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ZEROミッシングリンクⅠ【1】ZERO MISSING LINK1  作者: タイニ
第三章 ベガスアーツ

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28 温かい光



5日目。

霊性、サイコス試験。


サイコスはいわゆる超能力的なもの。霊性テストは霊魂的なレベルのものと、またその世界。本来全ての人の中に潜在する力だ。


それを調べる。


中間層以上だとアンタレスや他の主要都市では学校教育に霊性開発が取り込まれ、大体幼少期までに感覚を発現させる教育を受ける。なので、大なり小なりの霊性が見える者も多い。


つまり、死んだ人も見える。



雰囲気のいい場所とそうでない場所では見えるものも断然違う。


暴力やクスリ、紊乱びんらんが飛び交っているような環境はドロドロだ。チコがクラブに行くなという理由はそこあった。牧師や教会のクワイヤーチームが行き交うようなクラブならまだしも、性交と犯罪の巣窟になっている場所は、見える人間は基本行きたがらない。気持ちが悪いし意志が弱いと飲み込まれたり、敏感なタイプだとその場を見ただけで記憶に焼き付きトラウマになる。


その、「飲み込まれる」人にも種類がある。霊性が見えず警戒もしない層と、逆にある程度優秀な層が霊に狙われやすく飲み込まれやすい。見えない層はそのごとく恐ろしさが分からないので扱いやすい。優秀な層は一人飲み込めば大勢を共に引きずり込めるから狙われる。


そして、優秀な層を何人か飲み込んで外堀を作ってから、最後に狙う大物を捉えるのだ。



そして自分たちのところに引きずっていく。


どこに?


その霊魂の生きてきた時の苦しみ、死んだ後の積もる怨みを、鬱憤うっぷんを晴らすまで、苦しみの中にだ。霊魂は無意識にもよく知っている。世の中の仕組みと、人の心を。


男性は目に見えるものに引かれやすく、

女性は理解されないさみしさに弱い。


強欲にも寂しさにも色がある。



もちろん個人差は大きいが、行動は同じでも男女は動機が違うことが多い。そこにうまく入り込めればすれ違いを作りやすく夫婦も、組織も崩壊しやすい。小さな一つの家系の話でも、それはいつしか地域や国家の崩壊にもつながる。



前時代の終末前後、メディアや権力層の力バランスの崩壊が起こったことがある。


霊視やサイコメトリーや心理サイコスによって、そこで行われていた紊乱びんらんを知る人が増えてきたからだ。サイトメトリーは物に映る、残留記憶などを見る力である。メディアで叩かれていた有名人の男女性関係よりも、その裏側、大物の人間の方がずっとひどかった。人間の型が見えないほど歪んでいる者もいた。


それが世界に晒されたのだ。

遺骨や墓だけでなく、写真や肖像画でもある程度過去を露見できる。


過去の人間は、立派に写った自分たちの写真や動画で、超能力的(ちから)を得た未来の人間に不倫や犯罪が暴露されるなんて思ってもいなかっただろう。世界で低評価の人、ネットで叩かれていた人の方が、霊性がキレイだということはいくらでもあった。



密室で行われたことを全て隠せない時代でもある。



画像や動画のCGや身代わりもほとんど隠せない。前時代、画像の残る時代に世界にあれだけ大勢いた権威者の影武者をよく世間に隠し通せたものである。人間の「当たり前であることが全て。ありえないことを考えない。ありえないことは存在しない」「非科学的なものは虚実」という心理を利用したのだ。いずれにせよ、過去はどの位置にいる人間も、誰かの意図の中で動かされる時代でもあった。




さて、攻めるよりよい攻略要素は何であろうか。


先ほどのように、『内部を分裂させる』ことだ。


小さな疑心や度を超える欲、慢心を持たせる。

少し苦しめて、疑心を持たせれば内部からあらゆるものが知らず知らずに崩壊していく。小さなすり傷が致命傷になるとは思わなかったように。


そして秩序を狂わせる。秩序を崩壊させればさらに内部から崩れていく。


秩序の崩壊は、『悪』という分かり易い形で来るのではない。


不徳とするものをいつの間にか良いように馴染ませ、社会の常識にさせるのだ。

時にそれは、美しく、心地よい。


無気力もその一つと言える。そんなことが繰り返され、前時代、たくさんの国や組織が解体、分裂する。とにかくそうして前時代の世界の体制は一度崩れていった。




もし霊性もサイコスも何も分からないまま、あれも危険、これも危険だからと連合国が生活にたくさんの規制を生活内に設けていたら、今の社会は前時代と同じく失敗したであろう。


