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ZEROミッシングリンクⅠ【1】ZERO MISSING LINK1  作者: タイニ
第三章 ベガスアーツ

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37 修了式



体育館に集まるアーツ全員。



「えっと、今日で試用期間終わりですね。皆さんお疲れ様です。とりあえず、用意した講習は全課程修了です。」

カウスがニコニコ言う。


イェーーーー!!!と喝さいが起こった。

マリアスもうれしそうで、今日はムギやリゲルも来ている。一部メンバーは陽キャどものノリに完全に引いている。


「開始はいきなりでしたが、本来こういうのって出発の式をするもので……」

アーツ自体思い付きで始めたのでそんなものはない。

「なかったので修了式はちゃんとしましょう。皆さんがこの期間に受かった資格証などもお渡しします。」

遅れがあったジェイは、スケジュールを詰めに詰めて、どうにか基礎の部分は身に入れていった。



「…それで、新しいスケジュールになるのですが、来週からです。その間に、病院に通ったり賃貸の整理をしたい人などはしてきてください。もうここで何かするのは十分だという人は、水曜日までに連絡ください。」

カウスが言いながら資料を出す。

「あと…。こちらも皆さんのこれまでの資料を本部に送らさせてもらっています。

なのでお礼に今日これから何か準備したいのですが、食べたい物とかありますか?一応焼肉を用意したんですけれど。あ、お酒はだめです。」

「またウナギが食べたいな。」

リゲルがつぶやく。

「また?お前ら若いくせにいいもん食ってるな。」

ヴァーゴが不満そうだ。


「はい!」

シグマが元気に挙手する。


「教官たちの実戦が見たいです!今まで見たことがないです!」


「は?」

カウスやマリアスと共に、横で静かに見ていたチコが驚き、さらに「おーーー!!」という歓声が沸いた。


「習ったことのプロの完成型を見てみたいです。」

「勝負!勝負!!勝負!!!勝負!!!」

講堂中にコールが響く。


こいつら、さんざんどやされた仕返しか?シグマを睨むと、奴は知らない顔をした。

「射撃とかでいいですか?」

カウスが言うと、シグマがすぐに気を取り直し、ノンノンと首を振った。それで済む訳がない。

「そんなの講習で既に見ています……」


「チコVSカウス、接近戦でお願いします!!!!」


オオオオオオーーー!!!!!!!

と、さらに大きな歓声が沸き、勝負コールが止まらない。


こいつら…と、ムギが怒りそうな感じで睨んでいる。


チコがドンと机を叩いた。

「無意味なことはしない。」

「無意味でないし、どう役に立つのか見たいです!」

「習ったことの使い方を知りません!!」

コマちゃん事件の場にいた4人は「見てるけど」と思う。



「あ、あの…。私は総長の部下の中でも弱い方ですので、一発で再起不能の自信があります…。なので…仲良く焼肉でいいでしょう?」

おずおず答えるカウスに、それは絶対違うと思う下町ズ。


焦るカウスにシグマがとどめを刺した。

「負けた方が勝った方に、ここの観衆全員を証人として、1つ願いをかなえるというのは?」


「…え。」


「……そんなことできません。」

と言いながら、上司の方をちらちら見るカウスに、チコは恐ろしい引きつり笑いをした。その言葉の()は何だという感じだ。


シグマが壇上に近付き、段下から手招きしてカウスを呼び何かを耳打ちをしている。みんななんだと思いつつも、話し終わるのを待っている。




そして、少し考えこんだカウスは全体に言った。

「しましょう!」


そしてチコに向き直る。

「こちらの希望は『休暇』です!休みを下さい!!」

「はあ?カウス、お前?!」

するか!そんなもの。という感じで見る。


いつも控えめなカウスがチコに向けて宣言したため、全員カウス派だ。


キターーーーー!!!!!!!


遂にチコ&カウスコールまで始まり、大歓声の体育館に気付いた住民たちも集まってきた。

「お前ら、黙れ!」

誰も黙らないし、マリアスは仕方なしな感じで笑い、ムギに関しては額に筋が入って激おこ状態。


「うるさーーーい!

