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神様が受肉するまでの一幕

作者: 北畑あると

初投稿です。

設定が甘いところだらけです。

暇潰しできるなら、内容は何でも良いよというお優しい方はどうぞご覧ください。

気付いたら何もかも白い空間に居た。

何故こんなところに居るんだろう?

私は病室で家族に看取られながら永遠の眠りについたはず。

ということは、ここは死後の世界ってやつだろうか?


「その通りだ。」

突然男性的な美声がして振り向くと、ポワポワとした毛玉が浮かんでた。


……毛玉?

「誰が毛玉だ。私はお前達が言うところの『神』だ」

……毛玉なのに?

「私が毛玉に見えるのは、お前が神をそう定義しているからだ。……というか、むしろ何故お前は神=毛玉と認識しているんだ。おかしいだろ」

モフモフは正義!

正義と言えば『神』ですよね!

「なんだその連想は、意味がわからん」

フィーリングで感じとれってやつですよ!

深く考えたら負けです!

「よく分からんがまあいい。お前を呼び出したのは、私の手伝いを頼みたいからだ」

えー、80歳をとっくに過ぎたこんなおばあちゃん相手にそんなご無体な~。

そういうのはもっとピチピチしたアラフォーにさせるべきですよ、毛玉さん。

「誰が毛玉だ! 神だと言ってるだろうが! ……あと、アラフォーはピチピチしてるのか」

あ、そうだった。

神って自称されてたわ。

アラフォーもピチピチですよ。

私の半分程の年なんだし。

アラフォーの人達に聞いたら、ほぼ全員「自分はまだまだ若い!」って言うと思うよ。

「まあ、本人達に聞いたらそう言うだろうな。あと、自称してる神とか言うな。本当に神だ。まあ、地球の神ではないがな」

うわあ、聞きました?

一気に胡散臭さが増してきたよ!

これってあれでしょ、異世界転生させてやるとかうまいこと言っておいて、超ハードモードからの拷問エンド、凌辱エンド、死亡エンドのどれか一択ってやつでしょ?

孫から借りた本で読んだよ!

こわっ!

「お前の思考の飛躍具合のが怖いわ! というかお前の話が長すぎて、全然話が進まん!」

おばあちゃんの話は長いものと相場が決まってますよ。

最近の若い子は全然話を聞いてくれないんだから。


そう言えば、あんまり話を聞いてくれないもんだから、前に孫に「お前の愛読してた本をおばあちゃんも読んでみたよ。『学校の先生と緊縛』って題名だから、てっきり女の先生が緊縛されるのかと思ってたら、まさかのガチムチ高校男子の方が緊縛されたあげく女の先生に色々されちゃってて、おばあちゃんビックリだよ」と話しかけたらようやくこっちを見てくれたっけ。

やっぱり共通の話題って会話するときに重要なんだと再認識したよ。

ちなみに、同じ高校男子ってとこが愛読ポイントかしらね?

「いや、知らねぇよ! てか、お前何やっちゃってんの!? 孫が可哀想!」

そんなことないよ。

そりゃ、その時は真っ赤になって涙目で部屋に逃げていったけど、そのあと他の本の話題で盛り上がって、結局面白いと思った本の貸し借りまでするようになったしね。

「結果オーライってやつか? 孫が納得してるならいいんだけど」

孫から借りた本で一番面白かったのは、『学校の先生と緊縛』シリーズ全10作の内、6作目だったね。

何度も緊縛されていくうちに、少しずつ二人の関係性が変わっていく心理描写に深みがあって良かったよ。

一番つまんなかったのは、異世界転移して俺tueee?で出会った女子が全員ハーレム要員になるってやつだったよ。

ハーレム要員になった女の打算的思考に気付かない男に呆れたし、哀れに思ったね。

孫にもその辺詳しく説明しといたよ。

「てか、緊縛の話、シリーズ化してんのかよ! あとハーレムに当たり強いな!」

うん?

文化としてのハーレムや一夫多妻を否定したい訳じゃないよ。

例えばイスラム圏の一夫多妻制度の場合は元々は戦争で未亡人になった女性の生活難を救済する為に始まったって説もあるし、そもそも妻にできる上限人数が決まってるし、一定以上の資産持ちじゃないといけないから、基本は一夫一妻だしね。

そういう文化で育っている人達同士の話なら理解もできるよ。

もやっとするのはよくある小説の設定の方ね。

いわゆるテンプレな『異世界転移or転生したチート持ちの男が、ファンタジー世界で不自然なほどに可愛い女の子としか出会わず、女の子達のトラブルを解決して仲良くなって、ハーレム状態になって皆で楽しく暮らす』って設定にもやっとするのよ。

そもそも、トラブルを解決してくれた相手だとしてもよっぽど自分の好みに合ってるか、すごいイケメンでもないと、そんな簡単に惚れるとか普通ないでしょ?

