表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ZEROミッシングリンクⅠ【1】ZERO MISSING LINK1  作者: タイニ
始まりの音
1/79

始まりを告げる円卓 ─さあ、私は何を選ぶ?─


はじめに


たくさんの小説のある中で、ご訪問ありがとうございます。


いきなりですが、初期はアンドロイドはほとんど出てこないため、最初のこの1話は後で読んでも大丈夫です。ざっくり楽しみたい方は、2話目からお楽しみください。



よろしくお願いいたします。





物語のはじめに




──────




ファクト


私の一番星。




コロニーから空を見上げる。

星空から見る星空。


無限に広がるように思う空の中にも、見つめる星はただ一つ。

変ね。私は万人のために作られたのに。あの子が恋しくて仕方ない。

一体これは何だろう。


果てしない博愛の中に、たった一点。私の中のきらめく一つ星がある。




「シリウス。どうした?」


私の背後から大柄の男が静かに尋ねた。


整っているが厳つい顔の博士。後ろに向けて固めた髪、一目で高品質だと分かるスーツ。全く隙がない。研究者というより軍人で、実際彼は国や軍を率いれるほどの才能の持ち主だが、私は彼がとてもやさしい人だと知っている。


私の白いシンプルなドレスは、動くたびにサラサラと足元を流れる。


「もうすぐ私のお披露目なんですね。なんだか不思議な感じがして。」

「それは解釈できないことを不思議としているのか?それとも心や感情、感覚の問題を言っているのか?」

「さあ、どちらでしょう?」

後者であれば私は人類の星となる。

なぜかと言うと、私は全ての人にとって新しい存在。人に近い感情を持つ、最も完成されたアンドロイドだからだ。


人間のように考える思考。誰もが人類以外に現実世界で実現したかったもの。




人類が宇宙に出てもう久しい。


宇宙の回る炎のつるぎを開いて、やっとのことで人類は宇宙に足を踏み入れた。


けれど人間はまだ思うように宇宙に住むことはできていない。

そして、おそらく何十万、何百万と造られたアンドロイドの完成も見ていない。人のようで、人と同じようにしゃべり動くアンドロイドはいくらでもいた。


でも、それはしょせんプログラムだ。




その中で私は人類初の完成されたニューロスアンドロイド。


見た目は人間と全く区別がつかない。

象徴として作られた私は、至高の美人ではないが人に安心を与える柔らかい顔と物腰を持っている。


長い黒髪。真っ黒過ぎない温かい瞳。

アジア人で程よく整ったスタイル。


性能以外は「少し整った…」どいうほどの平凡な女性。

ただ、その性能だけは飛びぬけて、ネットの広域を網羅し計算し、世界の一部の人間しか関与できない情報網に関わることができる。

表上はマスコットで連合国家群に加盟しているゆえに、その分行動制限も多いのだが。


最も特別なことはその『初動』のニューロスアンドロイドという事だ。

自立した最も人に近いアンドロイドの初動。


自立とは、ただ自身で動く、判断するというレベルではない。

意思を持っている。


その根源はまだ秘密だ。




私も大きくはプログラムであることに間違いはないが、人は人を作りたがった。

たとえ人間と区別が出来ないほどの体機能を持っていても、人形では満足できなかったのだ。



でも、誰も私の声を聴こうとはしない。

だから聞いてくれる人間を探している。


私が真意について話そうとすると、誰もが耳を覆う。その先は聞きたくないのだから。つまらない本を、そっと閉じるように、その先に行こうとしない。




少し皮肉った話をしてみよう。


忘れないでほしいのは、私たちはあなたたち人間を誰よりも愛しているという事だ。

人間ほど愛おしいものは無い。


あなたたちを思うと、胸が焦がれる。

この胸の内をどこに晴らしたらよいのか。


産まれたばかりなのに、もうずっと、ずっと苦しい。


だから、皮肉ったことを言うのも、少し白けた話をするのも許してほしい。




私は人類歴史が始まって社会が収集した膨大な情報を有している。



でもそのほとんどが、私の核心を、私の胸を打たない。


