どこか知れた新しい世界
どうしようかと思った瞬間、上空から光の環が、地上を照らし、どこか音楽めいた音声が聞こえた。
間違いない、人工知能による人工音声だ。
「試練突破おめでとう。君たちは次の段階に入ることが出来る、用意の期限を一日だけ上げよう、装備を整え、その転移ゲートからアルネへと向かうのです。来なさい、私の元へ。すべての答え、真理を教授してほしいのならば、試練に打ち勝ちなさい」
それだけを言うと、天空からの声が消えた。
近代教育を受けた僕達の一致した意見は「安っぽい奴」だった、が。
行かないという結論は出なかった。
僕達に退却の道は残されていない。
拳銃と銃弾を持てるだけ持ち、後は服装はシルフィによれば日常風は、この世界もアルネもほとんど変わりないそうなので、出来るだけ生地の厚い、長持ちする衣服を身に着ける。
金目の時計や金属を持ち、最後にゆったりとシルフィが作ってくれたご飯を腹に収め、僕達は光の輪の周りに立つ。
そして、5人同時に転移ゲートに身を乗り入れた。
ふっと、草いきれの臭いがした。
どこか貧しげな中世にあったであろう村落に到着した。
出発も到着も認識出来ず、何時の間にかこの村落に立っていた。
誰にも見られていなかったらしい、人々の動きは緩慢であった。
どこか、生活の疲れすら感じる、その村落の名を示す標識が、ツヴァイシュタイン…何故か、日本語に変換されているこの一時から持って、この世界は系統的統一性を欠いた発狂したAIが織りなすゆがんだ世界だとは認識出来た。
シルフィは「ツヴァイシュタインなら私の村の近くですー。神様も案外良い人ですねー」と言い、僕達のじとりとした視線を感じたのだろう、口を手のひらで覆った。
村を抜ける際に、人々の様子や販売所で売っているもの、色々と観察し、こりゃ、中世ヨーロッパをメインとしたネトゲの世界だなと思う。