ファンタジー世界で命が軽いって設定なら、俺tueee男のそばにいるだけで命の危険は減るわけだから、打算に基づいて一緒にいるって言われた方が納得できるよ。

本人が意識しているかどうかは別として、女の子なら大抵はそういう計算普通にしてるし。

「あー、けどよ、純粋な恋愛感情だけで繋がるハーレムもあんじゃねぇのか?」

そりゃそういうこともあるかもね。

そしたら好きな男を独占したがる女達の嫉妬や欲望渦巻く愛憎にまみれた生活が待ってるんでしょうね。

男の前だけ仲良くて、裏ではってやつ。

「なんでそんな曲解すんの? マジで仲が良いハーレムとかもあるんじゃねぇか?」

ふふっ。

そんなことがあるなら、大奥とか、後宮とかで愛憎劇が繰り広げられるって話が娯楽として取り扱われるわけないじゃない。

ある程度、そういう関係は泥沼化するって認識があるからこそ娯楽になるんだから。

もしも本当に仲の良いハーレムがあるなら、男側が全員角が立たないように上手く調整して、並々ならぬ努力ってのをしてるんじゃないかな。

女だけで放っておいたらあっという間に修羅場になるだけだし。


というか、神様なのに、ハーレム要員全員仲良しなんてファンタジー信じてるわけ?

ちょっと甘いと言うか、この先計算高くて悪い女に騙されるんじゃないかと心配になるよ。

あ、自称だから?

「お前ホントに失礼だぞ! 神だっつってんだろが! なんで信じねぇんだよ」

いや、毛玉だし。

「お前にそう見えてるだけだっつってんだろ! ボケてんのか!」

そんな、ボケを心配しないといけないおばあちゃんに何を手助けしてもらおうとしてるのかしらね、この毛玉……神様(笑)は。

それはそうと、長々と話してるけど、私全然声を出してしゃべってないよね。

「神様(笑)とか言ってんじゃねぇよ。しかもまた毛玉呼ばわりしやがって。てか、今更そこに気づいたのかよ」

ううん、結構早い段階で気づいてたよ。

自分も球形の蛍光灯みたいな格好になってるのも分かってるよ。

「そこまで認識してんのに、何も言わねぇって逆におかしくねぇか?」

だって、毛玉と蛍光灯が向かい合って(?)、黙ってる蛍光灯相手に毛玉が一人で喋って怒ってつっこんでるって第三者目線で考えちゃったら、噴き出すのを抑えるのに必死だったんだよ。

あ、毛並みがプルプル震えてるってことは、漸くこの面白さに気づいたんだね?

「なんでそうなるんだよ!! お前、ホントに自由すぎるだろ!」

やぁねぇ。

大声を出さなくても聞こえてるわよ。

ツッコミ属性の人が居るとおちょくりたくなる性分なのよ。

死んでも治らなかったわねぇ。

まあ、一回死んだからか、この場所にいるせいか分からないけど、自分でもあんまりおばあちゃんって感じがしないというか、気分が若返ってる感じがするせいで、当社比率で5.8倍はおちょくりたくなってる気がするわねぇ。

困った困った。

あらあら、毛を逆立てて、フワフワ感を割り増しにしてどうしたのかしらね(笑)

さてと、遊ぶのはこれくらいにして、そろそろ真面目に本題に入りましょうか?

時は金なりって言うしね。

「っ!! お前が! 言うなよ!!」

ですよね。



そのあと(自称)神様はしばらく深呼吸をして落ち着きを取り戻した。

深呼吸の間、毛玉がふくれたり萎んだりしてちょっと和んだのは内緒にしておこう。

駄々漏れだろうけど。


ホンワカと毛玉を見てたら、神様の見た目が突然人間に変わってビックリ。

鋼のような筋肉に覆われた長身で、黒髪金眼の精悍で男性的な魅力に溢れた顔をしてて、ギリシャ神話っぽい服装をしてる。

「これで毛玉には見えんだろ」

これなら男性的な美声もしっくりくるね。

本当にかっこいいね。

何なら好みのど真ん中、どストライクってやつだね。

いやぁ、眼福眼福。

とか思ってたら真っ赤になって目線を反らされた。

なんだこの反応。

あ! 童貞か!

「違う!」

あ、そっか。

最近はDTって言うんだっけ?

ごめん間違えたよ。

「言い方が違うって言ってんじゃねぇ! 童貞でもDTでもねぇ!」

隠さなくても良いのに。

別に恥ずかしくないよ?

