第十九話
「お待ちしておりました。ユウさんとメルダさんですね。アウグスト・クラベールと申します」
フィルさんたちと同じ歳くらいだろうか、綺麗な金髪に青い瞳、これが金髪碧眼か! 端正な顔立ちも相まってあまりの綺麗さに呆然となった。
この世界の人たちの麗しさが半端ないんだけど! どうなってんの!? みんな綺麗過ぎ!
興奮気味なことに気付かれないよう必死に冷静を保つ。
「は、初めまして、ユウと申します」
しまった。声がうわずった。
そんなことには気付かなかったのか、敢えて触れないでいてくれたのか、アウグストさんは部屋の長椅子までエスコートしてくれた。
紳士だわ。緊張する……。
フィルさんが向こう側で笑いそうなのを必死に耐えているのは見なかったことにしよう。
「わざわざお越しいただいてすいません。フィルさんから話は聞かれているとは思うのですが、調査依頼をお願いしたいと思っています」
長椅子に私とメルダさん、向かいにアウグストさんとフィルさんが座った。
「はい。何となくはフィルさんから聞いています」
失礼いたします、と先程の執事さんから静かにお茶が配られた。気配がない。凄いな。
アウグストさんからどうぞ、とお茶を勧められ一口飲んだ。紅茶のような良い香りのお茶だった。
「早速本題で申し訳ないのですが、王都までの道のり途中の谷が最近になって、動物や魔獣が人間を襲うようになっています。私の元にいる兵士たちにも調査させたのですが、襲ってくるのが分かるだけで何ともハッキリとした原因が掴めないのです」
「調査には行かれてるんですね」
「はい。あの谷が通行不能になってしまうと、王都との流通に大打撃となってしまいます。ですので、早く解決するために兵士を向かわせたのですがどうにも……」
アウグストさんは溜め息を吐いた。
「そんなときに魔導具でお世話になっているフィルさんと先日雑談していたらあなたの話を伺ったのです。調査依頼、お引き受けいただけませんか?」
「ユウ、俺からも頼みたい」
アウグストさんとフィルさん二人から頭を下げられた。
メルダさんは心配そうにこっちを見ている。
「あの! 頭を上げて下さい!」
侯爵様なんて良く分からないけど、そんな偉い人に頭を下げられるのは胃が痛くなる。
「えっと、私はまだそういった仕事をしたことないのでご期待に沿えられるかは分かりませんが……」
アウグストさんの綺麗な青い瞳に見詰められ焦る。
「が、頑張ります!」
またうわずった。もう! イケメン過ぎると緊張するんだよ!
フィルさんがまた笑いそうになってるし。
「本当に引き受けて大丈夫かい? 私たちは一緒には行けないし、一人だよ?」
メルダさんがやはり心配してくれている。
一人で、というのはやはり不安だが、誰かと一緒に行くと頼りきりになりそうだしな。
「心配してくれてありがとう。でも多分大丈夫!」
根拠は全くないが、まあ何とかなるかな、と楽観的に考えてみた。
「ありがとうございます! よろしくお願いします」
握手を交わした。
「調査に何か必要なものがあれば全てクラベール家に請求下さい。何か分かればすぐに連絡をお願いします」
話を終えるとフィルさんも一緒に三人で邸を後にした。
帰り道、歩きながら話す。
「本当に大丈夫なんだね?」
メルダさんから念押しされる。
「はい。まあ何とかなるかな、と」
「はぁ、あんた適当だねぇ」
メルダさんは呆れて笑った。
「いつから調査始める?」
「うーん、ゆっくりしてる場合じゃなさそうだし、明日朝から行ってみます」
「防具とかはしっかり準備して行くんだよ!」
クチカの畑が夕陽に染まりさらに綺麗な金色に輝いていた。




