やっぱり臭う
「それにしても…真利亜は車内と僕たちを見渡し「臭いわね…あなた達、風呂入ってないでしょ」
そうか、それは言えるかもなと思い、岬ちゃんに視線を向けると火のように赤面し、俯いている。
「はは…風呂入ってなかったからなあ。真利亜さんは…」
僕の言葉の途中で、真利亜は告げる。
「真利亜で良いわよそれに…」
「ええ、水だけど私は入っていたわ、真っ暗な誰も居ない中入る水風呂って最高ね」
時期は真夏が終わり、秋口にはいっていたが、水風呂に入れるほど、温かくはない。
不思議なこだわりだなと僕は思った。
「さて、お邪魔するわよ」と真利亜はキャンピングカーに身を乗り入れる。
後ろでごそごそ、真利亜がものを漁ってる中、僕は岬ちゃんに耳打ちした。
「寒いけど…後で水浴びしたほうが良いかもね」
僕の言葉は不適当だったのだろう。
岬ちゃんは顔を赤くしたまま、ぷいと横を向いてしまった。
その夜は一人人が加わったこともあり、皆が少しだけ陽気になっていた。
暗闇が訪れる前に、簡単な夕食を摂ると、皆でトランプをしたりしながら、自らの自己紹介も兼ね、気楽な会話を交わす。
真利亜と岬ちゃんはどうやら同じクラスであったらしい。
殆ど接触は無かったようだが。
最初に会った時に、真利亜から名前はちゃんとかさんと付けないでと厳命されてある。
僕としては、最低限の礼儀は必要かと思ったが、そうもないのかもしれない。
真利亜はゲームで上がると、トランプをテーブルに叩きつけて「んー、弱いわねあんた達」と挑発する。
岬ちゃんは少しうつむき向きながら、微笑した。
まだ岬ちゃんと真利亜はしっくりとはいっていないようだ。
あの匂い事件の後、キャンピングカーに水を取り入れ、シャワー何とか使えるようにした。
そうしたら僕なんが、眼中に無いかのように岬ちゃんはシャワー室へと入っていった。
こんな時でも、女の子であることは辞められないらしい。
「じゃーん。これ見なさいよ」
いきなり真利亜が僕と岬ちゃんの間に手を差し伸べる。
豪奢というよりも既に成金趣味の極みのようなダイヤを中心とした宝石が右手指全てに填められている。
僕と岬ちゃんは唖然としていると、それを称賛ととったのかにやりとした笑みを浮かべる真利亜。
「これどこから持ってきたの…真利亜」
不貞腐れたように、足をぶらぶらとさせながら、真利亜は呟く。
「近所にいやーな金持ちが居たのよ。で、いなくなった…もらったわけ、私が」
僕たちも色々と拝借している身だが、生活に必要以外にものは遠慮している。
だけど、それは考え方の違い一つでもある。
僕はその夜、久しぶりに岬ちゃんの背中の感触が無く、それぞれの備え付きベットで眠っていてる。
少しこれはこれで寂しいな…僕はふとそう思った。
頓服を口に含み、嚥下する。
しばらくすると、世界は闇に溶けていった。