でも、今の時代は一般人も霊性が見える。


例えば、かつて禁酒法を設け失敗した歴史がある。多くの人が反発した。

今は、ある程度規制が必要な理由が分かる。酒自体に理由があるのではない。そこにたくさんの黒溜まりがあるのだ。酒にではなく人間と、人間の作った空間や物に…という事が個人レベルで分かるようになったのだ。当時は熱狂的敬虔者やただ真面目な保守的人間の妄信的狂行だと思われ、実際にそういう部分もあった。その後の時代で、健康上よくないと分かり酒の消費も減っていったが。


今の人間は酒に溺れ流される人間の黒い影が見える。赤黒い影も見える。苦しみも見える。


だから、自分の知恵で、意思で、その意味を判断することができる。






テスト時点で、サイコス、霊性どちらかの力が覚醒する者も何人かいた。



本人たちの同意を得た上で、希望があれば発現を促す。


全く自分に力がないと思っていた者も、言われたとおりに集中したり、焦点を別のポイントに合わせていくと、簡単な光が見えたりする。

評価が0だった者も椅子に座らせて、チコが相手の額に右手を置き、左手は相手の右手を繋ぎ、何か祈るように額を手根部しゅこんぶ、掌の下でトンッと打つと、先まで見えなかった光が見えるようになった。


エリスは少し違う。頭か額に手を掲げて何か祈っていた。


ファクトはドキドキする。魔導士とか神官みたいだ。



発現自体は心が柔軟な人間の方が早かったが、意外にも技術職や理系の方が一度力が発現するとコントロールはよくできた。運転の上手い者、運動ができる者も比較的コントロール力があった。


力の発現指導の際、相手に同意を得る理由は、先のように恐ろしいものが見えたりするので説明や本人の覚悟がいるからだ。問題があった場合は早急の報告の義務もある。

そして、許可を得た者しか発現の導き手にはなれない。連合国の司教、牧師、僧などの中でも、相手の空間にも入ることができ、コントロール力の高い者だけである。問題があった時に、カストルのような高位霊能者に繋げるためだ。


そして、突然に強い力を覚醒させず、最初は小さな光やオーラから目を開くようにするためである。



力のバランスは重要だ。


過去を見ること、予知能力も現在一般的で、世の中では犯罪や事故の防止、証拠にも役立てている。


ひどい焦り、動揺、怨みや精神的傷は空間や次元、物にも大きく跡を残す。それは捜査や偽証の解明に役立つと同時に、見る方に精神力がないと痛みに飲まれることもある。たくさんの痴情関係を作っていたり、残虐性を持つ者、大きな怨みを持たれている者も注意だ。日常生活が送れなくなったり、力を悪用したり、気が狂ったりする。惰性に流されると犯罪を犯しやすくなるため、発現指導を受ける側は生活の節制を約束させられる。


何かしら危険のある場合は、力を発現させない。もしくは、本人自身か環境にそれより大きな力があるかが決め手だ。自分や周囲に判断力や包括力があるかということである。そのための白と黒のバランスを見ていたのが、この前の面談でもある。


今回は面談で、精神や性格の危険が大きいと判断された人間は採用されていない。


もともと、そういう人物はほとんどいなかったのだが、おそらくサルガスが何か感じ取っていたのだろう。サルガスが声を掛ける時点で、無意識にある程度精査していたとベガス側は判断している。大房のデータを見る限り、もっと採用できない人物がたくさん来ると思っていたが、ほぼ合格ラインだった。



自分の手の周りにキラキラ発光体やオーラを見たメンバーは楽しそうだ。

「すげー!」

「私も見える!」

「でも、白くて淡い、モヤっとした光だけだけど?」

「最初はそのくらいの方がいいってさ。」



コンビニアルバイトのジェイは自分では何も発現できなかったが、チコが右手でおでこを打つと何かが流れて来た。


額が温かい。ジェイの手に添えられた左手もチコがそっと離す。

胸の方にも流れ込むように温かい光が入って行く。そして心臓を囲う感じがした。


「…。」


すると、自分の両手からチカチカ出る光が見える。その中に1つだけ動物のように動くものを見付ける。

それが消えるまでずっとと眺めていた。


生まれて初めて体験する、温かく、不思議な気分だった。




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