大切なのは性体験の有無じゃなくて、お互いが気持ちよくなれるようにどれだけ相手を思いやれるか、だからね。

経験人数と上手かどうかは必ずしも比例しないからね。

「……もう、いい。……なあ、そろそろ本当に本題に入っても良いか?」

もちろん。

あ、そう言えば、私も人間の外見になってるみたい。

服は普通のワンピースって感じだけど。

手足があるし、無駄にでかかった胸もある。

死ぬ直前はペラペラで、持ち上げたら肩にかけられる感じに萎びてたけど、若い頃みたいにパツっとしてるね。

この胸の上がり方からみて、多分いってても20代ってとこかな。

懐かしいなぁこの肌の質感。

若い頃はこんなんだったなぁ、と感慨深くなるとつい揉みしだきたくなってきたね。

揉むか。


むにむにむにむに。

ブルブルブルブル。


「……おい」

はい、なんでしょうか?

「あえて聞くぞ。何で今突然乳を揉み出した?」

そこに乳があるからさ!

「真顔で言うなよ。と言うか、いい加減乳を揉むのをやめろ!」

えー。

気にせずに話をしてくれて良いよ?

「いや、気が散るから! マジで止めてくれ! 真顔で乳を揉みしだくな!」

ちっ、器が小っちゃいね。

神ならこれくらい流しなよ。

「流せることと流せねぇことがあるわ! 神なら誰でも万能だと思うなよ」

ま、それもそうか。

日本の八百万の神様もギリシャの神様も、あんたなんで神様とか名のってんの?ってタイプのやつってざらに居るしね。

そもそも万能なら、まず私に手助けとか頼まないよね。

まだ頼まれてないけど。

しょうがない。乳はまた後で揉むよ。

胸から手を離すと、神様はあからさまに疲れた表情をしてきた。

不思議ね。

「お前がな! ……あー、説明始める前からなんでこんなに疲れねぇといけねぇんだ。 ……じゃあまず一通り話すから、質疑応答は後でまとめてってことで」

いいよ。


神様が出してくれたテーブルセットで対面に座って、これまた神様が出してくれたケーキとミルクティーを頂く。

しばらく黙々と飲み食いしてると、こちらを凝視していた神様が若干疲れたような表情をしながら話し始めた。

「俺……私は元々地球とは異なる次元に存在する世界で勇者をやってて、老衰で死んだ後で何だかんだあってその世界を管理する神になったんだ。神として世界の管理をしていたんだが、ある時から世界の核となる部分に綻びが生じてな。神域こちらから何度か直そうとしたんだが、中々上手くいかなくて、いわゆる上役にあたる地球の管理をしてる神に相談したんだ」

淡々と話し出したところ悪いんだけど。

一人称を無理に『私』にしなくても良くない?

あと、さっきツッコミ入れたときと口調も変わってるし。

もっと砕けてても良いんじゃない?

私なんて神様相手なのに、とっくに丁寧語やめてるし。

「っ!! ……落ち着け……ここで突っ込んだらまた話が進まねぇ。……上役の神が言うには、世界の核の綻びがひど過ぎて神域からの改変を受け付けられないなら、俺が受肉して降臨することで神力を強制的に世界に満たして、それをもって綻びの修正をするのが一番確実らしい」

え?

まさか?

ホントに?

「受肉するって言っても、赤ん坊からだと不便だから、ある程度育った状態の肉体を作り、そこに俺の意識を移した後で地上に降りることになるんだ。それから地上で生活する時間を使って必要な神力を世界に送り込む予定で、地上の時間で最低50年はかかる計算になるな」

へぇー、そうなんだ。

神様ってそんなに素直でやっていけるの?

「? 何のことだ? 今の話のどこを聞いたらそんな感想が出るんだ?」

だって、私がちょっと指摘したらすぐに一人称を『俺』に直してるし、口調も砕けたし。

ちょっと素直すぎて、心配になるよ。

「そこかよ!! てか、重要なのはそこじゃねぇだろ!!」

いや、気になるし。

「ぐぐぐ……。つ、続けるぞ。世界の核を改変できる分の神力を満たすまで地上にいないといけないんだが、地上にいるときに神力を身体から出すには脱魂状態になる必要があるんだ。あー、つまり、簡単に言うと、せ、せ、性交を、して、ぜ、絶頂を迎える必要がある」

うわぁ。

筋骨逞しい男性的な美丈夫が照れてどもるとか、誰得だ?

私得だ!

ごちそうさま!

あと、設定が大人(アダルト)だね。

倫理的には、私はおばあちゃんだし、神様は一回老衰してるし、セーフかな?

