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第四十一話

「え……」

「この世界では勇者に関する事柄は極秘扱いだ。各国みんな大体同じ扱いだと思うが、エルザイアも王宮の禁書庫にしか勇者に関する記載が載るものはない。俺も何冊かを一度読んだだけだが……」


 アレンは一瞬言葉に詰まり、改めて言葉を発した。


「勇者は異世界人で、ケシュナの森、石碑の元に召還されるようだ、と……」


 言葉が出なかった。勇者って……どういうこと!? 何それ……意味が分からない……

 呆然としたまま動けないでいると、ルナが身体を刷り寄せて来た。あぁ、もふもふ……安心する……


「フフ、ありがとう、ルナ」


 ルナを撫でた。


「ユウが勇者……」


 アレンは呆然とする。


「今はユウが勇者であるかは後で良いんじゃないか?」


 ディルアスがアレンに言った。


「あ、あぁ……、そうだな……。それよりも今は王宮の魔物を何とかするほうが先だ」


 止まりかけていた思考が動き出したアレンはそう断言した。


「勇者の話はその後だ!」


 アレンは漆黒のドラゴンに向き直し聞いた。


「この二人なら魔を打ち払うことが出来ると言ったな。そんな力がこの二人にはあるということなんだな?」

『あぁ、その二人の力ならば簡単だろう』

「そうか……なら、二人とも力を貸してくれ!」


 ディルアスと見合わせた。ディルアスはどう思っているのだろう。


「ユウが良いのならば、俺は構わないが」


 意外だった。ディルアスは俺には関係ない、とか言い出すかと思ったのに。

 私も勇者とかは嫌だけど、この国を助けるためなら手伝っても良いか、と思ってここまで付いて来た。今さらやらないとは言えない。


「分かった。私もディルアスが良いなら」

「ありがとう、二人とも。ならばすぐに王宮へ! 古のドラゴン、感謝する!」


 アレンはすぐさま谷から出ようと歩き出した。


『我が血族の者よ、思うがままに生きよ』

「……あぁ」


 漆黒のドラゴンは昔一族を去った仲間を思い出したのだろうか、想いを馳せているようだった。


『黒の同胞よ、そなたはここに戻るか?』


 黒の同胞? ディルアスのことではないとしたら……オブのこと!?

 抱えたままのオブを見た。ずっと黙っていたオブは突然話を振られビクッとした。


「オブ、ここにいたい? 仲間と一緒に」

『え? ここに? いやだ!ぼくはユウといたいよ』


 オブは小さく身体を縮めて顔を埋めた。


「分かった、一緒に行こう」

『ユウ……』

「漆黒のドラゴン、ありがとう。でもオブは私たちと一緒に行くよ」

『そうか、ならば強く生きよ』


『さらばだ、小さき者たち』


 もしかしたら漆黒のドラゴンは私たちが来るのをずっと待っていたのかもしれない。

 ここに今このメンバーで訪れたのは必然だったのかもしれない。

 そう思わせる不思議な感覚がしたのだった。



 竜の谷から出ると急いで戻るために、空間転移魔法を使った。あっという間にエルザードへ。


「街に入る前に確認したいんだけど、魔を打ち払うって、そもそもどうするの?」


 素朴な疑問を聞いてみた。魔物と戦ったのはあの一度きりだ。姿が見えない魔物をどうやって打ち払うのか。


「え! それはユウたちが分かってるんじゃなかったのか!?」

「え!? いやいや、そんなの私知らない」


 アレンと二人でエーッ!! となった。


「巨大な結界を張れば良い」


 ディルアスが口を挟んだ。


「巨大な結界?」

「あぁ、城の一番高い所を中心にして、城全部を覆う結界を張る」

「城全部!? そ、そんなの出来るの!?」

「一人では無理だ。だから二人なんだ」


 呆気に取られたが、そうか、二人同時で魔力を合わせて広範囲に結界を張るのか。


「分かった」


 ディルアスがフッと笑った気がした。


「ということは、城の一番高い所を目指せば良いんだな! 行くぞ!」


 アレンは意気込んだ。


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