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異世界で勇者になりましたが引きこもります【完結】  作者: きゆり
三章 依頼

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第二十八話

 ルナとオブを抱っこしながら、よし! と気合いを入れて街に入る。

 ドキドキしながらマリー亭まで歩いて行く。

 良かった、特に誰にも止められなかったし、注目を浴びることもなかった。

 ホッとしてマリー亭に入った。


 すでにお客が入っていたため、こっそりと裏に回り厨房へ声をかけた。


「あぁ、ユウ、帰ってたんだね。夕食はどうする? 店で食べるかい?」


 マリーさんが聞いてくれたが、ルナとオブがいるので部屋で食べることにした。

 手伝えないことを謝り、部屋に夕食を持って戻った。


「明日、みんなに紹介するね」


 ルナとオブに言った。


「夕食食べようか。そう言えば二人は何が食べられるの?」

『人間と同じもので大丈夫だ』

『ぼくも~』

「そうなんだ、肉とかじゃなくて良いんだね。じゃあ一緒にどうぞ」


 持って来た夕食を一緒に食べた。三人で食べるには足らないかな、と思ったが、赤ちゃん化と仔犬化した二人には十分な量だったらしい。


 次の日フィルさんとメルダさんも呼んで、マリーさん、オーグさんも交えて裏庭でルナとオブを紹介した。


「ルナとオブです。二人とも元に戻って」


 二人は元の姿に戻った。

 巨大な姿の二人に裏庭は狭く感じた。四人とも言葉がない。


「す、凄い……これが銀狼の魔獣と漆黒のドラゴン」


 フィルさんが驚きの表情を見せた。


「ユウ、あんたほんとに凄いね」


 メルダさんも呆然としている。マリーさんとオーグさんも感心の溜め息。


「触っても良いかい?」


 フィルさんは興味津々だ。


「二人とも良い?」

『我は構わないが、オブシディアンはどうだろうな』


 オブは明らかに怯えている。


「オブはまだちょっと人間が怖いみたい」

「そっか、そうだよね。分かった。オブは触らないよ」


 そう言うとフィルさんはルナだけに近付き、そっと身体に触れた。


「凄い、綺麗な銀色の毛皮だね。格好いいな」


 他の三人もそっとルナを撫でた。


『もう良いか? ムズムズする』

「はは」


 ルナがもぞもぞしている。可笑しくて笑ったら四人に不思議がられた。


「どうしたんだい?」

「え? ルナがムズムズするから、もう止めてくれって」

「あぁ、言葉が分かるんだったね」


 あれ? ルナは確か意思疎通の魔法を使わなくても話せたはずじゃ?


『我は人語を話すことが出来るが、獣の姿のときに人間と言葉が通じたことはない。昔、我を従属させていた主とユウだけだ』

「そうなんだ、てっきりルナはみんなと会話出来るのかと思った」

『そうだったら、オブシディアンを庇っていたときにもっと早く解決出来ていた』

「それもそうだね」


 みんなと対面を終えたルナとオブは再び小さな姿に戻った。


「そう言えば服の装備は上手くいったかい?」


 フィルさんが聞いた。


「あ! うん、大丈夫だったよ! 色々支障があるから人間化は控えてる」

「?」


 フィルさんは不思議そうな顔をしたが、まあそれなら、と人間化は触れないでいてくれた。

 危ない、あの姿はあんまり晒したくないんだよなぁ。私が可笑しな態度になっちゃうし。この世界の人たちは美形頻度的に見慣れてるのかもしれないけど。


「ユウはこれからどうするんだい?」

「?」


 メルダさんが聞いて来た。

 これから……


「キシュクでそのまま依頼を受けながらマリー亭で働くのもありだけど、魔法をもっと極めるなら王都に行ったほうが良いだろうし」

「そうだなぁ、ユウはもっと凄い魔法も使えそうだから、王立図書館で勉強したほうが良いんじゃないかとも思うね」


 メルダさんの意見にフィルさんも賛同した。


「そうだねぇ、ユウが行きたいなら行ったら良いよ。うちはいつでも帰って来たら良い。自分の家だと思っておくれ」


 マリーさんもオーグさんも賛同してくれた。


 うん、まだまだ知らない魔法があるなら知りたいとも思うし、王都がどんな所かも見てみたいし。


「じゃあ、行ってみようかな」


 みんな賛成してくれた。何かあればすぐ帰って来い、とみんな言ってくれた。


 次の日、王都へ向けて出発することにした。

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