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第十二話

 朝食を終えるとメルダとユウは出かけて行った。

 ディルアスはそれから少し後に道具屋へと向かう。旅に必要なものを揃えるため、道具屋や薬屋を訪ねるつもりだった。


 道具屋で必要なものを買い、外を歩いていると、メルダとユウが見えた。買い出しの途中らしい。大量の荷物を抱えていた。

 服屋に入ったかと思うとしばらくするとさらに荷物が増えて出て来た。

 そのまま眺めているとメルダの治療院、フィルの魔導具屋に入って行った。

 その後マリー亭で魔法を教えるのだな、と、納得し、薬屋に向かった。

 薬屋での買い出しを終わりマリー亭での様子を見に裏庭まで行く。


 三人で初歩の魔法操作の仕方を実践していた。


「見てるならあんたも仲間に入ったらどうだい?」


 背後からマリーに声をかけられた。

 一緒に何かをしたい訳ではない、と言おうとしたが、無言でその場を離れた。



 俺は人と深く関わるのが怖い。




 二十年前、一番大切な人たちが死んだ。

 目の前で殺された。

 俺は自分だけ結界を張って助かった。何も出来なかった。目の前で無惨にも傷付けられていく両親をただ怯えながら見ているだけだった。


「お前のせいではない。五歳の子供に、しかもちゃんと教わったこともなく、自分以外の人間にまで結界を張ることは出来ない。仕方がなかったんだ」


 その初老の男はグレイブと名乗り、筆頭宮廷魔導士だと言った。


「もう少し早く着いていれば……すまないな、坊主」


 魔法で両親を弔ってくれ、悔しそうな顔をしながらグレイブは俺を抱き上げた。


「その力伸ばしてみないか? 大切な人たちを守れるように」


 グレイブは言った。涙が溢れ出して止まらなかった。思い切り泣け、とグレイブは小さく言うと、泣き止むまで力強く抱き締めてくれていた。


 グレイブに抱きかかえられながら宮廷魔導士団の数名が待機している場所に連れて行かれた。

 グレイブは周りの魔導士たちに説明をし、一週間だけ魔法指導すると伝え、先に王宮まで帰らせた。


「一週間だけしか出来ないが、お前ならきっと俺を超える魔導士になるだろうよ」


 ニッと笑ったグレイブはそれから一週間、食事と睡眠以外は魔法を叩き込んできた。

 教えられた魔法は一番見本を見せてもらえればすぐに使えるようになった。グレイブは驚きを隠せないようだったが、それよりも嬉しそうだった。


 七日目の最後に最大結界魔法を教えてくれた。いつか守りたい人が出来たときに使え、と。


 それからグレイブに連れられて、キシュクのマリー亭に連れて行かれ、顔見知りそうな、オーグとマリーに紹介された。二人は最初からずっと優しかった。本当の息子のように接してくれた。


 グレイブとの別れは寂しかったが、仕方がないことは幼心に理解していた。


「じゃあな、坊主。いつか大人になったら王宮に来い」


 ニヤッと笑ってグレイブは大きな手で頭をグシャグシャと撫でて去って行った。

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