訪れ
AIとの対峙がその先に待ち受けているからだ。
もう少しで、エルフの里に近い森林にたどり着く。
そこからは車を捨て、また野営の旅をしなければならない。
昼夜問わず、車を運転していると色々な事を思い出す。
このような変化が起こる前…大学にも行かず、自分は果たして幸せだったのだろうか。
寧ろ、今の方がいきいきとしているとは誰に言えない。
そして、エルフの里に通じる森まで、遂にたどり着いた。
2日程野営の後、エルフの里に繋がる道は見つかる。
「近くに強い反応を感じます。みんな、こんな所に逃げていたんですねーぷんぷん」
戦わず、只管自己の安寧を図った同族達に、どうも良い印象を抱けないらしい。
シルフィも変わったエルフといえば、そうであった。
森の中は獣の瞳がきらりと光るほど真っ暗だったので、車に用意しておいたランタンで、暗闇を切り裂く。
森の幾つかの動物は、叫び声をあげ、、光の範囲から逃げ散る。
ランタンを持ったシルフィを先頭に、進んでいく。
「眩しいですねー。私、暗闇でも見れるので、ランタンですか…これ眩しすぎます」
そうは言うが、僕達にとってはランタンはか細い唯一の光源であった。
獣道を描きながら、僕達はどことも言えない闇の森の中を進んでいく。
流石に、口を開くものは誰も居なかった。
と、爽やかな一陣の風が吹き、僕達の憂いを吹き飛ばす。
あのエルフ里の入り口である巨木は、厳として変わらず構えていた。
シルフィは後ろを向きながら「ようやく付きましたねー」と述べ、大樹にマナによる呪文を詠唱する。
依然と同じように、樹の虚が開き、僕達をその中へと招きいれる。
洞穴を抜けると、魔法による淡い光が闇を駆逐しつつも、共存しているそのエルフの里にたどり着いた。
僕は頭を下げようとすると、入り口に立っていた数人の中にマーリア師匠がおり「虚礼は無用さ。さあ、こちらへ」
速いスピードで、マーリア師匠は先を行く。
シルフィに耳打ちする。
「嫌な予感がするんですけど」
シルフィは「私もです」とだけ答えた。
里の中でも一番大きく真ん中に位置する、木を掘りぬいた屋敷が僕達の前に現れる。
「村長が待っているよ、さ、早く」




