第六十九話
「じゃあお前たちはあのロッジに一緒に住むんだな?」
イグリードがやれやれ、と呆れたような顔で言った。
「あ、あぁ」
「一緒にいるほうが何かと都合も良いだろ、新しい勇者のこともあるしな。ディルアスも心配になるだろう?」
アレンがディルアスの背中を思い切り叩いた。ディルアスは少し前のめりになりながら小さく頷いた。
何だか恥ずかしくなってきた。何かよく分からないけど恥ずかしい! 平静を装うのに必死だ。
「とにかく新しい勇者のことにしろ、何かあればすぐ連絡してくれ。それと魔物も増えて来てるからな……気を付けろ」
魔物……やっぱり増えてるんだ……。もう私が倒しても魔王の力にはならないんだよね……なら……
「ユウ、余計なこと考えるなよ?」
ギクッとした。
「もう勇者でないなら魔物退治しても大丈夫、とか思ってるだろ?」
何かバレてる。
「ハハ、何で分かったの?」
笑って誤魔化した。
「バカ! お前はもうそんなことしなくても良いんだよ!」
アレンは真面目な顔で言った。
「確かにお前やディルアスの魔力を頼らなければならないことも出てくるかもしれない。でも自分から危険な道を行くな。鉢合わせてしまったら仕方ないが、自分から討伐に行こうとするな。もうお前は自由なんだから」
「う、うん」
真剣に怒られた。本気で心配をしてくれている。それが分かったから、アレンの言うことに従おう。自分からは動かない。
「でも求められたら動くからね」
笑顔で言った。アレンは少し驚いた顔から、ニッと笑った。
「あぁ、その時は頼む」
そう言ってアレンたちとは別れた。
ディルアスと一緒にロッジに帰る……何か緊張してきた。
「そういえば畑に何か色々植えてあったけどディルアスが育ててるの?」
ロッジまでの道のりを思い付いた話題でふってみた。メランの花は相変わらず一面に咲いていたが、それ以外にも色々あった。
「あぁ、ユウが育てかけていたやつを引き継いだ」
「そうなんだ! ありがとう!」
ちょうど話ながら畑に着いた。
明らかに私が育ててたときよりも、立派で生き生きした野菜が育ってるね……。
何だろ、この敗北感……。
「ディルアスって植物育てるの上手いんだね~」
「ん? いや、普通に育てただけだが」
ムキーッ! 何か悔しい!
ムッとしてたのがバレたのか、唇にそっと人差し指を押し付けられた。
「口が尖ってるぞ」
そう言いながらフッと笑って指を離した。
ドキッとした。唇にディルアスの指が!
また無意識なのか!急に色気出してくるし! ディルアスの天然はたちが悪い!
ルナは私があたふたするのを分かっててやってるっぽいけど。
チラッとルナを見た。目が合ったがシラーッと澄ましている。
もう! こんなんでやっていけるかな……ちょっぴり心配になった。主に私の心臓がもつか……。




