第八十七話
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「な、何!?」
「何だ!?」
私もディルアスも、ルナとオブも状況が分からない。
突然の出来事に何も出来ないでいた。
ディルアスが飛翔し、空高く周りを見回した。
一体何が起こったの!?
ディルアスが降り立ち状況を聞いた。
「何か分かった!?」
「いや、何も……ただ王宮近くの空が一層黒い雲が渦巻いているように見えた」
「えっ……王宮に行こう!」
「あぁ」
空間転移で王宮まで移動し、アレンの元まで急いだ。
途中でリシュレルさんに会い状況を聞いたが、まだ何も分からない、と王宮内も混乱状態のようだ。
アレンの執務室の扉を開けた瞬間、爆音が鳴り響いた。
「今度は何だ!?」
全員が叫ぶ。
「ユウ! ディルアス! 来てくれたのか!」
「アレン! 何事だ!?」
先程通信で話していたばかりのイグリードも再び連絡をしてきた。
どうやらガイアスでも同じように黒い雲が一面に広がっているようだ。
「分からん! まだ何も状況を掴めていない!」
「アレン! 外に!」
「!?」
窓の外を見ると空一面に魔物の大群が……。
「なっ!! 何だあれは!?」
今まで見たこともない数の見たこともない魔物が大群になって押し寄せて来る。
「こ、これは……俺たちに滅びろということか?」
アレンが苦笑した。
「諦めるな! 俺たちもそちらに向かう!」
イグリードの声が魔導具から響いた。
「そうだな、宮廷魔導士たち、それに兵士たち、戦える者は全て出動させろ!」
「はい!」
リシュレルさんは再び執務室から走り出て行った。
「俺たちも行くぞ!」
「うん!」
「待て! ユウは……」
アレンはそう言いかけて止まった。サクヤがいるかもしれないから、と心配をしてくれているのだろう。しかし今の状況で私やディルアスが出ないという選択肢はありえない。
それが分かるからこそ言い淀むのだろう。
「大丈夫! サクヤがいても今は協力し合うしかないよ!」
「あ、あぁ、そうだな」
ディルアスと二人で駆け出し、ルナとオブは走っている最中に元の姿に。
外に出ると魔物の気配のせいだろうか重苦しい空気が漂っていた。
宮廷魔導士たち、兵士たち、も配置に就いていた。
「ユウ殿! ディルアス殿!」
魔導士たちの中にルナートさんもいた。
「貴殿方がおられるのは心強い」
にこやかに笑っているが、瞳には覚悟が見える。
他の魔導士さんたちも同じだ。
私も覚悟を決めないといけないかもしれない。
あぁ、結局ディルアスに気持ちを伝えることが出来なかったな……。
「ユウ」
『ユウ』
ディルアスもルナも覚悟を決めた瞳だ。
「ユウ、俺たちは負けない」
『あぁ、我等は勝つ』
二人とも覚悟の中に、絶対に勝つ、という強い決意が見える。
「何も伝えずこのまま死ねない」
ディルアスが魔物を見据えたまま強い瞳で呟いた。
『我は必ずユウと共にある』
ルナはこちらを向いて優しい瞳を向けた。
『僕も絶対ユウを守るよ!』
オブも負けずと叫んでくれた。フフ、みんな力強いな。不思議と負ける気がしなくなる。
「そうだね、絶対勝とう」
そして気持ちをちゃんと伝える! もう二度と後悔しないためにも……。