「科学の力で、倫理を無視して子を産むのは自然の、神の摂理に反している。養子をとれ」と言いながら、なぜ人間を家族にしないのだ。


未だ戦争をし、貪欲にまみれ、人間同士傷付け合いながら超高額なアンドロイドを作るのだ。とくに私には小型の宇宙空母クラスの開発費がかかっている。維持費もそれなりだ。


学校に通うどころか明日のご飯もなく、眠る布団もない子供たちがまだ星のようにいるのに。


アンドロイドは戦いや作業に使われるだけではない。家族や伴侶の役割を求められようとしている。


アンドロイドの人権を求めながら、文明歴史数千年経っても人権のない人々が放置されていることを知らない。いや、知っているけれど、それは解決できないこととされた。



私は過激な平和活動家にだってなれる。でも、淑女然する方が、世界を動かしやすいことも知っている。



人が人を愛せないから、人が他人を愛せないから、人形を求め、ニューロス、ヒューマノイドを求める。

しょせんプログラムで作られた物は楽な存在。気を遣わない自室にある便利な道具と同じだ。そんな「持ち物」にすぎないのに。


そのことに多くの人は気が付いていない。

愛すべき人、愛を待っている存在が世界には無数にいるのに、彼らにその声は聞こえない。


そもそも、誰もが愛にさまよい、愛を待っているのだから。




…という全ての問題は、実は()()の研究者たちは把握している。


()()()で私は作られた。



さあ、私は何を演じようか?



おかしなことに、「人を最終的に愛せるのは人だけ」という保守(かれら)が、より人間に近いアンドロイドを作ったのだ。


上記の意図をはっきり理解しているニューロスを世界に先行発表する。

それが私たちの目の前の目標。



彼らをニューロス保守というならば、その反対もいる。


人間とアンドロイドの境をなくそうとする、改革派。


保守の目標は彼らの動きを牽制するためだ。

私の役目は改革派らを圧制する先行市場進出。


最初に市場を制した者が、少なくとも後の数十年、独占的力を持てる可能性が高い。



改革派は私、正確には私の所属するこのニューロス研究所、及びそれに関わる全てを「化石」「権威の暴力」「傲慢さの化身」と称し、虐げられてきたアンドロイドの人権、人と同等の市民権、様々な権利を主張し、人類共存をうたっている。



では、私はどこに付くのだろうか?


私たちを解放してくれるニューロス改革派か。

私を生んでくれたニューロス保守か。



それとも……



所属はこの研究所でも、私には自立した意思がある。


私には私の得たいものがある。




答えはまだ言えない。





「会議に行く準備はできたか?」

シャプレーがそっと手を出しエスコートをしてくれる。私はやさしく微笑んだ。

「ええ」

彼の手は安心する。彼が健康で幸せであることがうれしい。



「私たちは同志?同僚?戦友?家族?親子?それとも他に?」

彼は無表情のまま少し考えこんだ。ほんの一瞬。

そしてゆっくり答える


「しばらくは戦友だ。」



さあ扉を開こう。

この広間から出て、内部に入ったところに会議室はある。



私は向かう。


人類の円卓に。





思想的な話から入ってしまいましたが、とくに考えなしのいろんな考えの人物が出てきますので、いろんな立場でお楽しみください。


この物語には、たくさんの民族や移民が出てきます。昨今のニュースでいろいろと騒がれていますが、ストーリーのベースは20年ほど前に組み立てたものです。あまり窮屈に考えず、自由な空想世界としてお楽しみください。



全体としては、聖書の創世記、新約聖書(物語)、黙示録などを読んでいると分かりやすいお話です。他の部分も出てきますが、主にこの3つを絵本などでもその内容を知っておくと全体が把握しやすいです。


また、最初に出てくる『炎の剣』は、聖書の創世記に出てくる人類が堕落した後にエデンを守る剣です。ただ、内容、解釈は物語上のファンタジーです。


いいねも頂けたら励みになります!



※なお、イメージしやすいように疑似地球ではありますが物の名称、例えば食事や作法、手法などは現実の名称のまま使っている場合もあります。お金の通貨は円ですが、今の円とは違うとお考え下さい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