラゼド、ハウメア、イオニア、蛍、アクバル、ロー他、拳闘士、武道家系。

サルガス、タチアナ、ベイド、シグマ他、銃士、剣士系。

リーブラ、モア、ティガ他、射手系。

ジェイ、他、呪術師系。

ヴァーゴ、キロン、レーウ他、職人系。

クルバト、イータ、他文官。

ファクト、おまけの学生系。アーミーマニア。


「50人近くいるから骨が折れるな。」


「キファやアギスはなんだろ?」

「シグマも武道家じゃないか?」

「やっぱ武道家系が多いな。」

「つーか、もともと習ってるからそのままだろ。」

「タウやキファとかパルクール系はニンジャだろ。」

「ベイド、イータは踊り子?」

「ねえ、なんで俺、呪術なの?せめて魔法使いとか言ってくんね?」

「それは無理。」

ブスッとするジェイ。無理な理由がない。


「なんか、できる人間はあれもこれも何でもできるな。才能偏っててムカつく…。」

「神様は平等主義じゃないのか…。」

「VEGAや教官側もする?」

「見付かったら殺されるぞ。」


「キロンのスチームパンク技士は外せないな。」

「こー、バランスよく行きたいよな。アーツも。」

「回復系がいないぞ。」

「ほら、あの、この前タラゼドとケンカしてた人。漢方とかツボとかできるらしいよ。」

「アーツじゃないだろ。」

「残念なことに、聖職者系もアーツにはいない…。」

「ジリは?」

「え?介護士は医療するわけじゃないよ。」

「そんなんテキトーでいいのに。遊びだろ?」

「遊びで本気にならずに、お前らいつマジの人生を歩むんだ?」


みんな考えこむ。

「蛍やファイは今も熱心に教会通ってるぞ。」

「ファイはちょっとな。男にもかわいいとかいうクセは胸糞悪すぎる。町人辺りにしておこう。」

「でもファイは電気伝導で物体弾いてたぜ。ティッシュが揺れてた。」

「鼻息じゃないのか?」

「じゃあ、魔導士で。」

「えっ?」

ファイが魔導士でなぜ自分が呪術なのか。ファイの方が人を呪いそうだ。

「リーブラ命中率すごいけれど、どっちかが動いているとOだからな。」


「あの藤湾学生の辺は全部天使系だろ。ヤバすぎる。美形で文武両道。」

「あの子たちは普通にいい子たちだよ。勝手に終末系にしないでよ。」

「みんなが美形でオールマイティーってわけじゃないし、数人だから、そういう言い方しないで下さいって言ってる子いたけど。」

彼らもあまり言われると負担が大きいらしい。


そこで我慢できずファクトが叫ぶ。

「学生って何?それにマニアじゃないし。もっと良さ気なのにしてよ。」

「やだよ。お前見ると迷彩しか思い浮かばないから。今書いているこのまとめには、アーミー過ぎるのは入れたくないんだよ。ファンタジー内の異世界マニアという事で。それ以上にすると、世界観が壊れるだろ。」


「だから、俺も戦士とか武道家とかにしてよ!傭兵、軍人でもいい!」

「親の威光、ボンボン辺りで。」

「学園系にしたらそれっぽくないか?」

「いやだー!クンフーも頑張ってるからせめて武道家にしてくれ!!」

「こいつにそんな遠慮はいらない。」

「ファクト、お前いきなり成長してムカつくんだよ。なんで懸垂21回もできるんだ。俺なんて半年がんばってもギリ6回だぞ。」

「チートが覚醒したから。」

「ふざけんな。お前のチートは十四光だけで十分だ。」

「背だけ伸びて中身はガキのままだな!」

首を絞められていると、いきなりノートが奪われる。



「何だこれは。」


「わー!やめて下さい!!」


サルガスだ。

ぺらぺらノートをめくって、呆れている。

「お前ら、よくもまあこんなくだらないこと…」


中を見ると、けっこう詳細にステータスが書いてある。自分らしきところを見ると、サルガスの使える銃器名。習得した武術、剣術。ダッシュのタイムの変化。誰と会合しているか、『大佐』『参謀』『商人』とかも書いてある。そこまで儲けられる才能はないのだがと思うサルガス。

性格とかは無く、技能的なことだけだ。いつ調べたのだ。

いろいろ言いたいことはあったが、寒い目で見てとりあえず今はやめておく。


「…おい、学生系。」

サルガスがファクトを小突く。

「学生系はやめてよ。」

「サラサが呼んでいる。大学行くのかどうするのかって。」

「……。」


高等学校はカーフたちとは別枠で通っている。

正確には向こうが別枠で、こっちが一般なのだが。


考え込んでしまうも、正直答えがない。藤湾の大学ならおもしろいだろうか。

このまま、ベガスの引っ越し業をしたらダメだろうか。

何の専攻を選択すればいいのだろうか。青空教室の先生になれるのだろうか。


進路の話が今一番重いファクトであった。




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