お前ら同士でやればいいだろ!」

ムギの激高に一旦周りが鎮まった。


「あ、じゃあ、ムギちゃんも強いって聞いたので、ムギちゃん先発でお願いします!」

ケロッととんでもないことを言う、メンタル鋼のシグマである。


「はあ?」

ムギは最高にあきれ返る。

「ムギと?」

ムギとならちょっと組んでみたいと思う、アホな男子どもがざわめいた。コマちゃんや道場でのムギを知るなら、誰も名乗り上げないだろう。

「ムギとお前らを組ませるわけないだろ。」

チコがぼやく。本来は男女では組まない。力差だけでなく、男性として問題が起こるので女性と組むのは基本禁止されている。



「タウとか、ハウメアならいけるんじゃないか?」

ざわざわしていると、後ろから落ち着いた声が響いた。


「いいじゃないか。では最初にムギとマリアスで組んでみたらどうだ?」

「!」

みんな立ち上がって礼をする。カストル総師長だった。後ろにエリスもいる。修了式に来たのだろう。


「私も昔は道場に通っていたんだ。懐かしいな。見てみたい。」


困った顔をするムギ。


「マリアス。行けるか?」

カウスが本当にマリアスを押すので、下町ズは「え?マリアス?」と疑問しかない。

「いいです。少し勝負してみましょう。」

マリアスは前に出た。

「総師長に言われたらするしかないでしょう。私も久々で腕が鳴ります。」

と言って、体を伸ばす。


「しょうがない、ムギ。行け」

頭が痛そうにチコは促す。

「チコ……」

戸惑うも、ムギはカストルを見て礼をし前に出る。


周りが総師長たちに椅子を差し出してくれたので、カストルは楽しそうに座った。



ムギを知らないメンバーは、どう見ても差のあり過ぎる体格に言葉がない。


「あれはやばいだろ。下手するとムギちゃん折れるぞ。」

180センチの身長に筋肉質の元兵士のマリアス。

若いが150越えくらいの背に、どちらかと言えば肉付きの薄いムギ。


チコも仕方なしに言った。

「こんな最後の最後に大怪我されても困るからな、危険技はなしだ。」

当たり前だと思うギャラリー。死ぬ気なのか。しかも軍人とは危険技の度合いが違いそうだ。


「コートは空手。型は…なんでもいいか?攻撃はポイント制。流しで3分。」

「いいでしょう。」

「ハウメア、審判できるか?」

「あ、はい。タウとイオニア副審してくれる?キロン、タイムお願いしていい?」

「おっす。」


カウスが慌てて割り込む。

「あ、皆さま、ここはあくまで親善試合……。

いや、合わせ稽古の披露…?演舞披露…?」

「身内でするなら親善試合ではないな。」

「なら、稽古の披露でお願いいたします!」

「はい!あくまで稽古です!!」

こういう時は、一同心が一つになる。

「はい!いい返事ですね!」



この体育館は小さいが、武道館にもなっている。


二人はコートに立った。


「私が勝ったら…」

ムギは人差し指を…ギャラリーに指して言った。


「お前出てけ!」

「俺?!」

向いた方には、たくさん人がいるが…

指差す先はファクトしかいない。

「うわっ。ここまで来てまだこんなに嫌われている!」

「ファクト、本当にムギに前世で何をしたんだ。」

「チコさんが身内びいきするからじゃないですか?」

「俺は試合相手じゃなーい!」



「じゃあ、私は…ムギにうちの子を紹介させてもらってもいいかしら。」

マリアスがウインクする。

「うちの子?」

「息子が4人いるの。」

「知っています…。」

「3番目なら釣り合うかも。」

はい?と、どよめきが起こる。


「そーいう展開もあるのか!」

シグマが一人頷いている。


ムギは一般的に言う美人タイプではないし地味なのだが、この男性社会。細身な妹分なので、どうしても目は付けられる。チコは女性のカウントに入らなさそうなので、事務スタッフを覗くと今知っている顔で、ベガス南海の独り身紅一点だ。ただし中学生。


「絶対ダメだ…。ムギ、勝て。」

チコがまたしてもぼやく。


「ムギが勝ったらファクトはバイバイですよ。

それに、マリアスのところの子供は優秀です。マリアスにぜひとも勝ってほしいですね。というか、上の2人こそサッサと結婚してほしいのに。前もっての準備が大切ですね。」

エリスが真剣に言う。これはいいお見合いだと思ったのだろう。


「どっちに勝ってほしい?」

ヴァーゴがサルガスに聴いた。

「ムギは銃とかないとそこまで強くない気が……。分からん。」

真剣に見ていると誰かがサルガスの肩を叩いた。

「楽しそうだな!」

「まあ…」


「……」

そこで声の主に気が付く。

「うわっ!!」

肩を叩くのは大房レストランアストロアーツ現店長シャウラだった。他にも大房の知り合いが数人来ている。


「お!シャウラさん!」

「こんちは!」

周りが盛り上がるが、心臓が止まるかと思ったサルガス。

「なんでお前?」

「焼肉に招待された。」

チコの方を指す。

「ツィーじゃなくて、サルガス君。こっちは昨日も、お店超忙しかったんだけど。今日もシフト振るのめっっっちゃ大変だった。バイト5人も持っていかれたからね。整備屋の方はまだ人が足りないし。」

シャウラはニコニコ笑っているが、サルガスは頭が上がらない。怖いわ。



勝負する二人はデバイスやサイドポーチなど外し、カウスに渡した。武器など入っている場合、一般人には預けられない。下町ズは、マリアスはともかく、なぜムギの腰からショートショックが出てくるんだと驚く。レーザー式のスタンガンの代わりのような銃である。

そして、至急準備した薄手のグローブ、ハンドプロテクターとヘッドギアを付けた。


「ちょっと待て、なぜ試合相手でもない俺が賭け事の対象なんだ」とファクトが思いながらも、勝負は始まった。





二人が総師長と全体、それからお互いに礼をし、両手で握手をしてからラインまで下がると拍手が起こった。


これはどちらを応援するか迷うだろう。

「マリアス!勝ってください!」

珍しくエリスが大声だ。


「マリアス教官のご長男次男はステキかしら!」

リーブラは男子がいると聞き無駄にときめいていた。

「ムギちゃーんがんばれー!!」

「教官いけーーーー!!!!」

どう見てもムギが弱そうなので、だいたいみんなムギを応援しているが、教官にも声援が起こる。




「では、


勝負、始め!」



ハウメアが手を切って、試合が始まった。



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