決死隊
マーリア師匠がせかす中、僕達はその中へと入って行った。
煙草のパイプを加えた怜悧な男が、腰も低く「席にどうぞお座り下さい」と、僕達の身を案じてくれる。
この男が村長なのだろうか。
シルフィは複雑な礼をし「ヤン村長様、お久しぶりでございます」と聞いたことが無いような丁寧な口調で述べる。
ヤンは良い良いとでも、言うように、手でシルフィにも坐するように促す。
皆が席に着き、会話は始まった。
「家の村のシルフィがお世話になったね。彼女がデミウルゴスに拉致され記憶喪失にさせられていたは聞きました」
そして、パイプで一息入れる。
「僕が知っているデミウルゴスという言葉は、偽りの創造神を意味する言葉でしたが」
「その通り。彼は偽りの神だ」
「しかし、この世界を重ねてしまった…」
ヤン村長は一服する。
「私らはリ・クリエイトと呼んでいますがね。彼の物理的本体はバージニア州アーリントン郡ダーパにあります」
「それは破壊すれば世界は元に戻るのですか? いなくなった人達が戻ってくるのですか?!」
岬は必死の声を上げる。
「お嬢さん、世界は不可逆的に変化したし、残念ながらリ・クリエイトの際に大部分の人間は消されたようだ…」
「それじゃあ、もうデミウルゴスを破壊してもなんにもならないって事?」
倫は怒りを込めた声で、尋ねる。
「そうでもない。今、デミウルゴスは怪物と信者を利用して、ネットを再興しようとしている。ネット上に自身を走らせ、実質不死を得る算段だ」
「その前にデミウルゴスを始末しなくてはならない…そういう事ですね」
僕が言うと、ヤンは頷いた。
「その通り。君たちがダメな場合、わたしらエルフでも決死隊を組織して挑む事になっている」
だが、と続けた。
「わたしらエルフは目立つし、現在の所は中立を保ち、地球とアルネの人間たちと、神との間に立っている中立の立場ですしね。わたしらにはわたしらの仕事がある」
とんとん、パイプを叩いた。




