第三十話
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そんな話をしていると後ろから物騒な噂話が耳に入ってきた。聞いたらダメだ、と思いつつ、何だか気になる話で聞き耳を立ててしまった。
「最近王子が行方不明らしいぞ」
「俺は王と対立派のせいで身を隠してるとか聞いたような」
「どっちにしろ王宮には不在みたいだなぁ」
「あぁ、何だか王宮内が不穏になってるらしいしな」
「不穏てのは?」
「王は平和主義者で、魔王のいない今の時代は他国とも和平を、って方だろ? でも近頃他国に攻め入ろうとする過激派が現れて王と対立しているらしいぞ」
「えぇ! 戦争すんのか!?」
「せっかく堅実な王で国が平和なのになぁ、跡継ぎの王子も賢く麗しいと評判だったのに」
「今後どうなるんだろうなぁ」
王子が行方不明やら戦争やら、魔物もそんなにいなくて平和だと思ってたけど、この世界そうでもないのかな。少し不安を覚えた。
『大丈夫だ』
ルナがその不安を感じ取ったのか声をかけてくれた。
「うん、そうだね」
ルナもオブもいるし、まずは目先のことを考えよう。
注文した料理を食べて部屋へと戻った。明日は王立図書館だ!
ベッドの上でもふもふぷにぷにを堪能しながら、いつの間に眠りに就いていた。
「さて、今日は王立図書館に行くよ!」
朝支度を終え、声高々に宣言した。
『我らはどうする?』
確認してみた所、図書館内には動物は立ち入り禁止だったのだ。
ルナは人間化すれば入れるがオブが入れない。オブ一人きりで置いて行くのも無理だし……、そうなるとルナとオブ二人でお留守番。
「この部屋で待ってるのは?」
『街をうろついていてはダメか? オブシディアンは我が守るから大丈夫だ』
「いや、そういうことではなく……」
あのルナの人間化で街をうろついたら、オブよりもルナが心配になる……まあでもこの世界の人は美形に見慣れてそうだし大丈夫かな……。
「うーん、じゃあ人間化でなるべく人とは関わらないように気を付けてね」
『? 分かった』
そう言うとルナは目の前で人間化した。
街に馴染むように普通の服だが、違和感ありあり! 何だか王子様がお忍びで平民のフリしてます、って感じ。苦笑しかなかった。まあ仕方ない。
とりあえず図書館まで一緒に行くことに。
途中で道行く人たちの視線が痛い。
宿屋からしばらく歩くと王宮が見えて来た。といっても門だけだが。
門から遥か彼方向こうに宮殿が見えた。
凄い……日本のお城以外に初めてお城なんて見た。全く造りは違うが。
呆然と眺めていたら門兵に声をかけられた。
「城に御用ですか?」
「いえっ! あまりの立派さに見惚れていただけです!」
「はは、そうでしょうね。王宮は初めてご覧になられましたか?」
「えぇ、昨日王都に初めて来たもので」
「そうでしたか、庭園等は一般解放される日もありますのでぜひどうぞ」
にこやかにその門兵は教えてくれた。お礼を言って、王宮隣にある王立図書館へ。
歩きながら横目に王宮を見たが、何だか重い気配があるような気がした。
「ルナは何か感じる?」
『あぁ、微量だが魔物の気配のようなものを感じるな』
どういうことだろうか。魔物……なぜ王宮に?
考えても答えは出ないし、とりあえず図書館に行くか。
図書館も王宮程ではないが負けず劣らずのお城のような大きさだった。
「凄い……」
『では、我々は適当な所で待機している。何かしらあればすぐに呼べ』
「うん、ルナこそ気を付けてね!」
『?』
ルナは何のことか分からない感じだった。ルナの肩にちょこんとオブが掴まっている。
超絶イケメンの肩にぷにぷにの可愛いやつ! ニヤニヤしちゃう。
と、気を取り直して、いざ図書館へ。




