第六十三話
夢を見ていた。
夢? 何の夢? あれ? おかしいな、何か長い夢を見ていたような……。
気付いたら大学にいて講義が終わっていた。
どうやらずっと寝ていたらしい。
良かった、気付かれなくて。
友達に寝ていたことをからかわれ、ノートを借りてバイトに向かう。
何か疲れてるな~、バイトめんどくさいな~、
そんなことを考えながら四時間程のお金を稼ぐ。
バイト終わった~、お腹空いたからコンビニ寄って帰るか~、とかダラダラした生活。
一人暮らしの家に帰ってコンビニ弁当を食べて、ボーッとネットを流し見る。
んー、何だろ、こんなだったっけ?
何か忘れているような。何か大事な事、大事な人たち……何だろ、何だろう……。。
何か泣きたくなった。
戻りたい……帰りたい…………一体どこに?
「おーい」
「おーい、もしもーし? 聞こえる~?」
重たい瞼を開けると光が眩しくて目を細めた。
そっと開けていくと、光のせいではないことが分かった。
目を開けると真っ白な空間にいたからだ。
「ここは……?」
「やっっと、起きたね~!」
声にビクッとし、声の主を探した。
「やっ! 久しぶりだね、ユウ」
その人物はニッコリ笑った。
真っ白な長髪に真っ白な瞳、肌も服も何もかも真っ白。
「だ、誰!?」
「あれ? 私のこと覚えてないの? 思い出してよ~」
グッと顔を近付け見詰めて来た。
思い出す? 会ったことがある? どこで?
何だろう、思い出したいのに、この顔を見ているとイラッとするのはなぜだろう。
真っ白の瞳が目の前に見える。その瞳には自分が写り込んでいる。
その写り込む自分を見ていると、何かを感じる。
忘れていた何か……。
「ディルアス……」
「えー、思い出すとこ、まずそこ!? 私じゃないの~!?」
やっぱりイラッとする。
「何で? 私、消えたんじゃ……」
「うん。消えたね~。綺麗さっぱりと!」
どういうこと? ここはどこ? 訳が分からない。
「ここは私の領域だねぇ。ユウはまだ消えたままだよ~。ただ私が君のカケラを集めた」
「カケラを集めた……?」
「うん! 魂のカケラ! 目茶苦茶頑張ったんだからねー! 感謝して!」
「??」
意味が分からない。
「新たな勇者が見付かってユウは消えちゃったでしょ? それを私は魂のカケラを集めて、ここに復活させました~! 記憶も姿も消えたときのまま! 凄いでしょ? ただまだ肉体はないけどね~」
「魂のカケラ……」
「一応ね~、私もユウには申し訳なかったな~と思ってね。まさか自分のほうを消しちゃうとは思わなかったし~。だからと言うか、罪滅ぼし~」
申し訳ない顔付きではないな。
「生き返れるってこと?」
「うーんと、正確には生き返るんじゃなくて、やり直しって感じかなぁ」
「やり直し?」
「そう、やり直し」
「私が勇者として召還してしまったときからの人生をやり直し」
「勇者として召還したときから?」
「その時までユウの肉体を戻してあげる。ユウはどちらの世界に戻りたい? 戻りたいほうの人生をやり直しさせてあげる」
どちらに戻りたいか……
「決まってる。あちらの世界に戻りたい」
「元の世界じゃなく?」
頷いた。元の世界にも帰りたいとも思うが、夢では何かを思って苦しかった。やはりあちらの世界が大切だと思う。何より消える瞬間の未練と後悔。あの時の想いが、あの世界へ縛り付ける。
「あちらの世界での未練と後悔をやり直したい」
「そっか、ならあちらの世界へ戻してあげる」
珍しく優しげな顔付きで神は言った。
「記憶も魔力も消えてしまったときのままだよ! 凄いでしょ!」
「魔力もあるの?」
「そうだね~、勇者しか使えない聖魔法はなくなってしまうけど、それ以外は元からユウが持っている素質だからねぇ」
何だか上手い話過ぎて胡散臭いな。
ニコリと笑った感情が読めない。
「あ、ちなみにあちらの世界はユウが消えてから五年経ってるからね~」
「五年!?」
「そう。ユウの魂のカケラ集めるの、凄い時間かかったんだよ~」
「私は召還された歳に戻るんだよね?」
「そうだよ~、肉体的にだけね~」
「そ、そっか……」
戻るその前に、と、神が真面目な顔をした。
「戻る条件として何点か約束事!」
新たな勇者とは自分からは関わらないこと。
新たな勇者には本人が調べた事柄以外の真実は教えないこと。
以上の事柄は真実を知っている者全てに対して適応される。
それが守られなかった場合、ユウは今度こそ完全消滅する。
「以上! 分かった~? 気を付けてね~。完全消滅しちゃうよ~?」
「新しい勇者さんから関わられたら?」
「まあそれは仕方ないよね~、不可抗力だね~。でも必要以上は関わらないでね~」
「分かった」
「じゃあね。改めてユウの人生やり直しておいで!」




