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ZEROミッシングリンクⅠ【1】ZERO MISSING LINK1  作者: タイニ
第三章 ベガスアーツ

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42/79

41 宴



南海広場の競技場。



「おおーーー!」

火であぶられてくるくる回る数頭の動物。ここまでの規模を初めてみるファクトやラムダは大喜びだ。


焼肉とは?と思ったら、コマちゃん襲撃の広場で羊や豚が丸ごと焼かれていたのだ。

東アジアでも市場や食堂前ではそれなりにある風景だけど、迫力が違った。



花札じいさんたちが準備してくれたらしい。ただし、花札じいさんは息子たちに指示を出すだけでお気軽である。周りでは子供たちが走り回って叱られていた。


「今日は、総師長、エリス、理事長、商工会長たちの奢りです!!」

拍手が湧き上がる。見たことのない料理がたくさん準備されていた。


「花札じじいども。めっちゃ仕事手伝ったからご馳走してくれるのかと思っていたら、ちゃっかり儲けているとは。」

じいさんが親指と人差し指で輪っかを作って、見せつけてくる。いくらもらったのだ。


女子たちはいつの間にそんなに友情を育んだのか、移民の子たちと驚くほど盛り上がっていた。


先の話で、玉が縮んだ男子どもはそこに近付かない。現在南海にいる移民は東ユラスからの流入が多いらしい。ユラスは西アジアの左隣。ユラスの特徴とアジアの色も含めたかわいらしい子たちが集まっている。

「ねえ、君たち何の勉強とかしてるの?」

強メンタルのシグマはそれでも話しかけて、他の男子の尊敬を買っていた。竿や玉などを切られた事例が数件載っていたので絶対近寄りたくない。切られ方まで載っていた。


ベガスのおっさんたちは、歴史の中で動物を屠り慣れているらしく、焼いた肉もすごくきれいに捌いていく。そして、その一部を最初に祭壇に捧げていた。教会は遠いしここに祭壇はないので、花札じいさんの家の小さな祭壇が役に立っていた。あのじいさんの家でいいのか。


ジェイやラムダたちが様々な風景を不思議そうに見ていた。



「では皆様、お近くにドリンクはあるでしょうか?」


カウスの掛け声のあと、エリスが少しの間何か祈っている。

そしてコップを上にあげた。

「3か月お疲れ様です。さらなる今後の精進を天に祈って!乾杯!」


カンパーーーイ!!!!


エリスの音頭で宴会が始まった。


ブーーーー!!!

と吹くのはヴァーゴ。

「あのばばあ!また酒入れやがったな!!」

またあのおばあさんに酒を混ぜられたらしい。

「そこに陥落するのか。」

イオニアたちが冷めた目をする。

「確かに美女とか問題じゃないな。敵はどこにいるか分からない。」

「やめてくれ!」

ヴァーゴは泣きそうだ。


ファクト、リゲルたちは肉に群がっている。ユラスの青年やおっさんたちが見たこともないようなすごい包丁でどんどん切り落としていくので、見ているだけで楽しい。ファクトはあの刀がほしいとメーカーを聞いていまうが、個人の職人のものらしかった。


「めっちゃうまいな。固そうに見えたのにそうでもない。」

「ラスも来れたらいいんだけど…。」

リゲルは幼馴染ラスの様子を見る限り、まだ話す時期でないかもと思う。ファクトがベガスのために急に休校したことに怒っていたのだ。


サルガスは、自治体の男性たちに囲まれていろいろ話している。



その様子を見て去ろうとするチコをマリアスが止めた。

「総長。少しゆっくりしてください。」

「でも…こういうのは初めてで。」

チコが固く笑う。これまでどこの宴会にもこんなふうに自由に混ざったことがなかった。あっても仕事だ。自由はなかった。


「まあ、まあ。」

腕を引いて座らせる。


「…はあ。」

「楽しかったですか?」

「ファクトと会ったとき、こんなことになるなんて思ってもいなかった。」

「…よかったじゃないですか。」

「そうなのかな?」

「そうですよ。私も楽しかったですよ。」


「ママーーー!」

向こうの方からかわいい声が響く。少し褐色の少年がマリアスに駆け寄ってギュッと抱き着いた。

「わー!教官のお子さんですか?」

近くの女子たちが集まってくる。

「かわいい!!」


「ムギちゃーん!4番目よー!」

「ムギねえちゃん!」

向き直って、ムギに抱き着く。

「アル!」

「わかいー!」

「私も!」


「やべえ、篭絡されまくっている。」

「篭絡しまくっている。」

もう下町男子ズはそれしか頭にない。


にぎやかな騒ぎの先でエリスが叫ぶ。

「3番目が2番目をつれてきないさーい!それは無効ですよ!」


ムギは4番目の息子、アルに言った。

「今度お茶奢ってあげるからね!」

「おちゃ?」


こうして宴会は夜まで続くのであった。



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