「俺だって、せ、性交するやり方は気が進まなかったんだが、それ以外の方法だと200年近くかかるって試算が出たんだよ。流石にそんなに長く地上にいるわけにはいかねぇからな」

いちいち性交って言うときに赤くなってどもらないようにしようよ。

性交って言うのが恥ずかしいなら、合体って言っとく?それともまぐわいが良い?交尾は?和姦は?

「っっ!! ……それで、その方法を使うことにしたんだが、そうなると相手が必要でな」

なるほど、「方法」ときたか。

上手く言い逃げしたね。

まあ、いいよ。

見逃してあげるよ。

それはそうと、それならその辺にいるお姉さんに頼んだら良いんじゃないの?

受肉した外見が今と同じ感じなら、結構入れ食い状態になれるよ。

いよ! 憎いね!

ヒューヒュー。

「口笛くらい口を使ったらどうなんだ。というか、そんな簡単に地上の人間に頼めるならそもそもお前に手伝いを頼んだりしない」

まだ、頼まれてないけどね。

「ああ、そうだな。ちゃんと話をしたあとで頼む方がいいだろうと思ってな。……続けるぞ。受肉して脱魂状態になると神力を世界に送り込めるんだが、そうなるとどうしてもその瞬間に相手と密着する又はかなり近い距離にいることになるだろ。神力は薬と同じで多すぎると普通の人間にとっては害になるんだ。下手すると俺が、ぜ、絶頂した瞬間に相手が爆散しかねない。だから、相手も神力に耐えられるように俺が肉体を作る必要があるんだ。けど、魂が入っていない肉体を地上に置いといて何かに乗っ取られると危険だから、どうしても相手の肉体にもすでに魂を入れた状態で地上につれて行かないといけねぇんだ。……つまり、俺が頼みたいのは、これから作る肉体に入って世界を救う方法を、その、一緒に、実践してもらえないかと言うことなんだ」

絶頂も言い辛いのね。

しかも、頼むときに真っ赤になって目線をそらして口元を片手で隠さないといけないくらい恥ずかしがるとか、どこの乙女だ!

今時、処女でもそこまで(うぶ)なのはそうはいないよ。

まあ、見てる分には可愛いし、ギャップ萌えするからいいけど。

それよりも、意外とこっちに選択権がある感じ?

「っ、そりゃそうだろ。俺が神だって言っても、手伝いの内容が内容だしな。別に無理強いしたい訳じゃない。お前がどうしても無理なら時間はかかるが他の方法を選ぶだけだ」

うーん、そっかぁ。

うん、いいよ。

「え?」

だから、いいよ。

受けるよ。

一緒に受肉して、地上で50年まぐわうよ。

ドンと来い!

「っっ、何であえてその言葉を選ぶんだ! つか、ホントに良いのか? 今なら、撤回できるぞ」

いや、受けて欲しいのか受けて欲しくないのか、どっちよ?

「受けてもらえるならありがたいが、頼みの中身で嫌がられるかと」

あー、まぁね。

でも、曲がりなりにもおばあちゃんになるまでの人生経験もあるし、それに私が受けないなら、まぐわい自体をしないとまで言われちゃったら絆されるよ。

「は? 何でそうなる?」

ん?

私が断ったら『時間はかかるけど他の方法を選ぶ』って言ったじゃない。

『他の相手を探す』じゃなくて。

それってまぐわう相手は私じゃないとダメってことでしょ?

あらやだ、真っ赤になって可愛いわね。

「っっ! …………はぁ。で、ホントに受けてくれるのか?」

いいわよ。

あ、でも、ひとつ頼みがあるんだけど。

「何だ? 肉体に関する要望か?」

違うよ。

外見は特にこだわりないし、今の姿と同じでいいよ。

それよりも、地上に降りても私の思考を読めるようにしてくれない?

「は? いや、普通は思考を読まれるの嫌だろ?」

えー、喋るの面倒くさい。

つらつら考えるだけで会話できるとか本当に便利だから。

「そんなつまんねぇ理由で思考を読まれたいとか言う奴初めてみたわ!」

おー、初体験ってことね。

「一々茶化しやがって……。俺とはそれで良いかも知れねぇけど、他の人間相手だとどっちみち喋らないといけねぇんだぞ」

それもそうか。

地上に降りるってことは、他の人とも喋らないといけないよね。

ちぇっ。

思考を読んでもらうようにしたら、黙ってる私に延々と神様が話しかけたりつっこんだり赤面したりするだろうから、面白そうだったのに。

仕方ない、諦めよう。

残念だけど。

残念、だけど。

「2回も言うほど大事な事じゃねぇだろ! とにかく、思考を読んで会話するって頼みは却下だ! 受肉したら思考を読めねえようにするから、お前も普通に声を出せ」

そっか、身体ができたら思考を読まないんだ。

喋らなくても会話が成立するのは今だけかぁ。

あ!

