第二十話
「防具ってどういったものがあれば良いんだろ」
歩きながらぼそっと呟いた。
「うーん、戦闘に行く訳じゃないから重装備でなくても良いだろうけど、襲われそうになったときに防げるものでもあれば良いかもね」
「例えば?」
「例えば……、腕当てとか脛当てとかくらいなら身軽にも動けるだろうし」
「後は服装もだね。動きやすい服にしたほうが良いよ」
確かに普段来ているワンピースじゃ動きづらい。街の外で魔法訓練したときも魔法を使う度にスカートが捲れ上がるし、飛翔しようもんならそれ以上に気になるし。
「帰りに買い物して行ったらどうだい?」
付き合うよ、とメルダさんが言ってくれたので、お願いすることにした。
まずは動きやすい服を。そういえばこの街の女性を見ているとあまりズボンは履いていないような?
「女性はあまりズボンを履かないんですか?」
疑問になったので聞いてみた。
「うーん、確かにあまり履かないかもねぇ。でも王都では女性騎士や兵士もいるからそういった人たちは履いてるよ」
なるほど、職業柄動きやすい服装でないといけない人くらいしか履いてないのか。
ならこの街で私だけがズボンだと目立つんだろうなぁ。動きやすいからズボンのほうが好きなんだけどなぁ。
「まあユウの仕事が定着してきたらズボンで街中をうろついていても、みんなら見慣れてくるよ」
笑いながらフィルさんが言った。
「ですかね、じゃあズボンを」
メルダさんと相談しながら、デザインやら型やらを決めた。
次は防具を。武器防具屋に入ると武器というより農機具? らしきものが多く見られた。
「腕当てと脛当てだよ」
フィルさんが指を指した。何点か置いてあり、革や金属らしきもので出来ていた。
メルダさんが腕に合わせてくれ、軽さや硬さを確かめた。気にいったものが買えて満足だった。
ついでに、と、武器のところで小振りな短剣も買った。
「明日は気を付けるんだよ!」
「危ないと思ったらすぐ逃げるんだ」
メルダさんがぎゅっと肩を掴んだ。フィルさんも頭にポンと手を置いた。
「はい、気を付けて行ってきます!」
にこやかに返事をして二人と別れた。
マリー亭に戻るとオーグさんとマリーさんに依頼の話と明日行くことを説明した。
「大丈夫なのかい!?」
マリーさんは不安そうだ。オーグさんは神妙な顔つきになり、
「自分で大丈夫だと思うんだな?」
「はい」
「なら、気を付けて行って来い」
少し微笑み力強く背中を押してくれた。心配するマリーさんに大丈夫だと宥め、先に休め、と手でヒラヒラと追い払うような仕草をされた。
心の中でオーグさんありがとうと呟き部屋に戻った。