第七十四話
後日街で普通の人の魔力を感知してみることになった。
あまり街には行きたくなかったが、ディルアスとの魔力感知だけでは進展しないため、仕方なく見知らぬ人を感知してみることになったのだ。
街の片隅に座り人混みの流れを見詰める。
目を瞑り意識を集中させ、一人一人の魔力を感じてみる。
不特定多数を感知するのは、併用と同じくとても消耗するので、ディルアスと通常索敵の交代をしながらの訓練になった。
普通に街中を歩いている人たちも魔力は様々だ。
強く感じる人もいれば微量過ぎて感じられない人もいる。
こうやって改めて意識して他人の魔力を感じてみると色々あって面白い。
その時知っている魔力を感じた。
まずい。もうすぐ近くだ。
ディルアスに言おうとしたと同時に声が聞こえた。
「あ! この前会った人! お久しぶりっす! また会いたかったから、会えて嬉しいな!」
勢いよくこちらに駆け寄り手を掴まれた。
両手を握り込まれブンブンと振られ逃げるに逃げられない。
ディルアスがサクヤの手首を掴み、私の手から引き離した。
「あ、すんません」
申し訳ない、と頭を掻きながら笑った。
「魔法教えてくださいよ!」
「いや、だから無理です」
「何で!?」
「な、何でって……」
何でと言われても、あなたが勇者だから、とは言えない。
「俺たちは魔法を人に教えるほど凄い訳じゃない」
サクヤは呆然としていたが、ディルアスはそう言うと私の腰に手を回し歩くよう促した。
じゃあ、とだけ告げてそのまま建物の陰に入った。
「ディルアス……」
「あぁ」
サクヤが跡をつけてきていた。
「物陰に入ったら転移するぞ」
ディルアスは小声で言った。
転移魔法がバレないように、ある程度距離を取ると物陰に入った瞬間転移してロッジに戻った。
「あ~、あの人結構しつこいね」
グッタリしてテーブルに突っ伏した。
「今やろうとしている索敵が上手くいけば、あの男の動きに反応しながら避けることは可能になるんだがな」
「街でももう練習しにくいしねぇ」
とりあえず街でまたサクヤと遭遇してしまったことをアレンとイグリードに報告した。
それに合わせて、今魔力感知の訓練をしていることも。
「ならば、しばらくアレンの王宮にいたらどうだ? 王宮ならそのサクヤとかいう勇者らしき者も簡単には入れない。王宮内の人間の魔力感知してみたらどうだ?」
イグリードが提案してきた。
「なるほどな、確かに王宮のほうがユウにとっても安全だしな。俺はそれでも良いぞ。どうする、ユウ?」
ディルアスと顔を見合わせた。王宮は何かと気を遣うけど、今の状況からしたらそのほうが助かるかな。
「ユウ、そうしよう」
ディルアスが先に言った。
「うん、じゃあアレン、お願いしても良い?」
「あぁ、分かった!話は通しておくから明日から来ると良い」
「ありがとう」
そして次の日から王宮で生活することになった。