じゃあ今のうちにやっておかなきゃ!

『浅黒く筋肉質な上半身を革のベルトで固定されていく。肌の上を滑る革の質感と女性らしい手の刺激に身体が震える。口枷をはめられ閉じられない口から止めどなく涎を溢しながら先生の顔を見ると嗜虐と肉欲で煌めく視線に絡めとられ、これから始まるであろう辛く甘美な時間に次第に期待が高まり、熱い息が漏れる』

……顔が真っ赤ですよ、神様。

ちなみに、緊縛シリーズ6作目の冒頭です。

気に入ったなら続きも聞かせられるよ。

「暗記するほど読んでんのかよ! つーか、受肉したら思考を読めねぇって言っただけで、何で今のうちに思考を読ませて恥ずかしがらせようって考えになるんだよ!! ……もうやだ、こいつ……」

だって、流石に音読するのは恥ずかしいじゃない。

やぁねぇ、そんなに深いため息つかなくても良くない?

ジトっとした目で見るのもやめてね。

「とりあえず、今から俺とお前の肉体を作ってくるからしばらく待ってろ」

行ってらっしゃい、頑張ってね~。

応援しただけなのに、こっちを疲れたような目で見るのは止めて欲しいな。

せっかくの男前が台無しよ?

あ、赤くなった。

「もう、黙ってろ!!」

はーい。




「おい、身体が出来上がったぞ。……何で乳を揉んでるんだ?」

あ、おかえり。

意外と早かったんだね。

何でって聞かれても、暇だったしまた後で揉むって言ってたのを思い出したからだけど?

なにか問題でも?

「っ、はぁぁぁぁ。 お前は本当に……、まあ、いい。そろそろ受肉の仕方を説明するから、いい加減乳から手を離せ」

はいよ。

「これが俺たちの肉体だ」

何か言い方が、「俺たちの戦いはこれからだ(最終回最後の台詞)」みたいな感じね。

そんな引っ張る感じじゃなくても良くない?

「もういいから! 一応、直前までの身体をベースにしたんだが、とりあえずおかしなところがないか確認してくれ。まだ受肉してない今なら修正可能だからな。」

じゃあ、遠慮なく。


神様が作った男女の肉体をまじまじと見てみる。

どっちも年齢は10代半ばぐらいだね。

服装はファンタジーに出てくる村人が着てる格好ってイメージだね。

まあ、正直裸じゃなければ何でも良いか。

服の種類とか分かんないしね。

あえて言うなら男の方は半袖のTシャツっぽい服に茶色いズボンで、服の上からでも鍛えられてる感じがするね。素敵。

女の方は生なりのワンピースで下にズボンをはいてるって感じで、容姿は地球で生きてた頃と同じで、良くいえば中の上。

あ、でも髪色は黒のままだけど、目の色はエメラルドグリーンになってるから、ちょっと派手だね。

カラコン入れてるみたいだけど、まあ自分の顔をまじまじと見ることもないだろうし、いいか。

というか、この目の色って昔持ってた宝石と同じ色だね。

懐かしいなぁ。


「どうだ?」

おっといけない。

そういえば神様居たんだったわ。

思わず宝石をくれた男とのめくるめく夜を具体的に思い出すところだったよ。

「いや、完全に俺が居ること認識してまたからかおうとしてるだけだろ、それ! ……で、外見とかそれでいいのか?」

すごい良い男だったのに、興味ないのか。

つまんないな。

「あ、いや、別に興味がない訳じゃないけどな」

あ、興味があるってことはつまりそっちの気が

「ないから! 男に興味はないから! お前本当にいい加減にしとけよ!」

はいはい、分かりましたよ、怒りんぼさん。

あっ、止めて、無言でほっぺた引っ張らないで。

ほんほうにひゃめへふははい。

「頬を引っ張られた時の喋り方で思考を読ませようとしてくるの、やめろ。せめて声に出せよ」

はーい。

そろそろ手を離してもらえませんかね。

ぺしぺしと手を叩くとしぶしぶと離してくれたけど、正直言わせてもらうなら、セクハラですよ。

いや、ある意味パワハラ。

「お前の方がよっぽどセクハラしてきてるっつーの!」

まあ、いいか。

外見に問題はないよ。

「はぁーー。疲れる。とりあえず外見はこれで。身体能力は俺の世界の標準的な数値に合わせてる。ただ、世界を救う方法を実行する関係で神力で保護するから相対的に魔力量は増える。だから、上級魔法までなら問題なく使えるな。一応、属性は全部適合させてるから攻撃魔法も回復魔法も補助魔法も使えるぞ」

魔力!

