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第二十三話

 魔力を使い果たすとこんなことになるのか、とぼんやり考えていると、遠くから声が聞こえた気がした。


『人間、大丈夫か!?』


 声に気付いて意識を戻す。ゆっくりと重い瞼を開いて行くと、そこには見慣れぬ顔があった。

 眩い銀の髪に煌めく金色の瞳。そしてとんでもないイケメン!!

 驚いて目を見開いた。

 するとその超絶イケメンはなぜか裸! いや、意味分からないし! 何事!?

 しかもその裸の超絶イケメンに両手を押さえ付けられ押し倒されている。そりゃもうパニックでしょ! もう無理! 意味分からん!


「ちょ、ちょ、あ、あ、あな、あなた、、、誰―!!!!」


 やっと声が出た。


『あぁ、気が付いたか』


 そう言うと超絶イケメンは両手を離して、横に膝立ちで座った。

 いや、見れないからね、そっち。


「あなた誰ですか!? 何で裸!?」


 やっとまともに言葉に出来た。顔を背けながら身体を起こした。


『裸? あぁ、人間は服とやらを着るのだな。残念ながら今は服などない』


 そう言うと超絶イケメンの姿がぼやけたと思うと狼の姿になった。


「え! あなた、あの狼さん!?」

『そうだ』


 狼に戻った姿をマジマジと見る。確かに銀色の毛皮に金色の瞳だね。声もそういえば狼さんの声だったね。

 いやでも目覚めていきなり超絶イケメンいたらびっくりするでしょ! しかも裸だし……押し倒されてるし……。


「人狼?」


 おずおずと聞いた。


『いや、我は魔力で人型になれるだけだ。人型は力が劣るから普段は滅多にならない。どうしても必要な場合のみだ』

「そうなんだ……」


 ちょっと残念、いや、違うからね! イケメンが見たいとかでは断じてない! はず……。


『そなたが魔力を使い果たして倒れたので、我の魔力を少し分け与えた。それを行うのに狼の姿ではやりづらいのでな』

「魔力を送ってくれたんだ、ありがとう……そういえばドラゴンちゃんは!?」

『そなたのおかげで復活した』


 狼は後ろを振り向いた。

 そこには身体を起こし、こちらの様子を伺い見るドラゴンがちょこんとお座りをしていた。

 お座りという表現が正しいのかは疑問だが、何だか心配そうにこちらを見ている姿が何とも可愛く見えたのだ。


「君、大丈夫? 元気になった?」

『!!』


 ドラゴンは話し掛けられビクッとなった。

 そしておずおずとこちらに近付いて来た。


『ぼくはおねえちゃんのおかげでげんきになれたよ。おねえちゃんもだいじょうぶ?』


 心配そうに顔を覗き込んで来た。可愛い!!

 いやまあ見た目はいかついドラゴンなんだけど。何とも言えない可愛いさが!


「倒れちゃってごめんね、もう大丈夫だよ」


 にっこり笑って話すとドラゴンは嬉しそうな顔をした。

 周りでは心配してくれていたらしい動物たちが果実を持って来てくれた。


『たべて!』


 ウサギだった。ずっと横に付いていてくれたようだ。

 ウサギを撫でてお礼を言った。


『そなたには攻撃をしてしまい申し訳なく思う』


 果実をもらいながら休憩していると狼が話し掛けてきた。


「良いよ、ドラゴンを守ろうとしてたんだもんね」

『償う訳ではないが、そなたが望むならば契約を結んでも良い』

「契約?」

『あぁ、従属の契約だ』

「うーん、従属……、友達になってくれるのは嬉しいけど、何か上下関係付けちゃうのは嫌だな」

『?』


 狼がキョトンとした珍しい顔をした。


『ハッハッハ!! 変わった奴だな。我を従わせようとした者はたくさんいたが、友達になりたいと言った者は一人もいなかった』

「そうなの?」

『フフ……、まあ堅く考えるな。従属契約と言っても仲間のようなものだからな。契約をしていれば、お互いがどこにいるか気配ですぐに分かるし、離れていても会話が出来る。我の力も契約の力で上乗せされる。そなたに何かあればすぐに駆け付け助けられるぞ』


 へー、と感心したがふと疑問になった。


「街中には一緒に入れる? 離れても会話が出来るならやっぱり外かな」

『そなたが望むなら人間の姿になって付いて行こう。服は魔導具として装備させていてくれたら大丈夫だ』

「!! いや! それは色々問題があるからダメ!」


 あの姿で連れて歩いた日には目立って仕方ない上に緊張して一緒に歩けない……。


『? ならば小さき姿になって一緒に行くことは出来るが』


 そう言うと狼は靄に包まれどんどんと小さくなった。靄がなくなると……まるで仔犬!


「か、可愛いー!!!! もふもふー!!」


 思わず抱き締め頬擦りした。


『お、おい!』

「あ、ごめん」


 仔犬なのに声はさっきのまま、当たり前か。

 いやでも可愛い~! これは連れて歩きたい、というか抱っこしながら歩きたい。


「じゃあ契約お願いします!」

『了解した』

「ん? でも契約ってどうするんだっけ?」

『我の魔力は先程そなたに流し込んだ。そなたの魔力を少し我に送ってくれ』


 そう言うと再び人間の姿になった。裸でね。

 いやもうほんと無理!


『顔が赤いぞ、大丈夫か?』


 覗き込まれ顔を背けた。


「大丈夫! で、両手から流し込んだら良いんだね?」

『そうだ』


 両手を握り締めて魔力を流す。超絶イケメンが裸で手を握り締めてるって……気絶しそう……。

 魔力を送り終わると狼の姿に戻った。


『我の額に触れながら、我に名を』

「名前? 何て言うの?」

『我に名はない。そなたが付けてくれ。名を与えることで契約される』

「名前か……名前……、ルナ……ルナは?」

『主が付けてくれる名なら何でも良いぞ』


 女の子っぽいかな、とは思ったが、この狼さんの色合いが月のイメージしか沸かなかったから。月の女神みたいに美しい人間姿だったし。


 狼の正面に立ち額にそっと触れる。


「あなたの名前は、ルナ」


 額に触れた手から眩い光が放たれ、消えた。


『我が名はルナ、主よ、これから我はそなたと共にある』

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