第九十三話
「ユウ、ユウ!」
目を開けるとディルアスやルナ、オブの顔が見えた。
「大丈夫か!? ユウ!」
みんな心配してくれている起きないと。
重たい身体を起こした。
「どうなったの?」
サクヤから黒い靄が出て消滅したところまでは覚えている。そこからの記憶がない。
「大丈夫だ、サクヤから魔物の気配は消えた」
遠くにサクヤが倒れているのが見える。
「私、どれくらい意識がなかった?」
「ほんの数分だ。魔力切れで俺もルナもオブやゼルも倒れたが、宮廷魔導士たちが魔力を分けてくれた」
「そっか」
周りを見ると魔導士たちが怪我人や魔力切れの人たちの治癒にあたっている。
一人の魔導士が近付いて来た。ルナートさんだ。
良かった、無事だったんだ。その向こうからはアレンとイグリードも来た。
「ユウ殿、ディルアス殿、ご無事で良かった! ありがとうございます! 貴殿方のお陰で我々はこうして生きている」
「ユウ! ディルアス! 生きていて良かった! お前たちのお陰でまた救われた。本当に心から感謝する」
アレンは涙ぐみながら言った。それをイグリードは横で笑いながら、アレンの背中をバンバン叩いていた。
ハハ、本当に良かった。後は……
「サクヤは? どうなった?」
倒れているまま動く気配はない。
「分からない、行ってみよう」
重たい身体を奮い立たせ、サクヤの元まで行った。
魔物の気配がなくなったサクヤは元の姿に戻っていた。
死んでないよね……?
サクヤの顔にそっと触れると温かかった。小さくだが呼吸する音も聞こえる。心臓も動いている。
「良かった……生きてる……」
その時サクヤのお腹の辺りに置いた手に何かを感じた。
「?」
『どうした?』
動きを止めた私にルナが気付いた。
「ここ、サクヤのお腹の辺りに何かを感じた。サクヤの気配と違うもの……」
「まだ魔物の気配が残っているのか!?」
魔物……似ているけど、何か違うような……
「凄く小さな気配……」
ルナが同じようにサクヤに触れた。
しばらく考え込んでいる。
「ルナ?」
『あぁ、これは……』
「ルナ、何か分かるの?」
『はっきりとは分からないが……、魔王の気配と似ている』
「!!」
ルナのその言葉に全員が驚愕の表情になった。
『魔王といっても、今のこの気配は小さすぎて自信はないが……』
何にせよ万が一魔王の気配ならば、まだサクヤの中にあるということだ。
「やっぱり聖魔法じゃないから消せなかったのかも!」
「ならば、またサクヤが魔王になるかもしれないということか!?」
アレンが驚愕の表情をしている。
「かもしれない……」
「そ、そんな……、どうにかならないのか!?」
「どうにか、と言われても……魔王を倒すことが出来るのは勇者の聖魔法だけって……」
私はもう勇者ではない。どうにも出来ない。
勇者、勇者がいれば……。
ん? 待てよ? 勇者……、サクヤが勇者だったんじゃ……。確証はないけど、気配では勇者だった。
一か八かになるけど、可能性はあるんじゃ……。




