第八十四話
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何だかよく眠れなかった。
ルナはすやすや寝てるし! 何かムッとしたので、ルナを手当たり次第わしゃわしゃして憂さ晴らし!
案の定ルナは不機嫌に起きたよね。
『何だ?』
「別に~」
ルナは昨晩のことだろうと予想が付いたのか、また人間化してきて押し倒された。
両手を押さえ付けられ身動き出来ない。
顔を近付けられお互いの鼻先が触れる。
「ル、ルナ!!」
『人間は口にもするのだろう?』
「そ、それは恋人同士だけだから!」
『恋人同士とは何だ?』
「え、えっと……好きな者同士?」
『我はユウのことが好きだが?』
「私もルナのことは大好きだよ!」
『なら問題ないのではないか?』
「いや、そうじゃなくー!」
『?』
話が噛み合わない! というか、分かっててからかわれてる?
じたばたと抵抗するが動けない。仕方ないから身体強化で……と思った途端、ルナは押さえ付けていた手を離した。
『まあ良い。我はこの先もずっと共にいるのだからな』
「? うん、そうだね?」
ルナが何を言いたいのかは分からなかった。
キョトンとしていると、ルナは私の顔をじっと見詰め、唇をペロッと舐めて来た。
「!!」
言葉にならず口元を手で隠しながら目を見開いた。
「ル、ルナ!! な、舐め!! 口っ!!」
ルナはニッと笑い涼しい顔をしてベッドから離れた。
うぅぅ、何か遊ばれてる……。唇、舐められた! 舐めるって! キ、キスと一緒じゃない!
やたらドキドキさせられて緊張するし……、恋愛スキル足らなさすぎ! あぁ、何で私は今までまともに恋愛してこなかったんだ! 経験値不足過ぎる! はぁぁ。
ディルアスも昨晩は何か態度がいつもと違うかったし……。
サクヤのことも考えないとだし……あぁ、頭がパンクする。
深い溜め息を吐いて、ベッドから出た。
侍女さんが朝食の準備をしてくれている横でルナは小型化で椅子に丸くなっていた。
まったくもう! 自分だけ涼しい顔して!
「おはようございます、ユウ様。大丈夫ですか?」
「え? 大丈夫ですけど……」
「そうですか、なら良かったです。お顔が赤くなられているので体調がお悪いのかと」
ニコリと侍女さんが笑った。
「だ、大丈夫です!」
赤い顔のままで出てきてしまったのか! 恥ずかしい! 頬を両手で隠した。
ルナをチラッと見ても何の反応もなく丸くなって寝ている。もう!
朝食を終えて、さて、どうしよう……今後のことをディルアスと話し合わないとなぁ。
か、顔合わせ辛いな……。
悩んでいると扉が叩かれた。ギクッとし扉を開けるとディルアスがいた。
「う、あ、ディルアス……おはよう」
「あ、あぁ、おはよう。アレンが今後のことを話し合おうと言っていた」
目線を合わせられない。ディルアスはどんな表情をしているのか気になるがまともに顔を見られない。さっきのルナに舐め……いや、うん、あれのことも何だか後ろめたいし。
まあディルアスと恋人同士でもないんだから後ろめたく思う必要はないのだけど。
二人とも無言なままでアレンの私室に向かった。
中に入るとリシュレルさんはいなかった。
ディルアスと二人で無言だったからか、アレンが怪訝な顔をし聞いて来た。
「ん? 二人とも何かあったのか?」
「え!!」
ディルアスと二人してビクッとした。
「何も!」
チラッとディルアスを見たがディルアスは向こうを向いてしまった。
「そうか?」
アレンは怪訝な顔のままだったが、まあ良いか、と話を続けた。
「さて、サクヤのことは……とにかくユウは関わらないこと。下手に魔物討伐に向かわないこと。まあこれは、ユウは我慢出来ないんだろうがな」
アレンは苦笑しながら言った。
同じく苦笑した。ハハ、もう呆れられてるね。
「魔力感知の訓練はもう良いのか? もう終わりだとしてもこのまま王宮にいたらどうだ? 森ではサクヤと遭遇する確率が高くなる」
「うん……、確かにそうなんだけど……やっぱりずっと王宮でお世話になるのも気が引けるし、一度森に戻ろうかな……」
「王宮にいることには気を遣わなくて良いがな」
「うん、ありがとう」
「ディルアスはどうなんだ?」
ディルアスはビクッとし、アレンの方へ向いた。
「あ、あぁ、俺はユウがしたいようにで構わない」
「ルナにしろ、ディルアスにしろ、ユウには甘々だな」
アレンが盛大に笑った。
「甘々って! 二人にはからかわれてばっかりだし!」
「ん? 何をからかわれてるんだ?」
「えっ、いや、あの……」
昨晩から今朝までのルナやディルアスとのやり取りはさすがに言えない。
「からかってない」
ディルアスは真面目な顔で言った。
「あ、あの、えっと……」
無言になってしまった。
アレンがニヤニヤしていた。
「お前ら何かあったのか?」
「な、何でもない!」
「怪しいなぁ」
ずっとニヤニヤされて居心地が悪い。
「だから! 私、一度森に戻るから!」
このまま王宮にいたら毎度アレンにニヤニヤされそうだ。
「分かった分かった。余計なことはするなよ? 何かあったらすぐ連絡しろよ?」
「余計なことって」
苦笑した。まあ自覚はあるけどね。
とりあえずサクヤのことは一旦保留し、ディルアスとルナとオブとで久しぶりに森に戻った。




