第五十話
結界と索敵を張り巡らせ、黒い影に向かって進む。
段々と近付いてくると、黒い影の正体が見えてきた。それは王宮の上空にいた。
鳥…、鴉? 見た目は鴉のような姿だ。しかし鴉ではない。巨大なのだ。とてつもなく大きい。
上空にいて一見分かりにくいが、地上に降り立てば、恐らく二階建ての建物くらいの大きさがあるのではないだろうか。
そんな巨大な鴉が上空から攻撃をしている。翼を振り乱し激しい風が巻き起こり、地上にいる人たちを薙ぎ倒す。
翼からは何本もの羽根が槍のように降り注ぎ、あらゆるものに突き刺さって行く。
地上の人々は魔法を駆使したり、武器や防具で何とか凌いでいる状況だ。
魔導士らしき人が応戦しているが魔物の攻撃に追い付いていない。
その場にたどり着き、ディルアスはアレンを下ろし再び上空へと上がった。
私はルナから飛び降り、大きく結界を張る。
ルナは建物を利用し駆け上がり、炎の球を吐き出した。
ゼルも同じく炎の球を吐き出しつつ、ディルアスの指示に従う。
ディルアスは結界を張りながら、風魔法に炎を纏わせ炎の渦を造り出す。
炎の渦は轟音を上げながら魔物を飲み込む。
魔物の苦しむ声が聞こえたが、その瞬間、翼を大きく羽ばたかせた。炎の渦は拡散され消滅した。
地面に何とか落とせないか……考えると同時に叫んだ。
「ディルアス! 離れて!」
その言葉を聞きディルアスが魔物から離れた。
炎がダメなら水で!風魔法に水を纏わせ、水の渦で魔物を飲み込む。
弾かれる前に雷撃を!少し動きの鈍くなった魔物の頭上から一直線に雷撃が迸る。
雷に撃たれた魔物は地上に墜ちた。
地面でのたうちまわる魔物を結界でその場に固定し、炎の魔法を。
ディルアスも降りて来て、炎魔法は交代した。私は逃げ出さないよう結界に集中。
結界の中で魔物は炎の中に消えて行った。残ったものは黒い靄だけだった。
完全に魔物が消えたことを確認して結界を消した。
「はぁあ、良かった、終わった」
「大丈夫か?」
「あ、ディルアス、うん、大丈夫。ディルアスも大丈夫?」
「あぁ」
落ち着いてから周りを見渡した。
翼の暴風と羽根の攻撃で辺りは目茶苦茶だ。建物も壊れ瓦礫が散乱している。
幸いにも死者はいないようだが、結界が間に合わなかったらしき者は怪我をしているのが大半だ。
ディルアスと二人で治癒に回った。
「二人ともお疲れ様、ありがとう」
怪我人の手当てを手伝っていたアレンが戻ってきた。
「お前らのおかげでまた助かったな」
アレンはホッとした表情をしていた。
「紹介するよ、イグリードだ」
アレンの横にはアレンより少し濃い金髪の長髪で碧色の瞳の綺麗な男性が立っていた。うん、いかにも王子様っぽい。イケメンには見慣れて来たよ。もう驚かないもんね!
「イグリード・サフィロ・ガイアスだ。今回の件、貴殿方には感謝する。本当に助かった、ありがとう」
丁寧に頭を下げられた。
「あ、頭を上げてください! お手伝い出来て良かったです」
頭を上げたイグリード殿下はニコリと微笑んだ。
王子様だ~! 何かキラキラしてる! いや、アレンも王子様なんだけど、何か違うというか……。
「ぜひ私の父にも会っていただきたいのですが」
父……父って……。
「ガイアス国王だな」
「!! えっ!! いや、それはちょっと……」
出来ればそんな偉い人とは会いたくない……。礼儀作法とか分からないし、緊張するし……嫌だ。
「ハハ、そう言うと思ってすでに断った」
アレンが笑った。なら先に言ってよ! と、じとっとアレンを見た。
「すまん、すまん、ハハ。代わりに俺が謁見してくるから、部屋で待たせてもらえ」
「本当は父に会っていただきたかったのですが、仕方ありません。部屋を用意させますので、そちらでどうぞ休息してください」
後始末は手が足りているから、と部屋に案内された。




