暴力の臭い
アルネの少し歪んだ赤い月と、地球の白んだ月。
もしかして…。
皆、その次の言葉を継げないでいる。
その日、地球とアルネの二つの世界は一つに重なった。
広い平原が広がっている。
僕達はどこへ行ったら良いのか分からないまま、しばし茫然としてた。
遠くから車の音が聞こえる。
車…?
シルフィ以外の皆、目を丸くして顔を見合わせている。
隠れようにも、隠れ場所が無い。
ランドクルーザーが僕達の前に止まり、用心深くライフルを構えたアジア人が2名、降車する。
「お前たちは何者だ?」
こちらこそ、そっちは何者か聞きたかったが、暴力的雰囲気を発散するその男たちに何も言えなかった。
「全員、地面に伏せろ」
僕や倫はもし、射撃されてもマナの活性化により助かる可能性が高いが他の仲間たちはそうは行かない。
僕達はゆっくりと地面にうつ伏せになる。
男たちは僕達を見分しながら「…ちっ、エルフが居るな」と呟く。
男たちで何か話し合い、結局「その姉ちゃんに感謝するんだな」と言い残し、またランドクルーザーにのって行ってしまった。
「何者だったのでしょうか?」
岬はその暴力の臭いを発散させた男たちに怯え、細かく震えていた。
「私は何もしていないですけどねー」
シルフィは不思議そうに呟く。
「…ああいう連中がウロチョロしているんだろうね…」
倫は唾棄するかのように吐き捨てる。
「私、怖い…」
真利亜はただただ、怯えていた。
「以前の地球よりサヴァイヴァルしにくくなりましたね、修平お兄様」岬は不安げに告げた。
しかし、これでこのだだっ広い平原の何処へ迎えば人が居るのは、ランドクルーザーのタイアの後をシークすれば分かる。
状況は少しは好転したと信じたい。




