表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ZEROミッシングリンクⅠ【1】ZERO MISSING LINK1  作者: タイニ
第三章 ベガスアーツ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/79

24 アストロアーツ



男どもがうるさいので、サッサと次の話に移る。

はっきり言って、チコにとってはまともなトイレとシャワーがあるだけで贅沢に思える。



「あと、お前らの呼び方めんどいから、まとめてアストロアーツを略し『アーツ』にしよう。そこの店の常連やスタッフが多いんだろ?」

「え…?折角大房を清算してきたから他のがいいです。」

サルガスが言うもチコが遮った。

「でも、店番任されて怒ってる奴がいるんだろ。連帯感を持たせ、仲間ってことで、感情を緩和してもらおう。」

いいことを言っているのか、適当にあしらっているのか分からない言い草だ。

ヴァーゴもうなずく。

「なるほど。お前も仲間だ!という事で…機嫌を取ろうと…。」


「子供じゃないんだから、そんな呼び方一つでほだされたりしないだろう…」

サルガスが言うが、周りがそれで推した。

「いや、いいんちゃう?分かり易いし。」

「それでいこう!」

というわけで、こちらは『アーツベガス』になった。アストロアーツ現店長シャウラを余計に怒らせそうだと、半分ほどのメンバーは思った。





「最終確認する。」

突如チコが大きな声を出す。


「嫌になった奴。死にたくない奴。私に命を預ける気のない者は今出ていけ。」

少し沈黙したが、誰も出ていかない。

「ここで言いにくい者は、今日中にカウスに伝えろ。」

チコをじっと見る者もいるし、周りを見渡す者もいた。

「…この後はマリアスに譲る。マリアスは生活や講習の面倒を見てくれる教官の一人だ。頑張れよ!」

そう言ってチコは、一礼をするエリスとともに颯爽と去っていった。


「はい?教官?」


全員呆気にとられる。

チコさん締めがテキトー過ぎやしませんか?




すると、マリアスというガタイのいい少し褐色肌の女性が国旗に敬礼して入ってきた。

壇上でも全員に一礼する。


(わたくし)、マリアス・ピーコックと申します。普段は護衛の仕事をしています。東アジア陸軍出身。だいぶ前に退役して子供も大きいので、皆さんは私の息子…みたいな感じかな。様々指導していきますのでよろしく。」


「は?」

また、「は??」が飛び交う。陸軍?


「カウス。あなたも自己紹介して。」

「あっ、えーと、わたくしは、カウス・シュルタン。チコ総長の補佐です。皆さんの教官役や生活のお世話なんかしますので、分からないことがあったら何でも聞いて下さい。そうですね、チコさんに言いにくいことは私に言って下さい。

他にもスタッフやいろいろな方がいますが追々ご紹介していきます。」

「はい?」

やさしく笑ったが、教官ってなんだ?職業訓練の講師とかじゃなくて?

みんな目が点だ。


コマちゃん事件を知るファクトたち3人は思う。どう見ても会う内のベガスの何割かは一般人じゃない。退役しているなら今は一般人かもしれないが元々何者なんだ。カウスも何か隠し経歴がありそうである。




「というわけで、今日はスケジュール把握と、部屋の準備をしてください。

明日から作戦の第1弾が始まります。」

「作戦?」


「そしてこれが、明日より金曜までの大枠です。

1日目は、学力、技能テスト。

2日目は、身体測定。健康診断。予防接種。

3日目は、適性、性格、適応力診断。

4日目は、スポーツテスト。体力テスト。

5日目は、サイコス、霊性テストです。」


はい??


作戦?

作戦って、スポーツとゲーム以外で聞いたことがない。


下町ズはいよいよ訳が分からない。

「何ですか?これ?」

「テスト??」


「ええ。どう陣営を組んでいくかそこから決めます。」

「陣営?」

部分部分言葉が怪しい。

「どんな作戦にも把握、戦略、トレーニングが必要です。頭脳派なのか。肉弾戦派なのか。」


肉弾戦って…、体力系と言ってほしい。仕事ならせめてガテン系とか。と思う。

そして、今の環境と自分たちの頭脳で、ホワイトはないだろう…と思う。ブルーカラーじゃないのか?1つぐらいホワイトチームも作れたらいいとは思うが。




全員が戸惑っている間に、ただ一人悔しがっている者、

ファクトがいた。


く、悔しい。俺も参加したい!テストしたい。適応力診断したい…!


リゲルがため息がちに見ている。

「ファクト、また変なこと考えるなよ。」


ファクトは脇役ぐらいのなんとなく陽キャ寄りキャラなため、とくに特徴がなかった。

自分の目指すべき進路も分からない。意志すら曖昧だった。程よく楽しく勉強もスポーツもできたので、特別際立って好きなことも分からない。安定職に就きたいなくらいに思っていたのに、先週の手伝いは楽しかった。仕事って楽しい。それに1億7千万円も返さなければいけない。おそらく事務は向いていない。

体力気力は有り余っていたので何かしたかった。


自分もテストを受けて、あれが向いている、これが向いていると指し示してほしい…。自分で自分が分からない…。うう。


ガタッ!


「うお!なんだ?!」


突然椅子から立って、外に行こうとするファクト。

「リゲル、明日学校休むわ!」

「は?おい?」

「先輩たち、今日は失礼します!頑張ってください!教官もさようなら!またすぐ来ます!」

「は?ファクト?」

「おい?夕飯は一緒に食おうぜー!」

「花札じじいたちが待ってるぞ!」

その声に答える間もなく、ファクトはどこかに行ってしまった。



そして明日も戻ってこないのである。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