上級魔法が使える!

ああ、ここにファンタジー好きな孫がいたらなぁ。

魔法が使えるようになったこと自慢して、何なら緊縛魔法かけてあげられるのに。

「いや、アホか!! そんな魔法無いわ! 孫で遊ぼうとするのも大概にしてやれ!」

えぇー。

面白そうなのになぁ。

残念、緊縛魔法ないのか。

あ、でも、植物とか操ってそれで緊縛したらいけるんじゃない?

でもそうなると、試す相手は神様か。

お互いに10代半ばの見た目だから、少女が素敵筋肉少年を植物で緊縛。

有りかな?

「無しだよ!! 絶対にやらせねぇからな!?」

人生は挑戦の連続って聞いたことあるよ?

何事も挑戦あるのみとも言われてるし。

「そんな挑戦要らねぇよ!」

まあ、無駄話はこれくらいにしとくか。

それよりも、何でこんなに若い年齢の身体にしたの?

趣味?

「おっ前、マジふざけんなよ。趣味ってなんだよ。この世界では魔力が多いほど老化が遅くなるんだが、正直どれだけ地上にいることになるか分からないから、最低50年かかることを考えて成人年齢の15歳にしただけだ。成人して村を出るのはよくあるし、若いうちに結婚するのも村で生活してたらよくあることだしな。」

なるほどね。

成人してすぐに結婚して、そのまま村から出てきたって設定ね。

ん?

そしたらどうやって生活するの?

お布施?

「いや。お布施って誰からだよ。つーか、神ということは極力ばらさねえようにするからな。地上に降りてるって分かれば面倒に巻き込まれかねないし。一応、冒険者ギルドがあるから、そこに登録して冒険者として生活する予定だ」

冒険者!

根なし草の、日雇い生活!

そして生活保証が全くないため、一つ躓くだけであっという間に転落人生!

泣かず飛ばずで万年低ランク、ついには若くして結婚した妻に身売りを頼み、そんな自分に絶望して酒浸りになる毎日!

ああ、性癖に若干難のある可愛い孫よ!

おばあちゃんはとうとう娼館にいくことになりそうだよ!

「どんな連想だよ!? つか、生活に困っても絶対にお前は手放さねぇし、ましてや売るわけねえだろ! 他の男に近づかせるのも嫌なのに! そもそも、勇者だったときの金とか装備とか大量に残してるし、地上に降りるときにそれ全部持っていくから、生活に困ることなんてあり得ねぇっつうの!」


えー、そうかぁ。

えへへへ。

いやー、まいったね。

「絶対に手放さない」し「他の男に近づかせたくない」んだ。

今更ながらに失言したって顔で口を押さえて固まってから、だんだん真っ赤になってる神様、かわいい。

正直どストライクの男(神様)にそんな風に言われると照れちゃうなぁ。

「あ、っと、というわけで地上での生活に関しては問題ねぇし心配すんな。あー、そんじゃ、受肉の方法について話すぞ。」

ちょっと目線をそらせた神様が仕切り直すように話し出す。

まだ顔は赤いけど、気付かないふりしてあげるよ!

私も多分顔赤いだろうしね!

「ふっ、そうだな。お前も真っ赤だな。ははっ、まあいいか。受肉のやり方は簡単で、身体に触った状態で『これは自分の身体。この中に戻る』と思えば良い。こういう風にする」

ちょっと楽しげにそう言った神様は自分用の身体にさわると、今まで動いていた輪郭がほどけて消えしばらくすると身体が動き出す。

15歳だからか少しだけ背が低いね。

地上で成長すればさっきの姿になるのかな?

「こんな感じだ。やってみろ」

少年になった神様に促されて、私用の身体に触る。

うむ、そういえば15歳ではまだ手のひらよりやや大きいサイズだったわ。

メロンになったのって、やっぱり揉まれたのが原因かしらね。

「乳を揉むのを止めて、さっさと受肉しろよ」

せっかちだなぁ。

そんじゃあ、『これは私の身体、この中に戻る』っと。


気付いたら、目の前に少年になった神様が立ってた。

回りを見ても神様以外に何もないってことは、受肉成功かな。

自分の身体を動かす。

特に違和感はなさそう?

思いながら足元を見ると、違和感があった。

乳に遮られずに足元が見える、素敵。

このままのサイズをキープしたい。

……あれれ?

