第三十八話
「ユウとルナたちの出会いはどんなだったんだ?」
アレンが食べながら聞いて来た。
「あ~、依頼があって……」
あったことをそのまま話した。ルナに魔力を分けてもらったとこは省略。そこはね……必要ないでしょ。
「確かに黒ドラゴンは普通のドラゴンの中でもさらに稀少だからなぁ。しかし普通の人間は竜の谷なんか入ったらすぐやられそうだけどな。母親と一緒に連れ出せるってのは、やっぱりゼルみたいに外にいたのか?」
そういえば確かに。オブはその辺覚えてないのか、思い出したくないのか、話を聞いたことはない。敢えて聞くのも辛いことを思い出させてしまいそうで聞けない。
「辛いことだからか覚えてないのかも」
「そうか、まあ行けば何か分かるかもな」
その時ルナがピクッと動いた。
索敵に何か引っ掛かった。
「何か近付いてくる! 私の後方二十メートル先」
小声で言った。それと同時にアレンが薪の火を消す。ルナもゼルも起き上がり臨戦態勢。オブは私の側に。
ディルアスとアレンも身構える。
さらに高位の索敵魔法を発動させてみる。
「どうやら魔物みたい。あまり大きくはないけど、凄いスピードで近付いてくる!」
ディルアスも索敵を発動させた。
「ユウ、結界強化を!」
「うん、アレン、オブ、私の後ろに! ルナは気を付けて!」
ディルアスは攻撃魔法を瞬時に発動出来るよう態勢を取る。
私は結界魔法に集中しながら攻撃魔法発動態勢を取る。
「来るぞ!」
ディルアスが叫んだと同時に黒い塊が飛び掛かって来た。結界がそれを弾く。
豹のような姿の魔物だった。しかし明らかに豹ではないと分かる。鋭い牙と爪に、頭には一本の長い角があった。
ルナとゼルが口から炎の球を吐き出す。しかしすぐに避けられた。
ゼルの腕が魔物の爪に切り裂かれる。
「ゼル!!」
ディルアスが氷の魔法を発動。魔物のいる地面から氷の柱が出現。しかし逃げられる。
ルナも再び炎の球を連発させる。動きが少し鈍くなった。その瞬間ディルアスが再び氷の柱を。
分かった。氷で足止めするんだな!
私もディルアスの氷と反対側に氷の柱を出現させ、逃げ道を塞ぐ。
何個もの氷の柱が檻のようになり魔物の動きを止めた。
「ユウ、電撃を!」
ディルアスは構えながら叫んだ。
二人同時に電撃魔法を発動! とてつもない雷が氷の柱ごと四方八方から魔物を撃ち抜いた。
魔物は黒い靄となって消えた。
「終わった……」
あぁ、腰が抜けた。初めて魔物と戦った。怖かった。
「大丈夫か?」
ディルアスが手を差し伸べてくれた。
「アハ、大丈夫なんだけど、腰が抜けたみたいで立てない。私は立てないだけだから大丈夫だよ。ゼルを診てあげて」
するとディルアスは私の手を取り、そのまま引っ張り上げ抱き上げた。
「うぅぇえ!?」
変な声が出た。お姫様抱っこ!? いや、えっ!? 何!? 何で!?
アワアワしているとディルアスはルナの側に運んでくれた。座り込んでいるルナの横にそっと座らせてくれた。
ルナに凭れかかり、もふもふ~!! じゃなくて!
ディルアスはゼルの元に行った。
「ルナ、大丈夫!?」
『あぁ、我は魔力を消耗したくらいで怪我等はない。ユウとオブシディアンも大丈夫か?』
「うん、私たちは結界の中にいたから大丈夫。気が抜けたら腰も抜けて立てなくなっちゃったけど」
二人で笑った。
『こわかったよぉ』
オブは私とルナにピッタリと引っ付き顔を隠す。まあ子供でも大きいから隠れきれてないんだけどね。
「大丈夫か? 焦ったなぁ、まさか魔物が出るとは。俺は何の役にも立たなくてすまん。索敵してくれてたおかげで助かったな。にしても、やっぱりお前らの魔法、凄いな」
ディルアスがゼルの治癒を終わり、薪の近くに戻ってきた。
「まだ何があるか分からんから、ユウ、二人で交代しながら索敵をしよう」
「そうだね」
「とりあえず先にユウが休め」
酷く疲れたから有り難い。再び薪に点火し、パチパチと燃える音が聞こえる中、ルナに凭れながら眠った。