「どうした? 何か違和感があるか?」

心配そうにこちらに声をかけてくる神様にふと思い出す。

そういえば、さっきそんなこと言ってたね。

「うーん、胸に邪魔されずに地面が見えるのが、違和感と言えば違和感」

素直に伝えると真っ赤になった後、チラッと胸をみてから目をそらす神様に向かって、心のなかで卑猥な話をしてみる。

何の反応もない。

いや、何も言わない私を訝しげに見てきて、ようやく納得できたから、ため息が漏れた。

「何だ?」

「本当に受肉したら心を読めなくしたんだね」

「そう言っただろ」

「せっかく色々思ってたのに、何にも反応しないからつまんないよ」

若干の不満を漏らすと呆れたようにため息を吐かれた。

失礼じゃない?

「言いたいことがあるなら、言葉にすれば良いだろ。とりあえず、受肉も成功したことだし、地上に移動するか」

そう言いながら手を横に振ると白い世界に裂け目ができた。

裂け目の向こうに森が見える。

「さてと、この裂け目を通り抜けたら地上に降りれる。……何だ?言いたいことは言葉にしろって言っただろ?」

説明する神様をじっと見つめていると、不思議そうに聞かれる。

「とりあえず手ぶらのまま行くってこと?」

「ああ、金や装備なんかは収納魔法で異空間にしまってるから、手ぶらで問題ない。靴も履いてるし、村人の標準的な格好をしてるから地上でも違和感を持たれないだろうし。森の中は少し歩きにくいかもしれないが、すぐに街道に出て、1時間程で街に着く予定だ。とりあえず、その街で冒険者ギルドに登録するぞ」

「なるほどね~」

「他に何か気になることはあるか?」

「あるよ。てか一番重要なこと」

「? 一番重要なこと? 何だ?」

首をかしげる神様をじっと見つめる。

分かんないかなぁ。

分かってなさそうだね、これは。

仕方ない。

えっへんと咳払いしてから神様に聞いてみる。

「私達の名前は?」

「は?」

「だから名前よ、な・ま・え。まさか神様と呼べないでしょ? まあ、あだ名ってことであえて呼ぶのも良いかもしれないけど」

「ああ、名前な! そういえば決めてなかったな。どうするかな」

と目を閉じて考え出した神様に一つ提案してみる。

「お互いにつけたらどうかな? 私が神様の名前を考えて、神様は私の名前を考えるの、どう?」

「そうだな。……じゃあお前の名前はサラで」

「どういう意味?」

「……思い付いただけだ。嫌か?」

「いいよ。サラ、ね。じゃあ神様の名前はジンね」

「……どういう意味だ?」

「ん? 神って漢字を音読みしただけよ?」

「安直すぎねぇか? まあ、それで良いか」

少し照れたみたいに笑う神様に私も笑いかける。

「じゃあこれからよろしくね、ジン」

「ああ、よろしくな、サラ」

そうして、ジンの手に手を伸ばして恋人繋ぎしてみた。

驚きながらも手を離さないジンに懐かしい気持ちが沸き上がる。

「良し! 出発!」

「行くか」

裂け目に向かって歩き出したジンを見ながら、言い忘れていたことを思い出す。

別に言わなくても良いかなぁ、でも、言葉にしろって言われたしなぁ。

とりあえず言ってみるか。

「ねえ、ジン」

「何だよ」

「別に今言う必要はないんだけど。言葉にしろって言われたから言うね」

「?」

「受肉して速攻で地上に降りるくらいまぐわうのが待ちきれないみたいだけど、胸のサイズをこれ以上成長させたくないから、揉むのは程々にしてね」

ビックリしたジンがこっちを向いたと同時に森に到着した。

さあ、最低50年頑張るぞ。

颯爽と歩き出そうとすると真っ赤になったジンが突然大声で叫んだ。

「お前、本当にいい加減にしろよ!!」


地上に降りた神様の第一声がそれでいいの?


真っ赤な顔をして、それでも繋いだ手を離さずに歩き出すジンに引っ張られながら、今度は心の中で話しかける。


ねえ、ジン。

結婚して、たった5年で交通事故で死に別れた私の旦那さんはね、プロポーズのときにエメラルドの指輪をくれたんだよ。

「他の男に近づかせたくないくらいに愛してる。お前だけをずっと愛すると誓うから、結婚してくれ」って言ってくれたんだよ。

「花子って名前は古すぎる。サラとかならよかった」っていう私に「花子も良い名前だ。お前の名前だからな」って笑いながら頭を撫でてくれたんだよ。

交通事故で私とお腹の子供達を庇って一人でさっさと天国に行っちゃった私の旦那さん。

旦那さんに沢山の土産話をしたいと思っていたの。

事故の後生まれたのは双子の男女で、旦那さんが男女どちらの名前も考えててくれたから、その名前をつけたよ。

元気に育って、二人ともさっさと結婚して、孫は男の子1人女の子5人いて、男の子の孫は見た目も中身も旦那さんにそっくりだったの。


子供達と孫達が居てくれてそれなりに楽しく生きてきたよ。

でもね、それでもやっぱり置いていかれて寂しくて悲しかったよ。

旦那さんに久しぶりに会えて嬉しくて楽しすぎるから、もう少しあなたをからかわせてね。

あなたが「本当は私の旦那さんだったんだ」って教えてくれたら、「実は最初から気付いてたんだよ」って私も教えてあげる。

いつになるかな?


ねえ、(ジン)

これからの50年、どんな人生になるのか、楽しみね。





別の時空、地球が見える場所で、地球を管理する神様と側近が書類を捌きながら話をしている。

「神様、あの世界の神とその伴侶になる人間が無事に受肉して地上に降りたみたいですね」

「んー? あ、本当だ。いやあ、これであの世界もなんとかなりそうだね。」

「そうですね。まあ、あなたの手抜かりのせいで本来の道筋から逸れてしまいましたし、核にまで影響出てましたからね。」

「うう、仕方ないじゃないか。二人同時に死んで、勇者と聖女としてセットであの世界に転生したあと夫婦神として世界を管理させようと思ってたのに、片方が庇ったせいでもう片方が生き残るとか思わないじゃないか。しかも、その後奥さんが60年以上も長生きするとか完全に想定外だったよ」

「まあ確かに。一人で転生した勇者はなまじ記憶があったせいで奥さんのことを忘れられずに結局生涯独り身で過ごしてましたし。死んだ後も健気にも一人で神様になって世界を管理しようとしてましたね。あなたの手抜かりのせいで」

「記憶を残したのは勇者と聖女として生まれ変わった後に出会い易くするためだったのに、完全に裏目に出ちゃったんだよね。しかも、地球の方が相対的に強いせいで地球で1年経過すると、あの世界では10年以上経つことになっちゃったし。

奥さんと楽しい異世界生活のはずが思惑が外れて独身のまま拗らせた元勇者で現神の鬱屈が数百年分凝り固まって核にまで影響及ぼすとか、ホント何でこうなったー!!って感じだよ」

「そもそもはあなたの手抜かりが」

「いや、ごめんね! 迷惑かけてごめんなさい! 反省してます!」

「本当に反省してくださいね。尻拭いするのめちゃくちゃ大変だったんですからね」

「はい、ごめんなさい。でも、無事に奥さんと再会できたし、地上で50年くらい楽しく暮らしたら核に影響を与えてた鬱屈も消え去るでしょ。神が作った肉体だから、そのまま神域に入っても大丈夫だし。やっと最初の設定通り夫婦神として管理してもらえるようになりそうだし」

「まあ、そうですね。というか、あの奥さんも相当おかしな人でしたね」

「そうだね。まさか僕と君を見て、下僕と女王様と言われるとは思わなかったよ」

「私をみて溢れ出る気品とカリスマがあるから女王様かと思ったと言ってましたね」

「僕には何か自発的に色々やってるけど結局女王様の手を煩わせて叱られるのを楽しみにしてる下僕にみえるって言ってたよ。僕が神様なのに」

「まあ、手は煩わせられてますね」

「というか、あの奥さんに本来の流れを説明してあの世界に行って欲しいって頼んだら、ここでの記憶は一時的に消して欲しいって言われてさ。何でか聞いたら何て答えたと思う?」

「? 何です?」

「久しぶりに会う旦那さんをからかいたいから、だってさ。凄く愛してたのに自分を残して一人でさっさといなくなったんだから、気が済むまでからかい倒したいけど、そのためには何でそうなったかって話を覚えてると手加減してしまう気がするから、一時的に記憶を消してもらって、地上に降りて10年くらいしたら思い出すようにして欲しい、だとさ」

「はー、何かノロケられてる気がしますね」

「まあ、夫婦の形はそれぞれってことだね。というわけで女王様? 僕らも夫婦の形に戻らない?」

「仕事が終わるまで無理ですね」

「はぁ、僕の奥さんつれないなぁ。仕方ない、仕事するか」


ちなみに作中の『緊縛シリーズ』は完全にフィクションです。

詳しい内容は主人公のみぞ知る感じです。あ、孫も知ってるか。


あと、孫は外見と性格は祖父の瓜二つというくらいには似ていましたが、唯一性癖だけは違っています。

というどうでも良い設定もありました。

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